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婚約者:不誠実な男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(21/50)

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第五章 婚約者
第一話 不誠実な男

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。

 安宿場で眼が覚めると上半身は裸のままだ、俺は整髪していない金髪をかきむしる、また深酒をした。隣で寝ている女は街角で立っていた娘だ。俺はベッドから出ると急いで服を着替える。

「親父に怒られるな」
 ぶつぶつと独り言を言う癖は治らない。顔を見せれば小言を言われる、確かに俺は放蕩息子だ、酒癖も悪いし女癖も悪いのは自覚している。俺は惰性で生きている、目標がない、金があるから酒を飲んで女を抱いている、他にする事がない。

 親父の仕事は貴族だ、難しい書類を扱うが実務はすべて専門家にまかせてある、年貢や帳簿の計算や管理、もめごとの調停。仕事をする人間はすべてそろっているし親父が判断するような問題は発生しない。重大な問題が発生したとしても、親父が判断する段階で何を判断しても良くも悪くもならない。

 象徴として生きているだけだ、俺もそれを継ぐ事になる。嫁を貰えば変わるかと思ったが、悪評が立ちすぎたのか成立しなかった。唯一残ったのはアスタ家だが、父親が事故で死亡する。婚約が成立する前だ。俺には嫁を貰う名家がどこにも無くなった。

「金もそろそろ、無くなるか」
 カード賭博の借金もでかい、取り立てが来ると思うと恐怖で足がすくむ。命は取られないと思うが何日も閉じ込められて責められる。知り合いの貧乏貴族の息子はそれで廃人になった。何日も座らせない、眠らせない、そんな拷問で精神を破壊する。見せしめだ。それを見て借金がある奴は金を払う。自分でも真面目に働くのが無難なのは理解している。

 でも俺にどうしろと? 真面目に机の前に座ればいいのか? まるで置物だ。バカげた人生に、うんざりしていた。

「いってきます」
 長い金髪が揺れる、宿屋から一人の少女が出てくる。かわいらしい顔つきは町娘とはまったく異なる。貴族の娘だ、いや見たことがある。アスタ家の娘だ、確かミナリアという名前だったような…………

「──冒険者の……恰好かな? 」
 なんで貴族の娘がこんな所に住んでいるのか判らない、俺はゆっくりと彼女の行先を確かめる。魔女ギルドの館に入る所を確認する、彼女は働いているのか? 理由が判らない。名家の娘がこんな場所で働く理由を知りたい。俺は魔女ギルドのドアを開ける。

「頼みたい仕事があるんだ」
 カウンターに居る赤い髪をした年配の女性に声をかけた。


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