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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(31/60)

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第六章 家出
第一話 取り調べ

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、連続殺人に巻き込まれる、母親の朋子ともこは客間で腹部を刺されて死んでいた。


「死因は腹部からの失血死だ」
 殺人課の小林俊介こばやししゅんすけ加藤翔子かとうしょうこが取調室で私を見ている。何度目だろうか? 忘れてしまった。

「学校から帰ってすぐに部屋を確認したのね? 」
 加藤刑事が私をまっすぐに見るが、私は恐ろしくて顔を見られない。死因は判るが犯行理由が判らない、警察も容疑者の絞り出しをしたいが恨みを持つ人が多すぎて難航なんこうしていた。

「私は殺していません」
「誰も君が殺したと疑ってない」
 小林刑事がゆっくりと話す、抑揚よくようの無い話し方は催眠状態になりそうだ。主治医の斎藤輝政さいとうてるまさに、話し方が似ている。私の過去の記憶を呼び戻そうと必死だった。小林刑事が証言を求める。

「もう顔色が変だったのね? 」
「――はい……」
「帰ったときに物音とか聞いた? 」
 私は首をふる、凶器は台所の包丁で誰もが手にする事ができる。泥棒が入ったとしても、客間で寝ている朋子ともこを殺す必要がない。物取りならばすぐに引き出しを物色して金を盗って逃げるだけだ。

佳奈子かなこさんは見た? 」
「いいえ、二階には居ませんでした」
佳奈子かなこは、常に家に居る。祖母や母と弟、家族が憎いならば彼女が犯人と思える。だがそんなそぶりもない。弟とも仲良かった彼女が殺すだろうか?
 
 そう考えると部外者の私が犯人像に近い。家族から厄介者やっかいものと思われて、その恨みで次々と殺す。
 
「私はもう、家を出たいです」
 素直に怖いと訴えた、刑事達は黙っている。
 
「もし家族だけを狙う犯行ならば、あなたは安全に思えるの」
 加藤刑事が申し訳なさそうに話す。榊原さかきばら家への復讐ならば、部外者の私は対象にならない。住んでいる家族全員が対象ならば個別にホテルに宿泊させて監視するしかない。

「泊まる部屋を用意した」
 小林俊介こばやししゅんすけ刑事は、護衛付きで駅前のビジネスホテルを用意したと話す。替えの下着は、加藤翔子かとうしょうこ刑事が私の部屋から持ってくる。榊原さかきばら家は、今は現場検証で大変な状態だ。


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