見出し画像

SS 部活動【カルパッチョ&容姿端麗&請求書】三題噺

今日は俳句部の部活動だ。二人しか居ない。休日に部長の家で俳句を嗜む事にする。

「晴生(はるき)、そこのお皿を出して」
部長が僕をコキ使う。なぜか昼はカルパッチョを作りたいと言う。両親とレストランで食べておいしいので、自分で料理したいらしい。

日和(ひより)部長はセミロングの美少女で容姿端麗で本もよく読む。文学少女の彼女は僕の好みだ。レシピ本を読みながら肉を切っている。牛肉だ。料理を作る彼女を見ているだけで幸せ。

「なに見てるの」
後ろを向いているのに気がついた。この子は怖い。気配でわかるのか?僕の眼力が強いのか?くるりとふりむくと怒った顔をする。
「もういいわ、テーブルで俳句を作ってなさい」

部長命令だ、仕方が無い。テーブルでメモ帳を取り出すと俳句をひねりだす。
「牛肉が 真っ赤でおいしい カルパッチョ」
「美少女の 手作りおいしい カルパッチョ」
「台所 家で作る カルパッチョ」
「カルパッチョ いつできるのか たのしみだ」

「呆れた、俳句じゃないわ」
もう出来たのか、トマトが細かくきざまれて、赤い小さな大根のラディッシュが薄切りされた牛肉料理。チーズも美しくちらしてある。

僕は彼女の顔を見ると、無言でどうぞという合図を送る。僕はカルパッチョを小皿に取ると、口に入れる。チーズの濃厚な香りとラディッシュの歯ごたえ、そしてジューシーな牛肉。おいしい。

「手料理を 遠慮しない 同級生」
いきなり彼女が吟じる。むせた。あわてた彼女はペットボトルのお茶を出す。栓をひねってグビグビと流し込む。

「ごめん、びっくりした?」
小首をかしげる彼女もかわいい、もうなんでも許そう。しばらくすると何か腹具合が悪くなる。食べ過ぎ?いやそんなに大量には食べてない。腹が鳴り始めた。これはやばい。僕はトイレを教えて貰う。

「うーん、アレルギーかもしれませんね、よく火が通ってなかったかも」
どうも焼きが甘かったらしい。僕は腹を壊した。緊急で夜に医者に診察してもらった。

「この間はごめんね」
日和(ひより)部長が僕の顔を見る。僕はこれくらいは平気だと擁護するが
「部長は食べなかったの?」
「私は牛肉好きじゃないし」
部長は僕に請求書を渡す。
「材料費です。私も半分だすから」
「……」

僕は無言になる。そして僕のために牛肉で料理を作ってくれた、決して手抜きじゃない、試食しないのも僕に一杯食べさせたいからだ、僕は呪文のようにぶつぶつとつぶやいていた。

終わり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?