SS 文芸部の日常【文学トリマー】#毎週ショートショートnoteの応募用
文学トリマー、それはどんな小説も無駄をなくし読みやすくする優れた能力だ!
文芸部長がスカートをひらひらさせて、机で推敲している俺の作品を見る。
「良いと思うけど描写が少なくない?」
「トリマーが重要なんです」
ひたすら無駄を省く、主人公の名前すらいらん!
「誰がだれかわからなくない」
「いきおいです!」
誰が台詞をしゃべったかなんて読者が考えればいい。俺はひたすらトリマーを続ける。
ふと横に座っている部長から甘酸っぱいような五感をチクチクと刺すような奇妙な感じ。
横目で見ると部長のメガネにかかる長い髪の毛が気になる、髪の毛がほっぺにかかりそうなのにかからない、その肌はすべすべ。目まいがするような興奮で俺は口からよだれが出てくる。
「どうしたの?」
「なんでもないです!」
口の中の唾液をごくりと飲み込むと部長に触れたくしかたがない手をおさえた。
「俺の左腕が騒ぐ、静まれ左腕!」
「いい加減に大人になりなさい」
部長の指が俺の頬に触れると、俺は人生で最大の幸せを感じた。
(ああ、この作品もトリマーに失敗して500文字くらいある……)
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