見出し画像

ミナリアとレオノーア:根源の魔術【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(49/50)

設定 
第一章 第二章 第三章 第四章 第五章
第六章 第七話 第八話 第九話
前話 次話

第十章 ミナリアとレオノーア
第四話 根源の魔術

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

 美しい黒髪の少女は後悔と懺悔ざんげで泣いていた。彼女も被害者だ、私は直感する。助けないと、私が近寄ろうとすると足が動かない。ブーツが宝石化していた。呪いが近すぎて浄化できない。

「ミナリア、下がれ!」
 銃使いのオスカーが叫ぶ、宝石銃が強い光を放つ。巨大なクリスタルに向けて銃の魔力が着弾する。耳をつんざくようなガラスが割れる音がすると透明なクリスタルが破壊された。耳が高音で痛い、耳鳴りでしばらく音が聞こえない。

なんじらが望んだ事だ!」

 崩れたクリスタルから巨大な頭蓋骨が見える、ゆっくりと起き上がるとクリスタルで出来た骸骨がいこつだ、二階建ての家くらいは身長がある。全ての骨が宝石のように七色に輝く。立ち上がる骸骨がいこつは私達に向かって片手を差し出す。その瞬間に私は、いや私達は古代の世界を見ている事に気がついた。

xxx

 上半身裸の男女がゆっくりと歩く、神殿のようにも見える。太く白い柱にまきの灯りがパチパチとはぜている。彼らは奴隷なのか、手足は鎖で縛られている。やりを持った半裸の男たちは、一人ずつ床に開いた穴の中に奴隷を落とす。穴からは叫び声が上がる。逃げる奴隷は、ひきずって落とされた。私は無惨むざんな光景に恐れた。

「なんてひどい」
「むごいな、二千年前くらいの風景だな」
 老剣士がつぶやく、私達は過去を見せられていた。穴の中は炉だ、人体を与えて宝石を生み出す悪魔の発明。宝石により国が富み栄える。人を放り込んで宝石を作り上げていた、それを玉座から見ているのは、セレーナ。黒髪の少女は、嫌悪と侮蔑ぶべつで顔を歪めていた。

「いつまでこれを続けるの?」
「必要悪です、隣国からいくらでも奴隷を集められます」

 家来は国のためと彼女を説得するが彼女は限界が来ていた。セレーナはいつしか考える事をやめた、それでも罪悪感は消えない。人をにえにした呪いは残る。その呪いが国を滅ぼした、奇怪な宝石骸骨がいこつが国中にあふれると王族も国民を全て殺された。最後に残る少女の前に宝石骸骨が集まる。

「私も殺して……」
 セレーナは骸骨がいこつ達に懇願こんがんするが、決して許されない怨嗟えんさで彼女を縛る。永遠に生きる呪われた少女、触れるものを宝石にする呪い。呪われた精霊となり、何千年も生きてきた。いつしか彼女は人の心が消えている。宝石のために彼女は利用されて、最後は封印された。

「……やめて……」
 私は涙を流す、母のこの呪いをどうすればいいのか判らない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?