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SS 幻脳 猫探偵04

あらすじ
奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘を助けると猫探偵は家で飼う事にする。

「旦那、まだ人の子は居ますか?」
ネズミが聞いてくる。彼に頼んで養い親を探している。このまま住まわせても子供でも作られると増えてしまう。やっかいだ。

「見つかったのか?」
「会いたい奴は見つけました。ただ肉体が無いです」
今時の人間は肉体を持たない事も多い。外見に問題があると機械と入れ替える。俺はネズミと会いに行く。豪華なビルの中に入る。ロボットが俺に近づく。

「ギギギ、銃はだめです」
こいつらは人工知能だ。銃をカウンターに置く。ネズミと一緒にエレベータに乗る。高速で登り始めた。

「どんな奴らだ?」
「娘を亡くした夫婦です」

二百五十六階に到着する。窓の外は目もくらむような高さだ。俺でも足が震える。廊下を歩くがホコリがたまっていた。掃除をしていないのか?ドアの人工知能に要件を伝えた。

「ギギギ、お待ちください」

しばらくするとゆっくりとドアが開く。誰もいない。俺は警戒しながら中に入る。無意識に銃に手を伸ばしていた。ありもしない銃。

「ようこそ、人の子が欲しいのです」

誰も居ない部屋の中で声が響く。本人は固定式の脳装置に設置されているらしい。

「養子に出したい。ここは人が住める場所なのか?」
部屋は薄汚れていた。掃除ロボットも居ない。嫌な予感がする。

「人の子が欲しいのです、肉体を持ちたい」
肉体売買だ。機械から人に戻りたい奴も居る。その場合は肉体を買い取る。買い取られた人間は機械の体を利用する。

「悪いな、交渉できない。帰るぜ」
突然、背後からロボットが襲ってきた。俺は柔軟な体で避ける。腰から電磁ショックナイフをロボットに投げつけた。ロボットはスパークしながら停止する。

「旦那、旦那。ここには人が居ませんぜ」
ネズミが探ると機械しかない。俺はロボットに端末を繋ぐと検索した。内部にあるログファイルを見ると、人の体を欲しがっていた。

「機械が人の肉体を買い取るつもりか」
人工知能は高度化した。そして人間の肉体を欲しがる。存在しない脳(幻脳)で人の肉体を操るつもりだ。

「馬鹿げている、生体からのデータを処理する機能がない」
本能が無い人工知能は肉体からの苦痛や快楽を読み取れない。それでも人として生きたい。狂った人工知能。ネズミは偽の情報に騙されていた。

「今度は人であることを確認しろよ」
「旦那、了解です」

終わり


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