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雑多な怪談の話

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#ショートショート

怪談 水茶屋の娘 【#赤い傘】シロクマ文芸部参加作品 (1600文字位)

 赤い傘を見つけると走り寄る。しとしと霧雨がふりはじめた。 「おみつ」 「真さん」  おみつは、年の頃は十七くらいの水茶屋の看板娘で真之介とは仲が良い。仕事の合間に近くを通ると茶を飲んだ。みなに好かれる娘で、誰かれなしに愛想をふりまいていたが、真之介とは本気の恋仲だ。 「あのな……」 「これ、きれいでしょ」  くるくると赤い傘を回す。おみつは自分が店に出る時は、その傘を置いて客に知らせていた。赤漆のきれいな傘だ。 「縁談が決まった」 「……」  おみつは前を向いた

SS 私の見える世界 【色企画 第二弾‼︎】#新色できました(430字くらい)

 色は眼から入り色素を感じる受容体で識別する。だから色を人によっては同じ色とは限らない。 「まだお若いのに、ご愁傷様です」 「本当に、これからなのに」  父は憔悴しているが、母はそれほどは悲しんでいない。見えていたから…… 「かわいそうだけどね、しょうがないわ……」  母は私の頭をなでながらため息をついている。母は人が死ぬ時の色が見える。【霊色】を感じられる。いわゆるオーラだ。 「こうなんか体全体から、もやが出ていて色がついているの……」  母は私にだけは教えてく

SS 赤い靴【#白い靴】 #シロクマ文芸部

 白い靴を見つめる。真新しい白い長靴はおかあさんが新しく買ってくれたけど、ぶかぶかで歩くと転びそうになる。 「大丈夫、すぐに大きくなるから……」  おかあさんは、なんでも勝手に決めてしまうので困る。ぶかぶかだから足をぶらぶらさせると、ゆるゆるする。 「赤い色が良かった」  赤い靴♪ はいてた♪ 女の子♪  悲しげな歌は、今の自分にはぴったりに思えた。大人は何もわかってくれない。  イジンさんに♪ 連れられて♪ いっちゃった♪ (イジンってなんだろう?) 「イジ

怪談 湖畔の古い旅館

「この旅館だ」 「古い旅館ね」  オカルト好きな俺と彼女は、幽霊が出ると噂の旅館に泊まる。静かな山奥の旅館は、古い湖畔のそばに立っている。 「いらっしゃいませ」  年老いた仲居は、皺だらけで表情すら判らない。薄暗い廊下は電灯もついてない。 「ここです……」 「まぁきれい」  窓から見える静寂で深い湖は緑色に染まり、ぞっとするような雰囲気でシュチエーション的に最高だ。 「幽霊でるかもな……」 「楽しみ」  脳天気な彼女は、マニアック過ぎて俺は飽きていた。彼女は本気

SS 井戸の鬼【#子どもの日】 #シロクマ文芸部

 子どもの日が来た。村の大人達は数日前から準備をはじめている。僕は親戚の縁側で足をぶらぶらさせる。畳で横になる従姉は、だるそうだ。 「端午節って何?」 「鬼に憑かれない支度……」  親戚の家にGWにおとずれるのは初めてで父親は親戚たちといそがしそうだ。  従姉は十六歳で県内の高校に通っている。 「小さな子は、鬼になるからね……」 「……迷信だよね」 「前に端午節を、さぼった子がいた」 「それで」 「鬼になった」 「嘘だ」 「なったよ、だから井戸に落としたんだ」 「……

SS 発明品【オバケレインコート】 #毎週ショートショートnoteの応募用(410字くらい)

 博士が透明なレインコートを着ている。その前に一人の記者がメモをとっていた。 「博士、発表されたオバケレインコートとは、どんなものです」 「着るとオバケになります」  記者は質問を重ねた。博士の作った素材で霊界と接触できる。画期的な発明で興奮をした記者は 「死んだ人に会えますか?」 「可能です」  博士と記者がレインコートを着て、墓場に到着するとオバケが居る。 「見えますね」 「レインコートの力です」  博士がオバケに挨拶する、記者も取材できた。死んだ理由やオバケ

SS 猫じゃ猫じゃ【突然の猫ミーム】#毎週ショートショートnoteの応募用

「お芝居をはじめるぞ」  小学五年の教室に入ってきたクラス担任が興奮している。 「この動画が面白くてな、猫がでてくる」   (突然の猫ミーム推し?) (なんかズレてるよね) (俺それ知ってる、猫が二本足で飛び回るんだ) (太った猫がおもしれー)  クラスがざわつくと担任が女子生徒の腕をつかんで立ち上がらせた。いきなり女子の両腕をつかんでふりまわす。 「こんな感じで芝居をするんだ」 「先生痛い!」 「なぁ面白いだろ、こうするとまるで……」    担任が無表情に変わり生徒

SS 橋の上 【#青ブラ文学部参加作品】

「君も死ぬの?」 「そうね……」  夕闇の薄暗い橋で少女が立っている。たまに車が通るくらいで通行人はいない。橋の欄干に足をかけた少女を見つけて僕は驚いた。 「僕も死ぬんだ」 「そうなんだ……」  表情が乏しい彼女は、コミュニケーションが苦手そうに見える。 「先でいいよ」 「うん……」  そこにすっと車がライトを光らせて通り過ぎる。彼女は固まったまま動かない。 「ならぼくが先に行くよ」 「じゃあ、後から行くね……」  彼女の表情がやわらぐと普通にかわいい。もっと会

SS アメリカ製保健室 #毎週ショートショートnoteの応募用

「これがアメリカ製保健室なのか?」 「そのようですね」  陸軍の大将が敵から鹵獲した不思議な筒を見ている。それは魚雷にも見えるが、推進器は無く、ハッチがあるだけの筒でしかない。 「どうやら、安眠できるだけではなく各種ガスや薬品で治療もできるようです」 「つまりこの中で寝てると体が治るのか?」 「最新技術ですね」  内部を見ると固定する器具や回転するクランクのような装置もある。 「さすがアメリカだな、自動的に体が治るなら真似して作れ」 「はぁ……解析するまで時間がかかり

SS 夜光おみくじ #毎週ショートショートnoteの応募用

 拍子木が、カーンカーンと鳴ると、人が集まってくる。深夜の公園で紙芝居が始まる。 「大山鳴動するが、ネズミも居ない。剣豪の宮本武蔵は、九尾の狐を退治しにきた宮廷に、人の気配が無いことを不審に感じる!」  おなじみの狐退治の物語が終わると、客は紙芝居屋から、何かを買い求めいた。 「何をしているんだ……」  うっすらと紙芝居の記憶はあるが、こんな夜中に客を呼ぶわけもない。終電間際で帰って来て、コンビニに立ち寄って深夜の公園を横切っていると、彼らを見つけた。  客が居なく

SS 家出の少女 【ありがとう】 #シロクマ文芸部

 ありがとう、ごめんなさい、さようなら。 「家出ですか……」 「家出です」  行方不明者届を受理した、警察官の私は事情を聞くために、その家に立ちよる。母親は娘を心配している様子はない。書きおきを見せてもらうと稚拙な字で殴り書きされていた。 (毒親ってヤツかな……) 「高校生の娘さんですか」 「そうよ」 「友達の家に泊まってるかもしれませんね」 「そうね」  うつむいている顔は、悲しそうにも見える。ショックで反応が鈍い場合もある。 xxx 「どうだった」 「若い母

SS 白骨化スマホ #毎週ショートショートnoteの応募用

 病室は薄暗く祖父は死ぬと思う。 「ちょっと見てて」 「うん」  母が病室を出て行く、私はスマホをいじりながら気のない返事をする。祖父は昔は反社だったと聞いた。私は、この人を知らない。 「今もそんな根付があるのか」  四人部屋で、たまに咳が聞こえるくらい無音だった。いきなり祖父に声をかけられて、心臓が飛び上がる。 「なに、お……おじいちゃん」 「それだよ」 「スマホのアクセサリー?」 「骨なのか」 「そう骨みたい」  スマホのストライプに白骨化スマホが、ぶら下がっ

SS お泊まり会【誕生日】 #シロクマ文芸部

 誕生日会に呼ばれた……少女がつぶやく。刑事はメモを取りながら中学生の話を聞く。どこにでもいる普通の子に見えた。清潔で若い彼女は黙ってうつむいている。 「不審な死に方でね、それで異常な音とか聞いたかなと?」 「寝ていただけです」 「先輩、いいですか」 「なんだ」 「解剖の結果でました」  間延びした後輩刑事の声を聞いて少女を帰す。後輩が死亡した父親の血液データを見せる。 「酒の飲み過ぎですね」 「アル中か」 「血中濃度が1%近かったです」 「高すぎだな」 「あとカフェイ

SS 夢の危機一髪 #爪毛の挑戦状

 夢は支離滅裂でつながりが無い、まるでダイスを転がすように流れが変わる。いつものように追跡夢を見る。  夢の中で誰かに追われている自分は、いつしか過去に住んでいた郷里の街角を歩いていた、そこで眼が覚める。夢の危機一髪は常に回避される。危険な夢を見ると反射的に起きられた。 「なにか最近は眠りが浅くて……」 「薬でも飲むとか? 」  意味がなさそうな書類をEXCELで作りながら、同僚にグチをこぼす。早く寝ても寝たりない。 「夢が多くない? 」  同僚が笑いながら私にチラシ