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雑多な怪談の話

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雑多な怪談話を入れます 写真は https://www.pakutaso.com/20170603152post-11830.html を利用しています
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#青ブラ文学部

SS 黒いオルゴール【#小さなオルゴール】#青ブラ文学部(520文字くらい)

「黒いオルゴールがあるの」 「どんなオルゴール?」 「小さくて、真っ黒なの……」  小さなオルゴールを開くと、美しくきれいな曲が奏でられる。 「先生、これあげる」 「あ……ありがとね」  手製のオルゴールは、どこか歪んだ印象がある。そして黒い色をしていた。  都市伝説でよくある怪奇現象が起きる話で、黒いオルゴールを聴いていると精神を失調して最後は……ありがちな話だ。  生徒達が工作の授業でオルゴールを作り、生徒は自分の作品を持ち帰る。だけど一つだけ余っていた。誰が作

SS 祈るとき 【#祈りの雨】#青ブラ文学部(760文字くらい)

 薄暗い森に逃げ込む。追っ手の村人は、しげみを棒でつつく。 (もう少しよ) (あい、姉さん)  雨が降らない、雨を降らせるためにはイケニエが必要だ。幼い妹が選ばれる。 「村から逃げましょう」 「でも村のためには……」 「迷信よ、去年はイケニエの娘が死んでも雨はふらなかった……」  賢い姉は大人達の偽善を知っている。少しでも前の年と違うなら口減らしのために女を殺す。そうしないと村に人があふれてしまう。  追っ手が消えて足音を忍ばせて逃げ出すと……若い男が姉に合図する。

怪談 手相を見る女 【#手のひらの恋】#青ブラ文学部

 赤い薔薇が庭先に咲いている。それを窓からながめていると村の女が扉を開く。 「――あの魔女さん……見てもらえますか」 「手を見せて」  農作業で荒れた手は美しい、土よごれをラベンターのオイルでふきとり手相を見る。 「あなたが好きな人がいるわ」 「だれです」 「パン屋の息子……」 「ああ……私に興味がないと思ってた」  嬉しそうな彼女は、かわいい恋する乙女、代金にジャガイモを何個かもらう。シチューに入れよう。私は手のひらの恋を見る事ができる魔女だ。村人はそう信じていた。

SS 人形遊び【#合わせ鏡】#青ブラ文学部

 おかあさんはいそがしい、だから一人で遊ぶことにしている。リビングでお人形遊びをする。 『おかあさん、おべんとうがないよ』 『おかねを渡すから、かってたべて』  お父さん人形とお母さん人形で、今朝あったことをまねする。 「なにしているの」 「おままごと」  ママは笑いながらキッチンに戻る。お父さんが帰ってくると夕飯で喧嘩を、はじめた。弁当くらい作れ作らない。寝室でも喧嘩をしていた。 xxx 「それでママは、どこに居るわかる?」 「知らないの」 「娘は……その……心

SS 生き返った娘【見つからない言葉】 #青ブラ文学部

「ごめんなさい……ありがとう……さようなら……」  どう言えばいいのかわからない。  顔に飛び散った血を手でぬぐう。手に持った石を落とした。お坊様は、もう死んでいる。 xxx  貧しい村に生まれた娘は売られるか口減らしで殺される。娘は器量がよくないから買い手がつかない。 「とっちゃん、どこいくの」 「そこの原っぱさ」  何をするのか判らなかった、悲しそうな父親は歩きながらずっと娘の頭をなでていた。 「ここさ、座れ」 「ここ……」  何も無い地面に尻をつけると、す

SS お嬢様ただいま 【#春めく】#青ブラ文学部

「春は好きです」  まだ寒さが残る庭先でも春めく気配はある。寒椿が咲いていると華やかに感じました。  書生の私にお嬢さんが嬉しそうに、ふりかえって笑って見せてくれた。先生の娘さんは、まだ十四歳でしたが、私になついてくれました。 「私も好きですよ」  赤紙が来たので戦地に旅立つ事になる。お嬢さんが大きくなるのをずっと見まもっていたのも懐かしい。ぎこちなく敬礼をして、お嬢さんと別れを告げると、お嬢さんは声を出さずに何かおっしゃっていた。私はお辞儀をして先生の家を出ました。

SS 幸せなおばあさま【#青ブラ文学部参加作品】#答え合わせ #眠り薬

 戸棚には青い薬瓶がある。薬の名前が書かれたラベルはかすれていた。同じ薬瓶なので、何錠か取り出すと別の薬瓶を探す。小学生の私は、薬と白湯を盆に乗せて祖母の布団に持って行く。 「おばあさま、薬です」 「遅いよ、手をお出し」  皺のあるひからびた腕を伸ばすと、私の腕をつかみ、内側のやわらかい部分を爪できゅっとつねる。泣くくらいに痛いけど我慢した。声を出せばもっと痛くされる。じっと耐えた。 xxx 「いつもありがとうね」  母は疲れたように、私を慰めてくれる。昼間はずっと

SS 橋の上 【#青ブラ文学部参加作品】

「君も死ぬの?」 「そうね……」  夕闇の薄暗い橋で少女が立っている。たまに車が通るくらいで通行人はいない。橋の欄干に足をかけた少女を見つけて僕は驚いた。 「僕も死ぬんだ」 「そうなんだ……」  表情が乏しい彼女は、コミュニケーションが苦手そうに見える。 「先でいいよ」 「うん……」  そこにすっと車がライトを光らせて通り過ぎる。彼女は固まったまま動かない。 「ならぼくが先に行くよ」 「じゃあ、後から行くね……」  彼女の表情がやわらぐと普通にかわいい。もっと会

SS 返し【短歌物語】#青ブラ文学部

 ひたひたと誰かがついてくる。ふりむくと誰も居ない。気のせいと思いながらも不吉に感じて陰陽師を訪ねる。男は正六位の役人だが下級だ。 「ごめん たれかおるか」  下男が来ると思ったが、頭髪がかむろの女児が歩いてくる。無表情なまま、奥へ導くように進む。 「ここで待てば良いのか」  女児が無言でうなずくと広い板敷きの部屋に招き入れられた。板の上でしばらく待つと音も無く陰陽師が部屋に入る。 「御用件を」 「かくかくしかじか、妖物にでも祟られたかと」 「最近、貴方は歌を詠みました

SS 奇妙な部屋 【#青ブラ文学部】極めて陰惨な表現があります。苦手な人は読まないでください。

 静寂を破る放屁の音が部屋中に響き渡った。審問官は誰も動じない、今は水攻めの時間だ、しばらくすると大量の水が排出される筈だ。彼女は木製の三角錐の上に吊されて、両手首を鉄輪で縛られた状態だ。 「魔女なんだろ? 白状しろ」  煉瓦の壁に吊された女や男が虚ろな眼で拷問を眺めている。美しい少女は漏斗から流される水にむせる。 「もっとゆっくり流せ、窒息するぞ」  腹は臨月のように膨れ上がり人が排泄する場所からは水が漏れ始めた。ゴボゴボと腹部からの音が聞こえる、限界だ。堰を切ったよう