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怪談 手相を見る女 【#手のひらの恋】#青ブラ文学部
赤い薔薇が庭先に咲いている。それを窓からながめていると村の女が扉を開く。
「――あの魔女さん……見てもらえますか」
「手を見せて」
農作業で荒れた手は美しい、土よごれをラベンターのオイルでふきとり手相を見る。
「あなたが好きな人がいるわ」
「だれです」
「パン屋の息子……」
「ああ……私に興味がないと思ってた」
嬉しそうな彼女は、かわいい恋する乙女、代金にジャガイモを何個かもらう。シチューに入れよう。私は手のひらの恋を見る事ができる魔女だ。村人はそう信じていた。次に入ってきたのは村一番の美人の娘。
「私のも見て」
「そうね……村の人は、みんなあなたが好きだけど、肉屋のハンスが一番ね」
「あんな気弱な男は嫌い」
「でもあなたには、ぴったりよ」
不快な表情をすると私を罵る。
「嘘っぱちのペテン師!」
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翌日になると若い牧師が家に訪れる。心配そうな彼は私を村から逃がしたいと懇願した。
「悪い魔女と噂になったよ」
「そう……わかりました、村を出ます」
「君が好きだ、でも……」
「魔女とは一緒になれないわ」
何度も振りかえりながら彼は教会に戻る。私が旅支度のために家の中に戻ると、裏口から入ったのか屈強な男達が私をとらえる。
「魔女は火あぶり!」
「魔女を殺せ!!」
「まてまて、魔女はまず尋問をしないと」
いやらしい男達は私の胸を玩具のようにもてあそび、食事するテーブルに押し倒す。
「ハンス、まだだろ、魔女を尋問してやれ」
「ハンスも居るのね?」
「ごめん、僕にはできないよ……」
気弱なハンス、彼ならばあの美人で高慢な女と暮らせたのに……
「ᚣᛉᛤᛒᛊᛊ」
古代の呪文を唱えると床から赤いムカデが男達の足から這い上がり尻の穴から体を食い破る、絶叫する男達を見てハンスは大声でわめきながら泣いている。
「かわいそう、もう戻らないわね」
やさしく首をもぎとるとテーブルの上にそっと置く。魔女の家を炎で燃やして死の馬を呼ぶ、ミイラのような馬の背に乗り別の村に行こう。
「あの牧師に抱かれても良かったかな」
自分の手をひろげる、でも……手のひらの恋は見つからない。
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