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雑多な怪談の話

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#ストーリーの種

SS ああ、なんて温かい雪だろう。#ストーリーの種

 ああ、なんて温かい雪だろう。冬山で遭難した俺は雪洞を掘って難を逃れようとした。結果は誰にも発見されないままだ。俺は雪の布団にくるまって幸せだ。 「残業も多かったからなぁ……」  今は好きなだけ眠れる。そういえば昔話で雪を布団にして死んだ兄弟の話があったな。あれは悲惨な話だ、両親が死んだので家を追い出されて、雪を布団にして凍死をした。 「凍死って痛いんだけどな」  体の血液が凍るので痛みが走るが、それも長時間体温が下がっている状態だと気がつかない。俺は眠るように死ねた、き

SS 彼は鼻をクンクンさせて言った。「この部屋、なんかアホ臭くない?」#ストーリーの種

 蒼木紅狐は鼻をクンクンさせて言った。「この部屋、なんかアホ臭くない?」 「なにそれ? 匂いなんてないわよ」  女子の部屋でいきなりクサイとかデリカシーが無さすぎる。私が傷つくことも考えられないの? 呆れて私は不機嫌になる。 「違う違う、アホ臭いんだ」 「……意味わからない」  彼は変な男だ。中学のクラスで孤立している男子と付き合う事になるのは偶然だった。 「遠崎月美と蒼木紅狐は、準備室で資料を集めてくれ」  先生がたまたま目についた私と、暇そうな蒼木君を指さすと仕事を

SS カラスに慰められたことはあるかい。#ストーリーの種

「カラスに慰められたことはあるかい。」  老人はぼんやりと公園のベンチで座り中学生の私を見ている。遠縁の親戚が老人ホームに行くため、家族は老人の家の整理をしている。私は彼を見守る係だ。部屋は汚れているために大人達が部屋を掃除して、必要な書類や通帳を探している。  老人とは面識はあるが、どんな人だったかは忘れてしまった。両親も老人のことを知らない、孤独な老人だ。 「俺の部屋にカラスが居るんだよ」  私はどう返事をすれば良いのか判らない、鳥をペットにしていた様子は無いからだ。

SS 朝なのに、夕暮れの匂いがした。#ストーリーの種

警告:グロテスクな表現がありますので、苦手な方は読まないでください。  外は暗い、雨が降る外は朝なのに、夕暮れの匂いがした。雷が鳴ると異臭が漂う。轟々と雨が降り続く、小屋の中も薄暗いままだ。昨日の獲物は足を伸ばして動かない。 「かなり暴れたな、傷だらけだ」  男は腕を見る。赤くミミズ腫れが出来ていた。男は野盗で小屋を見つけて休むことにする。彼は押し込み強盗だ。家人がいれば殺して金目の物を盗るが、山奥の小屋にあるわけもない。 「小娘は死んだか? 」  小屋には一人の娘し

SS Hey, Siri. Give me chocolate. #ストーリーの種

 ママはお風呂に入っている、僕はママの携帯を見ながらつぶやいた。お腹が減っていたので無意識だったと思う。記憶は定かじゃない。 「Hey, Siri. Give me chocolate.」  誰かチョコレートくれないかな。しばらくすると携帯から声がする。 「チョコレートを送りました」  奇妙な返答は単なる間違いに感じたけどチョコが机に置いてある。僕は手に取って食べると甘くておいしい。お風呂から上がったママは僕から携帯を取り上げた。 「ママの携帯をいじっちゃだめよ」

SS 昨日助けていただいたミジンコです。#ストーリーの種

「昨日助けていただいたミジンコです。」  おじいさんは、少女を見ている。年頃の十七歳くらいの娘がニコニコと笑っている。ミジンコ?そんな名前の村の子は居ただろうか? 「どこの子だい?」 「私を助けてくれました」 「いや礼はいいよ、歳なので何をしたのかは忘れた。もうお帰り」  おじいさんは助けた覚えはありませんが、礼儀正しい娘だと喜びます。娘は恩返しのために食事を作るから住まわせてくれとお願いします。まぁそれならと言う事で一緒に暮らす事にしました。ミジンコ少女はおじいさんを

SS 隣の家まで、一本の蜘蛛の糸が伸びていた。 #ストーリーの種

隣の家まで、一本の蜘蛛の糸が伸びていた。蜘蛛の糸なんてすぐ切れそうなのにしっかり見える。触ってみる。しなやかで弾力はある。そして切れない。 「本当に蜘蛛?」 隣の窓が開くと幼なじみの結菜が顔を出す。 「朝陽なにしているの?速く寝なさい」 黒髪のショートの丸顔だ。狸っぽいと思うが絶対に言わない。殺される。 「いやこの蜘蛛の…」 言わない事にした。些細な事で好奇心を刺激すると結菜が騒ぐかもしれない。俺は判ったとうなずくと窓を閉める。朝起きると、キッチンで朝食を食べる。蜘蛛が天

SS 本当は叶ってほしくない願い事がある。 #ストーリーの種

本当は叶ってほしくない願い事がある。彼の幸せだ。彼が幸せになると私が不幸になる。 「別れてくれ」 彼は何回も頭を下げる。離婚してくれ。浮気相手に子供が居る。金は払う。家もやる。俺は家族を持ちたい。お前じゃダメなんだ。 私は泣きもしないで彼を見る。黙って見ている。私を彼は恐ろしそうに見る。最後は怒鳴る。 「お前はいつもそうだ、何も言わない、何を考えているか判らない」 私にも判らない。幸せが何か判らない。彼が怒る理由も判らない、自分がどうしたいのか不明だ。私はきっと他人が幸

SS 「   」おみくじは、白紙だった。 #ストーリーの種

「   」おみくじは、白紙だった。俺は何かのミスと考える。常識だ。 「よし、宝くじが当たりますように」 紙にペンを使って書いてみた。俺はそのまま木に結び付けた。本来は大凶の場合に結び付ける。 「未来が無いなら大凶より悪いからな」 俺は駅前で宝くじを買う。 xxx 予感や予想はある。白紙を引いた時からガチャ運が高まっていると感じていた。予感通りに宝くじは当たる。俺は仕事を辞めた。大金を手にして神社を回る。焦ってはいけない。おみくじを引くために全国の神社を回る。 もちろ

SS 俺の地元は、年に364日、祭りをやっている。#ストーリーの種

祭りの音が聞こえる。私は暗い道を灯りが見える方向に歩いていた。携帯電話にメッセージが入る。 「危険かも」 xxx 私はいつものように通勤電車で帰える。少し寝てしまうと電車の窓からは見知らぬ風景が見えた。寝過ごした。私は次の駅で降りようとすると、聞いた事も無い駅名……。 私は混乱をした。とにかくその次で降りる、夕闇が迫っている。携帯電話で自宅に連絡しても友達に連絡しても、通じない。職場ですら通じない。あり得ない状態で私は迷う。 いつも見ている匿名の掲示板に接続すると何故

SS みんながぐっすり寝たら、わたしたち、おフトンの妖精の出番なのです。 #ストーリーの種

夜は短いの。私たちが活動できるのは数時間しか無いわ。みんながぐっすり寝たら、わたしたち、おフトンの妖精の出番なのです。この世界には様々な妖精が居るけど私たちは人間に夢を見せるための妖精よ。 この村は本当に貧しいの。だから夢の中だけでも幸せになって欲しい。今日はパン屋のハンスさんの夢ね。私は彼の耳から入ると頭の中に侵入するわ。 「あら 耳の奥の扉に鍵がかかってる」 たまに居るのよね、夢なんか見たくないとか言う奴らが。こっちはボランティアなんだから無料なのに意固地になって見ない

SS 桃太郎って知ってる? #ストーリーの種

※極めて不適切な表現があるので注意してください。 「桃太郎って知ってる?」彼女は僕に聞いてくる。「いや 知らないよ」とぼけると彼女はメガネをくぃっとする。小学校の教室は掃除が終わり誰も居ない。最近はゴミ出しや窓拭きをして、軽く床をフローリングモップで拭くだけ。彼女は昔話が好きらしい。僕も本が好きだと判るとよく話すようになる。 「桃太郎はね、怖い話なの」目をキラキラさせて興奮している。秘密を共有する喜びであふれている。「本当は妊婦が流れてたの」僕はあまりの表現で耳に手をあて

SS 雨だ。きっとあの子も、学校に来る。 #ストーリーの種

雨だ。きっとあの子も、学校に来る。古い分校はもう誰も居ない。廃校には人影は無い。「きっと来るさ」俺はスマホを見て時間を確かめた。 俺の郷里は山奥で、里の小学校に通えなかった。分校の子供達は年齢もばらばらで良い意味で家族の感じに似ている。弟や妹と勉強をしているのと同じ。その中で、大人しい子供が居た。その子はかわいらしい女の子で、いつも一人で遊んでいるタイプだった。 どんな集団でもイジメは発生する、その時は俺は一番の年長者だった。佐代はかわいらしいからこそ、いじられるし、いじ

SS 部屋に見えない猿がいる #ストーリーの種

部屋に見えない猿がいる。琴江は、ゆっくりと猿に近づくと刀を抜いた。 「また猿が出たのか?」城主の滑川勝馬は眉をひそめる。領民が猿が田畑を荒らして困ると陳情をした。百姓達では猿を追い払うのにも限界がある。山狩りをして欲しいとの事だ。 ただ山が険しい。おいそれと人が進めるような場所では無い。領主が知恵を出せと家来に命令をする。重臣の一人が「猟師を雇いましょう」と進言をした。滑川は金を出して討伐を命じた。 だが結果は失敗で、猟師が険しい山道を歩いている最中に襲われて何人も死ん