見出し画像

SS 俺の地元は、年に364日、祭りをやっている。#ストーリーの種

祭りの音が聞こえる。私は暗い道を灯りが見える方向に歩いていた。携帯電話にメッセージが入る。
「危険かも」

xxx

私はいつものように通勤電車で帰える。少し寝てしまうと電車の窓からは見知らぬ風景が見えた。寝過ごした。私は次の駅で降りようとすると、聞いた事も無い駅名……。

私は混乱をした。とにかくその次で降りる、夕闇が迫っている。携帯電話で自宅に連絡しても友達に連絡しても、通じない。職場ですら通じない。あり得ない状態で私は迷う。

いつも見ている匿名の掲示板に接続すると何故か接続できた。私は掲示板の人達と連絡を取りながら、道を進むが駅前は無人で交番すらない。遠くで祭りの音は聞こえた。

携帯電話にはメッセージが入るが、状況を改善できる書き込みはない。携帯電話の充電も切れそうだ。私は音のする方に歩む。

数人の男達が何かを背負っている。神輿?とも思えるが細長い。まるで棺桶に見える。怖くないと言えば嘘だ。それでも人と話をしたい。

「あの…このあたりでタクシーとかありますか?」
数人の男達はお面をしている。狐だったりオカメだったり縁日で見るようなお面で顔を隠している。男達は無言で道を指さす。その方向は明るかった。

暗闇の田舎道を進む。ひたすら明るい方向に進む。村の入り口だろうか?古びた柵が見える。柵にはしめ縄が張り巡らされていた。明らかに異様だ。

私は入り口に向かうと、見張りをしていた男達が走ってくる。私はもう覚悟していた。

「夜遅くですが、おばんです」
「今日も祭りです、楽しんでください」

画像2

私を村の中に招き入れてくれた。中は明るい。太鼓の音も聞こえる。村の中央では盆踊りなのか民謡を流しながら輪になって踊っている人が見えた。みんなお面だ。

見張りの男が私に能面を渡す。
「これをかぶってて。危ないから」
わけもわからずお面をつける。

すぐに女性がお面をつけて現れた。
「何か食べますか?案内しますよ」
食事する場所は、四方に壁が無い木製のテーブルとイスがあるだけで、白米と漬物が出された。食べ終わると老人が歩み寄る。年老いた顔は皺で一杯だ。

「ここは避難所じゃよ」
老人はここは異界だと説明する。人が暮らすための場所を作った。祖先はしめ縄で外側の何かの侵入を防いだ。たまに元の世界から人が来るので、招き入れる。昼に怪異は起こらない。夜は危険だと教えてくれた。

入り口に居た見張りの男性も話の輪に入る。
俺の地元は、年に364日、祭りをやっている。
と自慢げに語るが、老人は
「祭りをすることで、夜に居る【何か】の侵入を防いでおるのじゃ」と笑う。

私は自給自足する村でしばらく暮らす。そして見張りの男と結婚する。ある日、私が野良仕事から戻る最中に道に迷う。迷った先は元の世界だ。

両親と再会できた。何十年も経過したと両親は泣いていた。でも私は、もう一度あの世界に戻れないか電車に乗るが……。今でも戻れない。

終わり

画像2

元ネタはきさらぎ駅です。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?