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雑多な怪談の話

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2023年5月の記事一覧

SS 鋼こむらがえり #毎週ショートショートnoteの応募用

「これが鋼こむらがえりだ」  師匠がいびつな刀を見せる。ソリが深い刀は異様に見えた、普通の日本刀には感じない、異質な力がある。俺の師匠は並の刀は作らない、大陸で使われるような武器ばかり作る。 「なぜこのような刀を? 」 「切られた相手が苦しむためだ」  首切りは慈悲とも言える。苦しめないために殺す。そうしないと祟りがあるからだ、殺す相手に憎しみを与えるのは、禍根を残す。師匠は逆の考えで、罪人だから最後まで苦しめて死なせるから罪は浄化される。 「恨みは俺が受ける……」

SS 朝のランキング #爪毛の挑戦状

「朝のランキングのニュースです」  スマホのアプリからニュースが流れる。私はランキングを見るのは楽しい。 「今日の一位は、僕の失敗です」  個人が自分の情報を切り売りする時代だ。作家だって同じだ、自分が感動した事や悲しいことを表現する。共感を得られると作品が売れる。  今の時代は、個人とプロの境目が薄い。みんなが【好き】を押してくれれば素人でも十分に稼げる。ランキングの一位の人は、自転車で転んで前歯を折った、前歯が欠けた写真と壊れた自転車の写真が掲載された。 「五百万ス

SS 奇妙な部屋 【#青ブラ文学部】極めて陰惨な表現があります。苦手な人は読まないでください。

 静寂を破る放屁の音が部屋中に響き渡った。審問官は誰も動じない、今は水攻めの時間だ、しばらくすると大量の水が排出される筈だ。彼女は木製の三角錐の上に吊されて、両手首を鉄輪で縛られた状態だ。 「魔女なんだろ? 白状しろ」  煉瓦の壁に吊された女や男が虚ろな眼で拷問を眺めている。美しい少女は漏斗から流される水にむせる。 「もっとゆっくり流せ、窒息するぞ」  腹は臨月のように膨れ上がり人が排泄する場所からは水が漏れ始めた。ゴボゴボと腹部からの音が聞こえる、限界だ。堰を切ったよう

SS 半分ろうそく #毎週ショートショートnoteの応募用

 雑踏の街の煉瓦の壁際でみずぼらしい少女が立っている。悲しそうな顔は薄汚れていた、勇気をふるって往来の客に声をかけるが無視される。私は彼女に近づくと直前に歩みを緩めた。 「あ、あの買ってください」  私は興味無さそうに少女を見てわざと視線を前に戻す。 「何か用かね? 」 「蝋燭を売ってます」  少しだけ落胆するが蝋燭は口実かもしれない。少女達は花やハンカチを売ると声をかけるが実際は別のモノを売る。 「かまわんよ、いくらだね」 「あなたの人生の半分です」  驚いて彼

SS 電子のコトリバコ 【ホラー】

※悪趣味な怪談です、気分を害する場合があります。耐性の無い人は以下を読まないでください。他の怪談のネタバレも含むため注意してください。  コトリバコは有名だ。所有しているだけで呪われて不幸になる、小さな箱の中身は、水子を封印する、すぐに手放さないと死者が出る。 「新調したPCは調子いいな」  グラボを積んでAIを構築した。最新のCPUとグラボなので100万近い。元は取れると判断する。小説を書かせて儲けたい。ソフトの名前はコトリバコ。外人が作り上げた大規模言語モデル(LLM