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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

記事一覧

SS 古屋敷の怪 【風鈴と】#シロクマ文芸部

 風鈴と夏がやってくる。チリンチリンと鳴る風鈴の屋台を引きながら老人が街中で売り歩く。風鈴は音にひかれるように売れていく。 「いい風鈴ね」 「とても良い音ですよ、夜に眠るときにぐっすりです」  涼しげな音色は人を安心させる。老人はゆっくりと裏通りを進むと古くて大きな屋敷が見える。 「おい、風鈴屋、入ってくれ」 「毎度どうも」  老人は風鈴を何個か、みつくろって屋敷の裏口を通って中に入ると、縁側で太った男が着物姿で座っている。 「風鈴をくれ」 「これはいかがでしょうか

SS 神様【#大予言】ボケ学会のお題参加作品

「大予言です」 「大きくでましたな」 「予言つうものは大きくしないと面白くありません」 「確かに、道で十円拾ったなんて予言されても困ります」 「その通り、大きな予言は夢がある」 「ありますな、宝くじが当たるとか夢ですな」 「そんな小さいものじゃない」 「もっとですか? そうですな国の大統領になるとか夢ですな」 「もう君は視野が狭い」 「狭いですか」 「もっとね、宇宙的なスケールですよ」 「大きく出ましたな、そうですな、宇宙人にさらわれてスーパーパワーを持つとか夢ですな」 「小

SS 寿命を知る王【#大予言】ボケ学会のお題参加作品

「ノストラダムス、ノストラダムスはおるか」 「おります」  王は大予言者を招く 「予言してくれ、わしの命はどれくらいだ」 「お聞きになってどうなります」 「死ぬ時がわかれば、その間は楽しめる」 「判りました、今夜死にます」 「……それは本当か」 「存分に生をお楽しみください」  予言者が去ると王は息子を呼んで引退を宣言してベッドに横たわる。 「もう何も心配はいらない……とても幸せだ」  深く眠ると翌朝に目がさめる、生きている自分に驚いて予言者を呼ぶ。 「ノストラダ

必然【#大予言】ボケ学会のお題参加作品

1999の年 七の月  空から恐怖の大王が降りてくる アンゴルモアの大王を復活させるために その前後の期間、 マルスは幸福の名のもとに支配する  そう、これは衝撃的だ、世界の終わりが見えている。誰もが世界の破滅を回避しようと考える。来るべき災厄を避けようとするのが人間だ。  そしてだれもが忘れ去った1999年は何事も無く過ぎ去った。誰だって予言なんて信じちゃいない。でも心のどこかで恐れていた。  今はもうそんなものはない、世界なんて破滅しない、大地震やコロナや果てしない

54文字 【#大予言】ボケ学会参加作品

#お笑い #ボケ学会 #54文字

SS 平和の宴【見たことがないスポーツ】#毎週ショートショートnoteの応募用(900文字)

 オリンピックには封印された競技がある……レスリングである。もちろん従来のグレコローマン式やフリースタイルはあるが、封印されたレスリングは別ものだ…… 「テミスト、準備はいいか」 「ああ……平気さ」  テミストの全裸の体はオリーブオイルで輝いていた。腕の力こぶは隆々として肩幅も成人男性の二倍はある。  ギリシアで一番の男、すべての競技で一位をとる英雄。競技場からテミトスを呼ぶホルンの音が響く。暗い控え室の扉が開かれた。 「テミストー」 「ステキよー」  ブロンドの美

SS 闇深娘 【#おフランスでは、◯◯ざんす】#青ブラ文学部参加作品(改)

「おフランスでは、闇深ざんす」 「ザンスって、トニー谷かよ」 「それ誰ざんす?」 「ソロバンもって踊ってた人だよ」  幼なじみは、口に手をあてて笑う。 xxx 「デートして進ぜよう」 「ああ、うん、どうした?」  変な子だ。子供の頃はテントウムシを瓶にいれて集めていた。そのまま忘れたからみんな死んだ。彼女は不思議ちゃんとは、また違うオタクの娘に育つ。 「近代写真館で作品上映あるの」 「うん」 「一人でいくと危ないので付き合って」 「映画館がやばいのか?」 「うん」

SS プラス思考【#プロのマイナス】 #爪毛の挑戦状

 俺はマイナス、マイナス思考は周囲の人をうんざりさせる。教室で授業が始まるまでただ座る。それだけで負のオーラが漂い人を近づけない。静かで幸せだ。 「おはよ」 「ああ」  彼女はプラス、プラス思考は周囲の人間を元気づける。前向きでくよくよしないで、細かい事は忘れるけど、雑なわけじゃない。隣の席に座るとやたらと話かけてくる。 「それでね、お母さんがね……」 「母親がそんなに好きなのか」  きょとんとする彼女は得意満面の笑顔で親指を立てる。普通なら俺のネガティブな返しでうん

140文字 梅雨しめ

梅雨があける、開けるなら閉めないといけない。「梅雨しめますよ」梅雨がびっくりした。「え?ちょっとまってください、どこをしめるんですか?」夏が梅雨を見ながら「秋まで閉じ込めます」「ひどい夏さんひどい」「出しっぱなしはダメ」「わかりました閉めてください」秋になったらきっと大雨にしてやる。 #梅雨明け #ボケ学会 #参加募集 #笑いは世界を救う #お題発表

SS 猫のかき氷 【#かき氷】シロクマ文芸部参加作品(730文字位)

 かき氷は、ちべたい。猫には最適だ、猫舌だもの。ミケは夏に商売する事にした。 「青カエル君、氷はあるかい」 「あるよ、ノコギリで切るよ」  ギザギザのでっかい刃がついたノコギリでギコギコと氷を切り出す。カエルは氷室を持っているので、年中氷を買える。(カエルだけに!) 「ありがとう」 「暑いから体を冷やすのかい?」 「いや食べるんだ」 「それは……めずらしい」  青カエルが不思議そうな顔しながらミケを見送る。ミケは鋭い爪があるから氷を削るのは苦にならない。早速、屋台を借

SS 氷売り 【#梅雨明け】ボケ学会参加作品

 熊さんと八さんは、梅雨あけの夏日に長屋で寝てる。 「暑いな」 「暑い言うな暑い」 「お前が二回も言うから暑い」 「ええい、うっとおしい」  熊さんが長屋の戸を開けると風は入らずに、むっとする熱気が部屋に流れ込む。八さんたまらずに 「氷食いてい」 「夏にあるか」 「いやこの前売ってた」 「どこで」 「長屋の前で天秤棒かついで売ってた」  当時は長屋に物売りが来るのは普通でした。 「氷なんてどうすんだ」 「氷をカンナで削って煮て冷やしたアズキをいれて食うんだ」 「うま

SS 夢の国【2cmアパートメント】#毎週ショートショートnoteの応募用

「2cmアパートメント?」  部屋を探していたら変な広告がある。よくある激狭物件だろうか? 激狭はロフトなどで居住空間を増しているデザイン型のアパートだ。間取りが異様で寝る場所が2メートルしかないとか? (誤植なのかな?)  電話して案内をしてもらうと公務員のような男が面接をしたいと役所に呼ばれた。 「これは国家プロジェクトなのです」 「はぁ?」  エネルギー問題で地球が危ない。そのためにエネルギーを使わない国を作れば良い。国は人間の意識を2cmの電脳空間に保存する

SS DTちゃうわ!【リベンジトリートメント】#毎週ショートショートnoteの応募用

 復讐、それは甘美に違いはないが虚無でもある。復讐しても何も変わらない。 「経験ないんだ」 「ないよ」  ギャル風の彼女は俺を真正面から見つめている。彼女は経験豊富でスル事が愛と考えていた。だから愛した。 「じゃあしよ」 「無理」  眉をひそめる彼女は横を向く。怒っている? 嫌いになった? 気分を害していないが戸惑っている。端正な横顔を惹かれるように見つめる。 「なに?」 「いや、かわいいかなと」 「かわいいよ、だからなんで」 「なにが?」 「かわいいならスルでしょ

SS お化け屋敷ボケ 【#ボケ学会のお題】(700文字くらい)

 少女がお化け屋敷にお使い行くことになったのデス!(無理矢理か!)その屋敷は日本家屋で、今にも出そうな雰囲気。恐る恐る玄関に入って挨拶します。 「こんにちは」 「どうも、いらっしゃいませ」 「キャー! お化け」 「キャー! 人間!」  お化けは顔だけ浮いてます。少女はすかさず突っ込む。 「お化けが驚いてどうするの!」 「わざわざお化け屋敷にくる神経が怖い」 「私が無神経な人みたいに言わないで」 「お化けの方が神経ナイデスゥ、勝った」 「勝利宣言しないで、そうだお化け退治