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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#SF

SS 明日のために【月めくり】 #シロクマ文芸部

 月めくりにそっとふれる。白い壁にかかってる月めくりは手作りだ。月めくりはもう売られていないから自分で作る。 「そろそろね」  月めくりに大きく×を書く。サインペンも尽きてきた。あと一枚めくれば世界が変わる。  昔の事を思いだしながら部屋の中をゆっくりと歩む。足が萎えて早く歩けない、学生の頃は駅の階段を駆け上がれた。 「春菜」  駅の階段を昇ると後ろから声がした、白く細い手が左右にふられる、友達の美野里の長い髪が流れるように肩にかかる。ブラシで整えられた黒くつややかな髪

SS 交流ランプ 坊ちゃん賞習作用

 孤独感が強まると実験準備室に居座る。何するわけでもないが、居心地が良い。大野ゆりかは、汚れた窓ガラスを見る。自分の顔が薄く映っていた。人付き合いが悪そうな、無表情な顔だ。 「帰りは閉めてけよ」  私に鍵を渡すと、先生は教員室に戻る。先生は残業でレポート書いている、鍵は帰りに戻すつもりだ。  準備室は古く、昭和くらいの器具が使いもしないの置かれている。名目上は実験クラブだが部員は私しかいない。 「……宿題でもしよう」  家にも戻りたくない、そんな時は孤独を守れる居場所で

SS いつもの彼女【異口同音&幼児語&スーパーヒーロー】三題話枠

「銀河に替わってお尻ペンペンよ! 」  美少女戦士ラブラブムーンだ、俺はうんざりしたような顔をする。前口上がひどい。幼いというか中学生なのに洗練されていない、思考回路が小学生なのかセンスが悪く幼児語を使う。 「悪いことしちゃだめって言ってるのに! 」  こっちは悪の組織なんだがら悪い事をするのは当然だ。実際はせこい事しかしていない。今回は役所の小型家電の回収ボックスを狙い、中の携帯電話を盗み出して溶かして金を取り出す。溶剤とか作るのが大変だから割に合わない。 「窃盗だ

SS 余命200年。#ストーリーの種

 余命200年。一部の特権者だけが享受できた。一般人は50年前後で落ち着いている。俺は25歳で彼女は125歳。彼女が俺を選んだ理由は、昔の夫に似ているからだ。 「俺の親戚かなぁ? 」 「違うと思う、似てるのは雰囲気だけよ」  特権者は芸術家や研究者が中心で、財産や不動産は無関係だ、金持ちが特権者になるわけではない。国が認めた人間国宝のようなものだ。特殊な感性を持つ人たちは0から1を作り出せる。一般人は出来ないから、特権者が作り上げたものを楽しむだけの人生になる。 「俺も

SS 壊れたロボット【男の子&瞬間接着剤&夏祭り】三題話枠

 夏祭り、その華やかで心が躍るイベントに僕は楽しみにしていた、でも祖母の具合が悪いので両親は参加できない。 「一人で行くよ」  両親と一緒に訪れた田舎は、もう村人が少ないのかさびれて見えた。出店もある、風船釣りや金魚すくいや綿飴に、少ないが子供や若い男女が楽しんでいた。僕はその雰囲気だけで十分だ。何を買うわけでもなく見て回る。 「おい、お前はどこのもんだ? 」 「○○から来たんだ」  僕と同じくらいの子供達が寄ってきた、外から来るものは敵だと言わんばかりの排他的な態度は、

SS ハナ大増殖 #爪毛の挑戦状

 金木犀の香りがする、甘いような濃厚な臭いはむせる。あまりに強いので口で息をする。 「なんだ? 芳香剤でもこぼしたのか? 」  ベッドから起き上がり窓を見ると外がオレンジ色だ。窓に近寄ると臭いがきつくなる、外がハナで埋まっている。  テレビをつけるとニュースキャスターが「ハナ大増殖」を連呼していた。地球温暖化の影響を報じていたが、どうやら大陸側で実験を失敗したらしい。 「金木犀にクマムシの遺伝子? 」  人間の細胞にクマムシの遺伝子を入れて、耐久性を確かめられたと怪し

SS 永久には動きそうもない、B級機関だった。#ストーリーの種

「ここがA級機関調査室だ」  薄暗い蛍光灯の下で数人がだらけている。モニターを見ているようでゲームに夢中な職員や爪を磨いているOLが居る。自分が配属されたのは、永久機関を審査して調査をする部署だ。つまりリストラ対象の職員部屋だ。 「何をすればいいんですか?」 「調査対象のメールが来たら動かないとテンプレメールをする」  永久機関は、外からエネルギーを与えないで動作をするシステムで物理学的に存在はしない、もし存在するならばそれはA級と呼ばれて登録される。現実には動かないB級

SS アイドルアレルギー #爪毛の挑戦状

 しばらく前からアイドルに対する認識が変わる。容姿が優れた女性が敬遠された。カワイイや美しいは禁句だ。人を判断する時に見た目はダメ。常識が変化すると、リアル肉体を評価しなくなる。アイドルアレルギーの完成だ。  それでも人類はカワイイが好きだ。アイドルは無くならない。 「イェーイ、盛り上がっている! 」  A子はバーチャル空間でライブする、自宅の部屋で無線のモーションキャプチャで体をトレスさせながら舞台で踊る。同じようにライブを楽しむ人達は自室で手をふる、表示されているのは

SS リストラのおと #爪毛の挑戦状

「いまどき追い出し部屋があるのか……」  俺は殺風景な部屋を見る、四〇代で職級が上がらない社員を、この部屋に入れて精神的に追い詰めてから退職させる。裁判になる場合もあるが、そこは会社の弁護士が違法にならないように、目を配っている。  人工知能の導入で社員がどんどん不要になると、人を管理する上司の役割が減って行く。人が多いときには必須だった仕事も無くなる、チームビルディングなんて言葉も死語だ、人を管理する必要が無い。 「林さんもこの部屋ですか? 」  営業の山田さんも来てい

SS カラス男 猫探偵13

あらすじ  奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙い、猫探偵は捕縛されカラス男に尋問されている最中に、思考戦車に助け出された、猫探偵は主犯の館に突撃を開始する。 「来るぞ」  思考戦車と一体化した所長は俺に通信を送る、俺も黒豹型ロボットの目で確認した、ニーナの祖母のメリル・エリザベス・ウッドの住まいが見える。中世のレンガ造りは古く貴重だ。そ

SS 建設の頓珍漢 #毎週ショートショートnoteの応募用

「そこの廊下は曲げてくれ」  動線をまったく考えずに頓珍漢な指示を出す客に営業も困っていた。老いた科学者から、複雑な間取りの注文をされた。 「言われたとおりにしろ」  上役は、儲かればなんでも良い。俺は設計に頼み込んで奇怪な家を作り上げた。建築の頓珍漢具合は最高レベル。迷路のような家を作る。現場の職人も困惑していたが建築が終わり引き渡し当日に、俺も現地検分に行く。郊外の二百坪の家は堂々として見栄えも良かった。 「良い出来だ」 「木材を豊富に使いました」  俺の話を聞きなが

SS メガネ冠婚葬祭 #毎週ショートショートnoteの応募用

 俺は暗闇に落ちる、無限に続く落下を体感しながら光が見えた。出口だ。 「元気な男の子ですよ」  俺は無難な人生を歩んでいる、郊外の一軒屋で二階に部屋を与えられた、メガネをかけた俺は、日本のどこにでもいる子供。虐待もされない、いじめも受けない、生活に困らないだけの給料を貰う両親は、いそがしいが俺を愛していた。 「A君は真面目よね」  B子は俺が好きなのか、よく会話をした。幼なじみの彼女とは大学まで一緒に過ごし同棲をする。何も問題は無い。  俺には悪い癖がある、殺人衝動だ。

SS 反撃の時間 猫探偵11

あらすじ  奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙う。捕縛されたロイはカラス男に尋問されている最中に、思考戦車に救出される。 「奴らが必死だ、暗殺命令も発令されている」  どれほど金持ちでも、ここまで大げさに騒ぐ理由が判らない。金で懐柔する方法もあるのに、ニーナの殺害を選択する。所長が操る思考戦車が、地下室から出ると銃撃が始まる。所長が自分

SS 人男子 #爪毛の挑戦状

「召喚失敗です」  弟子が悲しそうにしている、私は中脚で頭部をなでた。王から人間の力を借りるために召喚をしてくれと頼まれている。だが遙か数億年前に絶滅している生物だ。我々と意思疎通が出来るのだろうか?  反陽子コンピュータの計算により、次元転移を行い過去へのゲートを作れる数式を生み出せた。数式を人工知能に与えれば自動的にマシンを作れる。これは人間が作ったモノだ。 「私達には必要な事だ」  王と王妃が同時にうなずく。我々の世界の存続に関係する。 「王様は人間を食べるのです