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SS 反撃の時間 猫探偵11

あらすじ
 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙う。捕縛されたロイはカラス男に尋問されている最中に、思考戦車に救出される。

「奴らが必死だ、暗殺命令も発令されている」
 どれほど金持ちでも、ここまで大げさに騒ぐ理由が判らない。金で懐柔する方法もあるのに、ニーナの殺害を選択する。所長が操る思考戦車が、地下室から出ると銃撃が始まる。所長が自分の戦車の周囲に電磁場シールドを展開した、飛んでくる鉛玉が強烈な電磁場でねじ曲がり当たらない。

「これ使いたくない、エネルギーが減る…………」
 俺を拉致監禁した場所から離れれば銃撃は薄くなる。カラス男は異変を感じて逃げていた。俺は所長に頼む、自分用のパワードスーツがある場所に直行してもらう。

「自分で決着をつけるのか? 」
「時間稼ぎだよ、俺が突っ込めば敵も混乱する」
 所長のカメラアイが俺を見つめる、もっとも電子カメラに表情があるわけもない、それでも悲しげに感じる。

「ずいぶんと肩入れしているんだな? 」
「なりゆきさ、ここまで強引な理由も知りたい」
 夕刻の都市を思考戦車が駆け抜ける、俺は港の貸し倉庫を指示した。もう廃墟に近いかもしれないさびついたコンテナが立ち並ぶ場所で停車する、俺はよろよろと歩くと電子ロックのコンテナを解錠した。

「ゴリアテか」
 大戦末期に投入された禁止兵器は、搭乗者を疲弊させて最後は廃人にする危険なシロモノ。俺はこれで敵兵を殺していた。

 黒豹のようなロボットは四つ足で走り回れる、体長は2.5メートルと小さい。エネルギーを充電されたままで保存してある。たまにネズミに外装と内装を掃除してもらう。俺は所長に別れを告げようとした。

「後は俺だけでやるよ」
「途中までいくよ、俺の補助脳は既にバックアップ済みだ」
 所長は補助脳さえあれば人格を失わないと考えている、俺はそれでもバックアップを作らない。自分は自分だけで一人しか居ない。ニーナはクローンを作られた時にどんな気分なのか? 自分が複数存在する違和感は、死を選ぶほど嫌悪感があるのだろうか?

「悪いが乗せてくれ」
 所長が俺を複数の機械の腕で持ち上げる。背中に降ろすと、走りだす。ニーナを殺そうとしている祖母のメリル・エリザベス・ウッドの居場所をAIに探らせる。端末に彼女はもう年寄りでベッドから動けないと表示された。

「ガセでなければ、ここに突っ込もう………」
 郊外の住宅は襲撃者避けのトラップや警護が満載な筈だ、俺はクロミに暗号通信を送り、数分だけ撹乱してもらう事にする、後から返せるアテがない請求がしこたま来るだろうと笑う。

続く


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