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SS 建設の頓珍漢 #毎週ショートショートnoteの応募用

「そこの廊下は曲げてくれ」
 動線をまったく考えずに頓珍漢な指示を出す客に営業も困っていた。老いた科学者から、複雑な間取りの注文をされた。

「言われたとおりにしろ」
 上役は、儲かればなんでも良い。俺は設計に頼み込んで奇怪な家を作り上げた。建築の頓珍漢とんちんかん具合は最高レベル。迷路のような家を作る。現場の職人も困惑していたが建築が終わり引き渡し当日に、俺も現地検分に行く。郊外の二百坪の家は堂々として見栄えも良かった。

「良い出来だ」
「木材を豊富に使いました」
 俺の話を聞きながら老人が嬉しそうだ。玄関のドアを開けて、一瞬だけ目眩がする。空間が異常なのだ。一緒に来ている現場職人の顔を見ると真っ青だ。

「こんなわけがない……」
 あり得ない高さの天井と広さ。

「設計通りだよ、マルチバース空間に接続できた!」
 老人が足早に奥に消える。俺は追いかける事を諦めた、中に入れば戻れないと直感がある。老人は有名な理論物理の数学者だった。異世界に通じる家は今は政府に管理されている。


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