SS 食べる夜 #シロクマ文芸部
食べる夜が近づいてくるのは本能で判る。
「もう別れようか? 」
蛍光灯の下で見る男の顔は幽霊みたいに青白い。もちろん本物は見たことは無いし居るわけも無い。冷たく汗ばむ体から体温が急激に下がる感覚、見捨てられる事の恐怖よりも生理的なさみしさで体が小刻みに震える。この感覚になれるとは思えない。
「飽きた? 」
「そうだな、体が冷たすぎる」
私は体温が低い。肌を合わせても、お互いの肉の冷たさばかりを感じる。それでも私は男の熱が欲しかった。男を食べたい、夜に食べたい。狂う