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創作民話 関係

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#爪毛の挑戦状

SS 焚火霊 #爪毛の挑戦状

夜道で焚火を見ながら侍は酒を飲む 「焚火があって助かります」 商人風の男が荷物を背負っている 「峠を下りると道に迷ってしまって」 商人は荷物をおろすと座る 「ここは霊が出るらしい」 侍は、つぶやく 「傭われた俺はここで幽霊を退治するために来た」 商人は不思議そうに 「幽霊とか恐ろしいですな」 侍は商人を見ると 「夜が明けて目が覚めると、食い物と酒が置いてあるんだ」 指さす先に食べた後の弁当がある 「でもな、それは俺が最初の日に持ってきたものだ」 商人が 「最初の日に持っ

SS 顔部 #爪毛の挑戦状

「物部殿」梶原が俺の前にあぐらで座る。「織様を頂きたい」いつもの催促だ。娘は嫌がっている「お前に嫁がせる気は無い」恨み顔で父親の俺を見ると出て行く 豪族同士の婚約で勢力が変わる。梶原は評判が悪い。やたらと婚姻をすると妻が何人も死んだ。領地は奴が奪う。娘が座敷に来ると「また来たのですか?」と嫌そうな顔をする「大丈夫だ、お前は嫁やらん」美しい娘は納得すると嬉しそうだ 「親方様大変です」深夜に近習が寝所に報告をする「檻様が…殺されました」忍び込んだ賊に殺されたと言う、俺は娘を見

SS 動けない影 #爪毛の挑戦状

「やあ ひさしぶり」たぬきさんが、うさぎさんに挨拶します。うさぎさんは落ち込んでいるようです。昔からの知り合いなので心配です。「うさぎさん、どうだい釣りにでも行くかい」親切なたぬきさんは、うさぎさんと川に行きます。 たぬきさんとうさぎさんが散歩をしていると、地面に影がある。「あれ?なんの影なんだろう?」たぬきさんが不思議に感じます。 上を見ても何もありません。うさぎさんは何やら困惑している様子です。「この影はなんだろうね?」たぬきさんが、うさぎんさんに聞いてみました。「動

SS 燃える雨雲 #爪毛の挑戦状

※残虐な描写があります、注意してください。 子供がふらふらと歩く。二階にある部屋の中を食べ物を探すかのように歩き回る。私がここに来たのは昨日だ。親から売られると ここに閉じ込められた。 飢饉が来ると子供は売られた。「頑張るんだよ」十四歳になった私は貧農の子供だ。皆が食べる事を優先にする。子供を売る事で食糧確保するのは手っ取り早い。 母親は手をふって私を見送った。奉公に出されると言うが実際は人売りに渡された。私は恨むつもりもない。女の子は高く売れる。私は他の兄弟達の役に立

SS 金持ち鬼 #爪毛の挑戦状

 赤鬼は人に好かれたい。自分が鬼というだけで嫌われるのは納得できない。人間達と親しくなりたい。 「青鬼さん、なんとか人間と仲良くなりたい」  俺は親友の青鬼に相談をしてみると彼は一つだけ提案してくれた、自分が悪者になるので君が人間を助ければ良い。俺は躊躇をした、それでは青鬼はどうなるのか? 青鬼が嫌われるし、自分も鬼だ、同族として見られる。 「それは危険な行為だ」  青鬼も熟慮すると危険を理解する。鬼が人を襲うイメージを定着させるのはまずい。鬼は人間の味方だ、そう信じさせ

SS ダジャレバナナ #爪毛の挑戦状

 顔を白く塗った道化が恐怖の表情で固まっている、手には黄色いバナナを持って舞台に立っていた。王はつぶやく。 「ダジャレバナナだ、笑わせろ」 「このバナナが黄色いのは……、太陽が黄色いから……」  王様は黙って首を切るまねをする。舞台の上の道化は悲鳴を上げながら兵隊に連れていかれる。 「つまらん、次を呼べ」  王様は気まぐれな性格で無能だ。主君に落ち度があったとしても、交代は難しい。無能でも害にならなければ放置される。彼はひたすら笑いを求めた。面白いことが大好きな王様は、

SS 宝玉【うんこかき】 #爪毛の挑戦状

「松さん、またお願いね」 「あいよ」  威勢のいい声で厠にはいり、長い杓で中身をすくいとって桶に入れる。大事な商品だ。肥桶をかついで百姓に売れば金になる。松にとっては、うんこは宝と同じだ。うんこかきは天職に思える。 (まぁくさいから嫌われるけどな……)  汚れた格好で銭湯にもいけない、匂いで敬遠される。手を洗っても臭い。うんこが金になることは判っても、この職業では嫁をもらう事もできない。  そんな時に、厠の中で、七色の玉をみつけた。 (これは、お宝か……)  便の