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創作民話 関係

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2022年4月の記事一覧

創作民話 看板娘

「おしげちゃん、客きたよ」 私はよっこらしょっと腰を上げると、客を迎えに行く。 小さな茶屋には、様々な客が来る。 侍やお遍路、小物売りに坊主。 何回も来る客や二度と見ない客も居る。 「なんになさいます」 この客は若い任侠者に見える、旅支度を整えて旅行李を 肩から背負っている。 「茶漬けをくれ」 軽食を食べてから、街道に出る客は多い。 代金を受け取り茶碗に飯を盛ると、煎茶をかけて出す。 いそがしく働いていると、任侠者は居なくなっていた。 「おしげ、いまここに若いのは来たか

創作民話 聖剣伝説

「この村には、岩に刺さった剣があるのじゃ」 村の古老が言うには、剣を抜いた者は勇者として 国を支配できると、言い伝えがある。 若いものが抜こうとしても、無理 旅人が抜こうとしても、無理 屈強な戦士が抜こうとしても、無理 「勇者は誰も居ないのか」 みな嘆くが、勇者が必要な時代でもない。 平和な時代に、剣を抜く者が居ないだけだろうと 噂をする。 ある日、幼い少年が剣を抜いてしまう。 「おお勇者だ、勇者が現れた」 みなが彼を褒め称える。 強力な武器を手にした彼は、覇道を歩む

創作民話 お汁粉屋と塩

茶屋で出す甘いお汁粉は江戸時代からある 「お里さん、おしるこを2つ」 私はこしあんに、白玉を入れて用意する。 「おまちどうさま」 客層はさまざまだが、私の店は高級店ではない 藁葺きで土壁がむき出しのぼろい店だ。 表現は悪いが、貧乏人相手の商売 別に気にしてはいない。 「しるこくれや」 外の席で、お客さんが呼んでいる。 長い椅子があるだけの席で、塩売りが座っていた 「一椀でいいですか?」 「ああ頼むよ、歩き疲れて甘いものが欲しくなった」 年老いた男は、もう見ただけでくたび