愛した人 (短編小説 1 )
#オールカテゴリ部門
その家の門の前に立つと、妙な違和感があった。
空き家にしては、そう古びた雰囲気がしない。
よく見ると、出窓にかかるレースのカーテンは真新しい白さだ。僅かに開いた窓から吹き込む風を受けて、軽やかに揺れている。
(新しい住人が住んでるのだろうか?)
その家は平屋建てで、玄関は引き戸だ。
グレーの壁は、さほど色褪せてはいない。
ふと、家屋に隣接するガレージに目を向ける。
シャッターが開いていた。中を覗いてみたい衝動に駆られ、そちらに近づく。
美紀はドキリ