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散る花、踏みしめ

iPhoneのアラームが鳴る前に目が覚める。画面を確かめると5:48。アラームは6:30に鳴るのでまだ時間はある。寝返りをうつと身体がだるい。午前中、雨が降らないうちに山の遊歩道に向かおうと思っていたけど、今日はどうかな。腰から下、脹ら脛あたりがだるい。昨日の夜に少しだけ走ったからか。もしくはただのサボりか。もう一度寝返りをうつ。身体がだるい。目を閉じる。

アラームを止めて目を閉じると、驚くほど時間が経つ時があるが、今朝はそれほど驚かなかった。画面表示は7:44。身体がだるい。7時半には家を出て山に向かい、雨が降り始める昼までには帰ってくるつもりだった。枕元には山歩き用のウェア一式と派手なマスクが置いてある。身体の状態は良くない。無理して山に向かうことはない。サボろうとしているような気がして後ろめたい。

起きあがってダイニングに向かう。ダイニングの椅子に座る家内が、おはよう、と言う。おはよう、と言ったぼくに、家内は、今日は山に行くの、と訊く。今日はやめておく、とぼくが応えると、そう、と言って家内は椅子から立ち上がり洗面所に向かう。部屋に戻ったぼくは山歩き用のウェアを仕舞って、ランニングウェアに着替える。派手なマスクはポケットに入れる。家内と入れ替わりに洗面所に向かい、顔を洗って歯を磨く。寝癖を水で軽く直して、髭は面倒くさいのでそのまま。ダイニングの椅子に座って紅茶を飲む家内に、今から走ってくる、と少し大きめの声で伝えると、そう、と家内は言う。

玄関でランニングシューズを履いて、派手なマスクをかけて外に出る。灰色の雲で覆われた空に僅かに青色がみえる。薄手のジャンパーの右ポケットからBluetoothイヤホンを取り出して電源を入れ両耳に装着する。iPhoneの音楽アプリを立ち上げて再生ボタンをタップすると音楽が流れる。アップテンポの曲までスキップさせて、何度か屈伸してから歩き出す。白黒ネコが座る十字路を越えたあたりから走り始める。


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