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顔パック効能(美容の話じゃない)

「セブンルール」で私の特集が組まれることがあれば、「朝と夜に顔パックする」っていう映像が流れ始めると思う。(ユリアンレトリバーに「ちょーしのっちゃて~」って突っ込んでもらいたい)

顔パックの習慣はここ半年くらいのことで、年齢に少しでも抵抗するための保湿や毛穴の開き、くすみ対策。ただ今日は、文字にするだけでも切ない肌の悩みに対する、顔パック効能の話じゃない。

夜のパックは時間を気にせずできるが、朝はバタバタしてるから、顔パックしながら家事をする。顔パックはエステの人のアドバイスもあって、パックの上からラップもかける。呼吸確保のため、ラップには穴をあけてあるが、顔パックとラップの間で呼吸が循環し、ラップは確実にくもる。だから顔にくもったモザイクがかかり、見た目はなかなかのホラー。1日2回、顔がハロウィン仮装、それも笑えない怖さになってることに、家族がツッコミを入れてくれたのは最初の2、3日だけだったからありがたい。

毎朝7時10分になると、娘の友達が玄関のチャイムを鳴らし、娘を迎えに来る。いつもその子に「チャイムは聞こえてるからね」ってことを伝えるため、娘か私以外の家族が「ちょっと待ってね」と声をかけるのに。

なんの伏線なのか、その日は私以外の家族4人が全滅。私だって顔パック中。

だんなさん:トイレ

お兄ちゃん:早朝の部活で不在

娘:なぜか2階にいて呼んでも下りてこない

弟:見当たらない(たぶん、お姉ちゃんと一緒に2階にいた)


私は人を待たせることが苦手で、玄関で待つ娘の友達の様子を想像していた。

最初の「チャイム聞こえてるからね」は他の家族が対応してたけど、その子が娘の支度を待ってくれてる間に、「おはよう」や「もうすぐ音楽会だね」と、私がどんな言葉をかけても何の反応もない女の子だった。表情も変わらないし、目も合ったような気がするくらいの感じ。それは1年間ずっと。

初めて声をかけたときに「おはよう」が返ってこない時点で、相手からの返事もこないのに次の話題にはいけないと思ったから、「毎朝声をかけても一言だけ」っていうルールを作った、私の直感でね。もちろん、同じ年の女の子を持つ母親だから、思うとこはいろいろあったけど、このルールを守っていた。

家族は誰も玄関に来る気配がないから、私がホラーたっぷりで出ることにした。とりあえず、顔パックをはずす発想はなかった、というより「あと5分の保湿の時間は削りたくない」と思ったからと説明するのが正解。




「おはよう」





私と目が合った瞬間、彼女は大笑いした。なにもかも私が見たことない彼女の反応。その表情や目元のゆるみ、笑い声、揺れるツインテール。それに、腹をかかえて笑うなんてマンガだけの世界と思っていたら、目の前の彼女は腹だけでなく、体ごとかかえこんで笑っていた。彼女にとってはホラーじゃなく、私の一発ギャグくらいに見えたらしい。

笑われることを想像してなかったから、とりあえず私も一緒に笑う...いや苦笑い。でも、人に笑われてこんなにも嬉しいのかっていう、不思議な感覚。芸人さんが誰かにウケてもらえたときってこんな感じなのかなぁと、頭の中でこの状況を整理していた。



「おはよう」

彼女の見たことない反応に、その日も朝のあいさつをしてたことを忘れてたけど、小さい声でもちゃんと聞こえてきた、彼女からの返事の声。

大笑いしてくれたのも嬉しいけど、彼女の声が聞こえてきたことがなによりも嬉しくて、「よかった」と思った気持ちが、私の心にしみわたっていった。顔パックの保湿成分が肌に浸透してくれるみたいに。

きっと彼女は、返事をしようと思っていたけど、いつもきっかけがつかめなかったんじゃないかと思う。

ちなみに、私の使ってる顔パックの商品名は「クリアターン」。「くすみすっきり」の文字がおどる。でも、この日は

商品名:「グリーティングリターン」 
効能:1年間のモヤモヤすっきり

こんな感じだと思う。顔パックの意外な効能を体験させてもらった。


この日以来、彼女は「おはよう」「いってらっしゃい」「もうすぐ音楽会だね」、どの言葉にも返事をしてくれるようになった。だから一言プラス、もう少しの雑談も楽しめる関係になった。「グリーティングリターン」の効能持続期間はすごい。


この前だんなさんが「彼女にあいさつしても返ってこない」とぼやいていたから、「顔パック」をお勧めしといた。



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