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「結局誰の言っていることが正しい??」【#1医療広告制作現場あるある】

医療広告ライターと名乗っていながら、最近は医療広告以外の仕事ばかりしています、藤原近道(ふじわらのちかみち)です(笑)

それでnoteをしばらく放置しているのですが、今でも過去の記事を読んでくださる方や評価してくださる方がいらっしゃるので、とても感謝しています!

そこで、(今ではあまりかかわりがない)医療広告制作の現場であった思い出話をすることができればと考えて、久しぶりにnoteを書いています。

これから医療広告に関わる方、すでに医療広告を制作している方の役に立てば幸いです!

「この特別な治療法を広告に掲載したい!」→できません

ある時、私のところにこんな相談が来ました。

ある医院さまの医療広告を制作していたころ、「〇〇治療法」について掲載したいと依頼をいただいたそうです。
その治療分野に対して医院長は並々ならぬ情熱を傾けていて、「どうしても広告の前面に打ち出したい!!」とのことでした。

しかし、医療広告ガイドライン(医療広告を掲載する上での規則)で特定の治療法を掲載するには、

  • 使用する医療機器に国内認可があること

  • 認可された範囲で医療機器が使用されていること

など、いくつかの条件を満たしておく必要があります。

調べたところ、残念ながら医院側が掲載を希望する治療法は、国内で認可が下りた医療機器を使用していなかったのです(つまり広告NG!)。

そのため、理由を説明した上で広告掲載できない旨を伝えることで話がまとまり、対応していただく運びになりました。

「どういうことだ!保健所は掲載して問題ないと言っていた!」→???

翌日、再度私のところに連絡が来ました。

どうやらその医院長が、ご自身で地元の保健所に連絡して掲載ができるかどうか確認を取ったとのこと(保健所は地方の医療機関に関わる公的業務を担っており、医療広告についても問い合わせ窓口となっていることがあります)。

そしてその保健所では「該当の治療法は掲載しても良い」という回答があったそうです。

医院側としては激オコプンプン丸です。

「どういうことだ!!掲載できないって言ったじゃないか?
保健所が良いって言っているんだから掲載してくれ!!」

しかし、どう考えても国内未認可の医療機器を使う治療法なので、掲載は難しいはず……。対応チームでどうしたものか、と頭を悩ませました。


直接保健所に聞いてみたら意外な回答……

そこでチームの代表が、直接保健所に連絡して聞いてみることになりました。すると保健所の窓口スタッフはこう答えました。


「医療機器の認可がないのでこの治療法は掲載できません」と。


私たち「この治療法は広告できません」
医院側「保健所に聞いたら広告しても良いと言われた」
保健所「この治療法は広告できません」
私たち「???????」←今ココ

これは一体どういうことなのでしょうか?



まず結論から言うと、
 私たちも
 保健所も
 さらに医院側も
嘘は言っていません(もしかして医院側が嘘をついていると思いました?)

Aさん

さて話が複雑化しましたが、実は真相は意外なものでした。

こちらから再度医院側に連絡を入れて、
保健所に問い合わせましたがやはりご希望の治療法は掲載できないとのことです」と医院長に伝えました。

それでも医院長は引きませんでした。
医院側「私が連絡した時は掲載しても良いと言われた!」
私たち「けど、当社で連絡した際には掲載ができないと回答いただきました……」
医院側「私は保健所のAさんという人にそう言われたんだ」
私たち「Aさん……」

医院側は保健所に連絡した際に担当者の名前を控えていました(しかもフルネームで)。

そこで今一度保健所に連絡することになりました。

私たち「そちらに“Aさん”という方はいらっしゃいますか?」
保健所「Aがどうしたんですか?」
私たち「医院さまが保健所で問い合わせた際に、Aさんに該当する治療法を掲載しても良いと言われたとのことでしたが……」
保健所「え?!」

真相

つまりこういうことです。

医院側が保健所に連絡した時に対応したAさんという職員は、医療広告ガイドラインについてまだまだ勉強中で、医院側の問い合わせに対して正確な回答ができていませんでした

医院側には該当する治療法を広告しても良いともとれる回答をしていました。

そのため、私たちも医院側も嘘を言っていないのに話が食い違っていく、という現象が起きていたのです。

後日、再度こちらから医院側に連絡して、Aさんが医療広告のルールについて正確に理解できておらず、このような事態になったことを伝えました。
そしてやはり医療広告ガイドラインの決まりで、希望される治療法は掲載できないことを再度伝えました。

そうして最終的に医院側も渋々納得いただきました(保健所からも後日連絡があったようです)。

このケースで学べたこと

このお話で伝えたいのは、誰が正しくて誰が間違っているという話ではありません。

重要なのは以下の2点です。

★医療広告ガイドラインはとっても難解である
★保健所職員と言っても医療広告ガイドラインの知識まちまちである

医療広告ガイドラインは定期的に検討会が開かれて、その内容も日々改訂が重ねられています。改訂されるたびに内容を読み直して、掲載された医療広告の内容に反映していくため、毎回大変な作業です。

それだけ複雑な医療広告ガイドラインだからこそ、たとえ保健所の職員と言ってもAさんのように情報を正確に理解できない方もいらっしゃいます。

我々としても医療広告ガイドラインの複雑さを知っているからこそ、Aさんを責める気にはなれませんでした。

しかし、医院側は職員一人ひとりが医療広告ガイドラインを理解していると思い込んでしまいやすいため、その点は注意しなければなりません。保健所や厚生局と言っても、一枚岩ではないのです。

結論:医療広告ガイドラインの複雑さは半端ねぇ!!

結局のところ、医療広告ガイドラインが複雑すぎるんです……。

私、藤原近道は医療広告の現場から離れて久しいですが、あれから内容に改訂が重ねられてさらに複雑化していることを考えると、また医療広告の現場に戻りたいとは思いません(ていうか今どうなってるんだろう?)。

けど、見方を変えればそれほど専門性を求められる業界だからこそ、医療広告ライターには需要があるのだと思います。

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