プロ野球の運営会社はどんな会社？♯ 7 楽天グループ株式会社

　これまでプロ野球球団を運営している会社を6社紹介してきたのですが、楽天とソフトバンクは調べるのが大変なことが分かっていたため、後回しにしていました。調べるのにも慣れてきたので、今回は楽天グループ株式会社について紹介していきます。

◯会社創設から球団買収まで

　1997年、現在の楽天グループ株式会社である、株式会社エム・ディー・エムが設立され、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』のサービスから楽天の歴史が始まりました。

　2000年にJASDAQ上場以降、楽天の事業拡大が一気に進んでいきます。有名な事業をピックアップすると、2001年にインターネット上で宿泊予約ができる、総合旅行サイト楽天トラベル、2002年に楽天ポイントのサービスを開始、2003年にディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社を子会社化、これが現在の楽天証券株式会社です。それまではIT企業のイメージがあった楽天ですが、この頃から事業の多角化を進めていきます。2004年に東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生、プロ野球に参入したことによって楽天の名前が一気に知れ渡りました。

◯財務状況から見る楽天グループ

　楽天グループの有価証券報告書を読んだのですが、正直、疑問に感じる点がありました。例えば、楽天グループと同じく球団を運営しているオリックスも様々な事業を展開している企業ですが、どの事業でどれくらいの利益を上げているのか、有価証券報告書を読めば理解ができました。しかし、楽天グループはインターネットサービス、フィンテック、モバイルの3つのセグメントに集約しており、例えば、インターネットサービスのどの事業で利益が出ていて、どの事業で利益が出ていないのか、私には分かりませんでした。

　楽天グループの有価証券報告書は1月1日〜12月31日で1年を区切っているのですが(他の企業は4月1日〜3月31日で区切る場合が多い)、2022年の有価証券報告書によると、2022年の1年間でインターネットサービスは約78億円の利益、フィンテック(金融サービスを指しており、クレジットカードや銀行、証券、電子マネー、スマホ決済アプリなどの事業)は約98億円の利益、モバイルは約492億円の損失、合計で約315億円の損失を出しています。

◯イーグルス売却の可能性

　2022年の段階で楽天グループは約3700億円の赤字を抱えています。モバイル事業への進出、基地局の建設などインフラ整備に多額の投資をしたことで大幅に赤字が増え、近年、イーグルス売却の噂が流れることが増えました。現時点ではあくまで噂レベルですが、実際にその可能性について考えてみました。

　イーグルスは2018年〜2022年の5年間、最も赤字が多かった年で約7600万円の損失、最も黒字が多かった年で約7200万円の利益を出しており、楽天グループ全体で考えた場合、これは誤差の範囲内です。そのため、楽天グループの経営悪化を理由にイーグルスを売却する可能性は低いと思います。

　しかし、一方で球団運営には企業の知名度やイメージを上げる目的もあります。ここ数年のイーグルスを見ていると、楽天の球団運営がイメージアップに繋がっているかというと、疑問に感じる部分があります。FAで入団した選手と生え抜き選手の年俸格差、生え抜き選手を引退する直前で放出し、移籍した球団で引退、その後も移籍先の球団で指導者になるなど、生え抜き選手を大切にしないイメージができてしまい、「イーグルスは好きだが、楽天のことは好きになれない」という意見を耳にすることもあります。そのため、楽天が利益以外の部分で球団を運営することに意味を見出せなくなり、球団の売却を検討する可能性はあると思います。


◯出典
・楽天グループ株式会社コーポレートサイト　2023年11月7日
https://corp.rakuten.co.jp/

・楽天グループ株式会社コーポレートサイト 楽天の歴史　2023年11月7日
https://corp.rakuten.co.jp/about/history.html

・楽天グループ株式会社コーポレートサイト 有価証券報告書・四半期報告書　2023年11月7日
https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/asr.html

・官報決算データベース 株式会社楽天野球団　2023年11月7日
https://catr.jp/companies/63193/1906

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