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プロ野球の運営会社はどんな会社?♯ 11 株式会社西武ホールディングス

◯西武の歴史

 西武の歴史の始まりをどこから考えるかは人によって意見が分かれるのですが、西武ホールディングスの有価証券報告書では、1912年の武蔵野鉄道株式会社設立が最初の歴史として記されています。1915年には池袋ー飯能間の営業を開始、これが現在の西武池袋線になります。

 1920年、箱根土地株式会社(後のコクド)が設立、西武鉄道やプリンスホテルは西武の会社として有名ですが、コクドについては馴染みがない人もいると思います。しかし、かつて西武の事業の中心的な役割を担っていたのは、西武鉄道でもプリンスホテルでもなくコクドでした。コクドの主な事業は都市開発・リゾート地開発で、何もない山奥などに鉄道を敷いたり、ホテルを建設して、人の流れを作ることを事業にしていました。そのため、「西武鉄道やプリンスホテルはコクドの一部だった」という表現のほうが正しいと私は思っています。コクドが開発した事例として、軽井沢や箱根などの観光地、苗場や富良野のスキー場などがあります。

 かつての西武グループはコクド・西武鉄道・プリンスホテルなどの開発・鉄道事業を中心とするグループと、西武百貨店やファミリーマート、無印良品などの流通事業を中心とするグループに分かれており、西武グループの中で2つのグループが存在してしました。そのため、開発・鉄道事業のグループから誕生した西武ホールディングスの有価証券報告書には流通事業の歴史に関する記載はされていません。

◯西武ホールディングス設立までの流れ

 西武ホールディングスは2006年に設立されましたが、この背景にあったのが西武鉄道の総会屋利益供与事件や、コクドの有価証券報告書の虚偽記載により、かつてライオンズのオーナーでもあった堤義明氏が証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載とインサイダー取引)によって逮捕されたことなど、西武グループ内の事件です。

 実質、西武グループの中心的な役割を担っていたコクドですが、コクドは非上場企業で財務状況を報告する義務がありませんでした。これが原因の1つとなり、問題が一気に表面化、変革が迫られるようになりました(もちろん非上場企業が悪いわけではなく、当時の西武グループの企業体質に問題がありました)。結果的にコクドはプリンスホテルに吸収合併され、西武ホールディングスが西武グループ各社の持株会社になるという現在にかたちに再編されました。

 西武ホールディングス設立については、それ以前の西武グループの歴史も含めて、別の機会に詳しく取り上げます。

◯西武ホールディングスの現在の事業

 有価証券報告書によると、西武ホールディングスの事業は大きく4つに分けられており、以下の通りになっています。

①都市交通・沿線事業
 西武の代名詞である西武鉄道がここに含まれます。他には西武バスや西武ハイヤーが都市交通・沿線事業に分類されています。

②ホテル・レジャー事業
 西武鉄道と同じく西武の代名詞であるプリンスホテルを運営する西武・プリンスホテルズワールドワイドがここに含まれます。ホテル以外にも横浜・八景島シーパラダイスなどを運営する株式会社横浜八景島も西武ホールディングスの企業です。西武園ゆうえんちを現在運営しているのも横浜八景島です。

③不動産事業
 オフィスビル、賃貸マンション、西武鉄道駅構内や駅近の店舗運営がここに含まれます。その代表例として、東京ガーデンテラス紀尾井町、ダイヤゲート池袋、グランエミオ所沢などがあります。

④その他事業
 埼玉西武ライオンズと本拠地ベルーナドーム、イベント会場でお馴染みの横浜アリーナの運営などがその他事業に含まれます。伊豆箱根鉄道と近江鉄道は鉄道に関する事業ですが、西武ホールディングスではその他事業に分類されています。

◯結局、西武ホールディングスはどの事業で利益を出しているのか

 有価証券報告書によると、西武ホールディングスは2023年3月期、つまり2022年4月1日からの1年間で約567億円の純利益を上げています。セグメント別で見ると、都市交通・沿線事業で約22億円、ホテル、レジャー事業で約49億円、不動産事業で126億円、その他事業で5.9億円のセグメント利益を上げています。

◯西武ホールディングスが現在、力を入れている取り組み

 最後に西武ホールディングスが現在、力を入れている取り組みを紹介します。西武ホールディングスは『でかける人を、ほほえむ人へ。』をスローガンにしており、みんながどこかへ出掛けたくなる場所、ワクワクする場所をつくることに力を入れています。

 2020年に所沢駅東口駅ビル計画がグランエミオ所沢の開業で完了、中央改札と新設された南改札を繋ぐ「セントラルプラザ」、開放感溢れる屋上庭園「とこにわ」、おむつ替えコーナーや授乳室、パウダールームなどを備えた、待合スペース「とことこひろば」の設置などで今まで以上に便利で過ごしやすい駅に生まれ変わりました。

 2021年にライオンズ本拠地とドーム周辺エリアの大改修、西武園ゆうえんちのリニューアルを実施。西武園ゆうえんちは老朽化が進んだ古びた遊園地でしたが、昭和レトロ溢れるノスタルジックなテーマパークに生まれ変わらせ、チケット売上がリニューアル前の13倍に伸びたという報道もあります。

 現在進行中のプロジェクトとしては所沢駅西口開発計画の一環で2024年秋に完成予定の大型商業施設の建設、所沢駅と商業施設はデッキで結び、利便性を確保、他にパブリックビューイングなどのイベントが開催できるエリアやフードコートの新設など、所沢駅西口が大きく生まれ変わる予定になっています。

 今まで私は何度も所沢へ足を運んだことがあるのですが、その目的はベルーナドームでの野球観戦で、所沢の街をゆっくり散策したことはほとんどありませんでした。しかし、西武ホールディングスの取り組みを知ることで所沢の街にも興味が湧き、足を運びたいと思うようになりました。遠方の野球ファンの皆さまもベルーナドームへ足を運ぶ際はぜひ西武沿線を散策してみてください。


◯出典
・西武ホールディングス 2023年11月13日
https://www.seibuholdings.co.jp/

・西武ホールディングス 有価証券報告書・四半期報告書 2023年11月13日
https://www.seibuholdings.co.jp/ir/ir_material/financial_report/

・西武鉄道 所沢駅東口駅ビル計画 2023年11月13日
https://www.seiburailway.jp/safety/stationrenewal/tokorozawa/

・So!Da SAITAMA 売上13倍!昭和レトロさが魅力「西武園ゆうえんち」大盛況の理由 2023年11月13日
http://soudasaitama.com/sightseeing/37791.html

・西武鉄道 「所沢駅西口開発計画」の事業内容について 2023年11月13日
https://www.seiburailway.jp/file.jsp?id=13233


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