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あるのか?ないのか?行動力/コピーライター、「お菓子屋さん」になる。#4

ライターの炭田(すみだ)です。
シフォンケーキづくりにハマり、期間限定で「自分のお店」をオープンすることにしました。
このnoteでは、開業にまつわるアレソレを発信中です。

今回のテーマは「行動力」について!


1日だけ「お試し営業」をした翌週、シフォンケーキ教室の5回目のレッスンがありました。

教室がはじまる前に、同じクラスの方に「食品表示シール(スーパーのお惣菜とかに貼ってあるアレ)を作るプリンターが15,900円しまして。売上の八割が吹っ飛んだんですよ〜」と開店準備について語っていたら、こんな質問をされました。

クラスメイトAさん
「どうして炭田さんは、お店をやろうと思ったんですか?
 なぜ行動できたんでしょうか?」

1回目のレッスンからご一緒しているので、同じクラスの方は全員、私のシフォンケーキづくり歴が浅いことをご存知です。
お菓子づくりは趣味だけれどシフォンケーキには縁がなく、生まれてはじめて焼いたのが今年の1月8日。4月のオープン日時点での私のキャリアは109日でした。そんな人が、どうしてお店を開いたのか。

この頃はよく、知人友人にお店をやることを伝えては「行動力えっぐ!」と言われていたので、どうやら私は行動力がある方の人間っぽいな~ウフフと思っていました。
聞けば、質問してくださった方は、いつか自分でもお店を開きたいと考えているそう。そこで私は、こう答えたんです。

炭田(アホ)
「無鉄砲だから行動できるんですかね?
 私の爪の垢、煎じて飲みます?ナンテネ(*´∀`)」

文字にすると恥1000%……。きっとお店を一日とはいえ営業して、テンションが上がっていたんです。なんて愚か。どうかお許しください……。

そして、この恥回答をした時からずっと「行動力」とは何なのか?を考えています。


①まず、私に行動力はあるのか。

営業を終えたばかりの時は、自分のことを「行動力、あるぞー!」と信じていました。だってみんな揃いも揃って「行動力えぐw」「炭田やばw」って言うから。(私のチャームポイントは素直さです)

でも改めて人生を振り返ってみたら、行動力があると評されたのは、つい最近のような気もします。自分のLINEのトーク履歴を検索してみたら、行動力について褒められはじめたのは、2023年4月中旬からでした。行動力がある者として、新人すぎる。

***

話はちょっと変わって、私は普段ライターとして人にお話を聞いてインタビュー記事を書いたり、商品の魅力を伝える広告コピーを書いています。その傍ら、お菓子づくりが好きで「菓子専門のシェアキッチン」の運営にも携わる、二足の草鞋生活を送っています。
ですが、はじめてお会いする方に「ご職業は?」と聞かれたら、元気いっぱい「ライターです!」と答えています。
(そう……たとえ諸般の事情により「今月の原稿料の振り込み、5万円なんだが!!?」と思ったとしても、私の人生の真ん中は書くことなのです……)

そんなわけで、私は社会に対して「ライター」を名乗っています。
そんな中で「お菓子屋さんやるんだ♡」と言うと、よく言われる言葉こそが「行動力えっぐ!」なのです。

***

ということは、私が特別に行動力がある“なんかすごい人”というわけではなく「本業がライターの人が、畑違いのお菓子屋さんに手を出す=行動力えぐい」なのでは?
ヤンキーが、雨に濡れた猫に傘を貸す=普段はオラついてるのに実は優しい♡のと同じ?

想定外のところに向かう道筋の読めなさ」が、行動力に見えるのかも、と。行動力があるように見えるかどうかの判断基準、意外と曖昧……?

もちろん世の中には、生粋の“行動力えぐ人間”もいると思います。ホリエモンさんとか……?稲盛和夫さんとか……?マーク・ザッカーバーグさんとか……?
が、私のように意図しないギャップが発生したことにより、なんか行動力ありげに見えるだけピープルもいると思うんです。

自信を持って言うことじゃないけど、少なくとも私は、行動力があるからお店をやれたわけではない!という自己分析です。

こんな本を読むくらいには、めんどくさがり。
しおりが8ページ目に挟んであった。
前書きだけで満足して、読んでない。

②行動力があるとしたら、それは何故か。

とはいえ!なんだかんだ言っても!産まれながらの行動力ありありピープルではない私ですが、実際に「お店を開く」という行動を実行してはいるわけです。

やはり選ばれし者……

なんてこたぁない。

私はシェアキッチンの運営に携わっていることもあり、お家でひとりでお菓子づくりをしている方の100倍くらい「お菓子やさん」が身近にいます。うそ、30倍くらいかも。
最近お話した、製菓の専門学校を卒業した現役パティシエさん(20代)によると「今でもお菓子の仕事をしてるのは、クラスの半分以下」だそう。となると、私はなかなかの人数のお菓子のプロに囲まれて生きていることになります。

そんなわけで日々、プロたちが販売する様を間近で見ているので、自分のお菓子屋さんをはじめる前からある程度「この辺で困りそうだな」「これは後回しにすると詰むな」というポイントの目星がついていたのです。

そのひとつが、お菓子のラッピングです。「ラッピング」と聞くと、リボンやシール、キレイな包みを用いてどんなふうに自分のお菓子を演出するか、を想像するかもしれません。
が、それ以上に大切なのが「食品衛生」です。自分の販売したもので、お客様がお腹を壊したり、異物混入や食中毒が起きたら……考えるだけで恐怖!

***

ではどうやって「食品衛生」に基づいて包むかというと、たとえば一般的な焼き菓子なら、こんな感じ。
(私もまだまだ勉強中なので、異論反論オブジェクションあったら、是非教えてください)

焼きあがったお菓子は決して素手で触らず、ケーキクーラーに乗せてしっかりと冷まし、食品用のアルコールを用意して、食品用の手袋をつけて、チリや埃が入らないよう細心の注意を払いながら、食品用の包みにIN。必要に応じて、脱酸素剤(*1)も投入して、専用のシーラーで封をして、やっとこさ一個完成。
もちろん、包んでいる間に冷蔵庫の取っ手を触ったり、ブタクサのせいで6月になってるというのに鼻がムズムズしてうっかり掻いてしまったら、手袋は即!交換です。
そして、お待ちかね。あらかじめ用意しておいた食品表示シール(*2)を貼ってはじめて、お客様に販売可能な状態に。
この一連の流れを終えてようやっと、美しい見た目にするためにリボンをかけたりシールを貼ったりの「ラッピング」になるのです。信じられないぐらいやる事が多い……ジーザス。


*1:脱酸素剤
袋の中の酸素を吸収して、お菓子の劣化を防ぐ製品。お菓子の大きさによって使用する脱酸素剤が異なるため、お菓子ごとに都度の計算が必要デス。なんてこったい。
計算式/(お菓子の縦×横×高さーお菓子の重量)×0.21=◎◎
この◎◎の数字に近い脱酸素剤を選びます。天下のcottaさんのこのページが詳しいです。メーカーの公式サイトは、さらに詳しい!
ちなみに、脱酸素剤はあらゆるお菓子に入れるのか?というと、これまた違って。たとえばシフォンケーキのような「そんなに日を置かずに食べてほしいもの」は、あえて入れなかったりもします(通販などで遠くに送る場合はまた別)。
鯛焼きみたいな、その場で食べるものには入ってないように「お客様にどう食べてほしいか」を考えて入れるか入れないか、決める必要があります。鯛焼きは焼き立てを食べたいよね〜!


*2:食品表示シール
食品表示法という法律があり、販売されるすべての食品に表示が義務付けられています。たとえば原産地に虚偽の記載があると、2年以下の懲役又は 200万円以下の罰金です……!
シールには「使用している材料を重い順に表記」して、賞味期限を正しく記載(賞味期限を調べてくれる機関もあります)するのがマスト。さらに文字のサイズにも規定があり、ちっちゃくて読めないのはダメです。
ちなみに私は自宅にプリンターがないため、専用のラベルプリンターを購入(15,900円の出費)して、叩き台はChatGPTで作りました。
……と、頑張って説明してみましたが、そもそもが難しい内容なので、プロによる講座を受講するのもオススメです。私は、TOKYO創業ステーションの食品系の講座を受けました。資料は、これとか、これとか、こんなのとかも詳しいです。
ネットの情報は古いこともあるので、迷ったら最寄りの保健所にご相談を。

こんなふうに、自分では販売の経験はなくとも、趣味でお菓子を作っていては”縁のない工程”が「何やら多岐に渡りあるらしい」ことは、予め知っていました。

なので「これはあの人が詳しそうだから、相談してみよう!」とか「とりあえず何種類かシフォンケーキを包む袋を買ってみよう!」と思えて、結果、フットワーク軽く行動に移せたのだと思います。(出店を決める→オープンまで二週間)

つまり、私にあったのは行動力でも崇高なマインドでもなく、事前の知識。
その差が、実際に飛び出すか否かの「行動力」の分かれ目なのかな、と感じました。


というわけで。お店を開いてみたけれど、残念ながら私の行動力がすごいわけではありませんでした(笑)。

***

最後にひとつ。
去年インタビューしたパティシエさんに、ずっとお菓子屋さんで働いていたからパソコンを触ったことがなくて、食品表示シールをぜんぶ手書きで作っていた、という猛者がいました(腱鞘炎になりかけたらしい)。

一切れずつに貼ってある白いシールを、ぜんぶ手書きするなんて……!


この方は、今ではExcelとWordを華麗に使いこなし、プリンターで食品表示シールを印刷しながら、お菓子屋さんとして活躍されています。
私はこのお菓子屋さんのシナモンクッキーのファンなので、この衝撃エピソードをお聞きして「手書きが大変だからってお店をやめないでくれて、ありがとうございます!」と、心の底から思いました。

販売って「作る」以外の作業も多くて、超大変です。
だけど知識を分け合えば、きっと一緒にサバイブしてゆけるはず。

そう信じて、これからも発信していきます。

販売当日、朝5時起きでシフォンケーキをカットする図。オープンは11時。


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