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【取材後記】少子化でも魅力があれば子どもは集まる

「2050年までに消滅する可能性がある自治体は744もある(※)」と発表されました。(※朝日新聞デジタル『「消滅可能性自治体」マップと一覧 ~2050年の日本の姿』

私の住んでいる滋賀県北部地方も当然含まれている……と思いきや、意外や意外。含まれていませんでした。逆にびっくり。2050年と言わず、2030年にでも消滅しそうな自治体なので、感覚的に調査方法を疑ってしまいます。

過疎化が進んでいることは、朝食のおかずが常に過疎化していることと同じくらい普通のことです。そして、たまに納豆を買い忘れるため、さらに朝食の過疎化が加速することも受け入れなければなりません。

したがって、自治体が消滅すると言われても疑う余地はなく、実に普通のことなのです。スーパーで買い物をしていて、「トマト、人参、納豆、あっ消滅自治体……忘れるとこやったわ」というくらい普通の感覚。

消滅しかけの自治体は個人への負担が大きすぎるため、
「なんなら、今すぐにでも消滅してくれ」
と思っているくらいです。


とくに感じるのは少子化。地域の子どもの数が、我々の子ども時代の半分以下になっています。全国的に見ても子どもの数が減っていることは確かですが、ピーク時の半分というわけではないようです。

出典:総務省統計局

一方で、田舎ではGT-Rくらいの急加速中。Gを肌で感じます。いかに過疎化が進んでいるか。というか、元々の子どもが多すぎたのかもしれません。

私は第二次ベビーブーム生まれなので、教室は常に45人。パンパンです。たまに教室からあふれ出し、廊下で授業を受けることもありました。水の入ったバケツを持たされて……

まるで、倒しても倒しても出てくるスライムのように、先生にはよくビンタされました。ビンタをされてもされてもスライムは減らなかった。そんな不思議な時代でした。

それなのに、今や10人未満の学年もあるとか。半分どころではありません。4分の1です。スライムに希少価値を見出す時代になってきました。ビンタで統制を取ろうなんて思うのは大間違いです。

そんなことをすれば、新聞沙汰になりスライムの圧勝は間違いないでしょう。


スポーツの団体でチームが組めないと聞くようになって久しいですが、無理もありません。そもそも、子どもが居ないのですから。そう、そもそも論なのです。

そもそも‐ろん【▽抑論】
物事の始まりや、問題の起きた理由などに立ち戻って論じること。また、そのような論調。

goo辞書より

そんな、そもそも論をひっくり返すなどというのは無理な話……

だと思っていました。
あの人に会うまでは。


JAZZシンガー木原鮎子さん

「えっ?10年も前のことを覚えていてくださってたのですか?」

驚かれたことに逆に驚きました。こんな田舎の小さなホールでプロの生歌を聴いた経験、忘れるわけがありません。

JAZZシンガーの木原鮎子さんは、約10年前に開催された娘のピアノの発表会でゲストとして参加されていました。木原さんが唄ったのは、JAZZではなく子ども向けの楽曲。のびやかな歌声に感動したことを今でもよく覚えています。

現在、木原さんは滋賀県長浜市の中でも過疎化が進みに進んでいる、過疎化最先端の余呉町に住んでいます。

「えっ?余呉にこんな人がいるの?」
雷が近所の家に落ちてテレビが壊れたときのような衝撃を受けました。

自然豊かな余呉町は、鏡湖と呼ばれる美しい湖「余呉湖」がある地域。冬はもちろんウィンタースポーツが楽しめる豪雪地帯です。唯一の国道は、冬になると福井県との県境付近が通行止めになります。国道なのに……

2年前は夏期も通行止めになっていました。落石のためだそうです。福井県に用事があった私は、遠回りして行くことに。国道なのに……

そんな余呉には「余呉文化ホール」という、立派なホールがあります。

今は使われていない「余呉文化ホール」

昨年まで、木原さんは余呉文化ホールで大きな催しを開催していたそうです。また、日頃のレッスンも余呉文化ホールの一室で行っていたとのこと。使い勝手がよく、評判もよいホールでした。

しかし、今はもう利用できません。

過疎化……

それが大きな理由であることは容易に想像できます。「来月から利用できません」と、突然通達が届いたそうです。

そんな中、木原さんが主宰する『うたごえキッズ』は50名近くの子どもたちが参加しているとのこと。

少子化って、ナニ?

過疎化って、ナニ?

野球チームの9人、サッカーチームの11人が集められないといわれる中、50人もの子どもたちが参加しているのは驚きです。

木原さんが指導するのは、中学生以下が参加する『うたごえキッズ』。ほかにも、ママさんコーラスグループの『ココオト』、平均年齢75歳の『楓グループ』もあります。

木原さんは千葉県生まれ、新潟県育ち。東北地方の高校に通い、卒業後はJAZZシンガーとして関西を中心に活躍されていました。

じつは木原さん、田舎が大嫌いで、「とにかく都会での生活に憧れた」と言います。そんな田舎嫌いの木原さんは、なぜか田舎暮らしをしています。

この記事を見た方から、
「昔は田舎嫌いだったんですねー」
と多くのメールが届くそうです。

それに対して、木原さんは以下のようにFacebookで回答されていました。

田舎暮らしが嫌になったのは都会に憧れを抱くようになった思春期の頃だけで、小さい頃は自然の中での暮らしを楽しんでいたと思うし、今でもその時の記憶や経験に救われることがたくさんあります。私の音楽の原点もそこにあると思っているので、念のためお伝えしておきます

木原さんのFacebookより抜粋

そもそも、少子化なんですよ。でも、そんな中でも人気のコンテンツはあるわけで。いつかは余呉でフェスを開催していただきたいです。

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