魔動戦騎 救国のアルザード 設定資料「特殊機体解説」

イクスキャリヴル
 アルフレイン王国のエクター・ニムエ・メーリン一級技術騎士(当時)の主導により開発された世界初の「魔動騎士」。
 「超越騎兵」を意味する命名は騎手であるアルザード・エン・ラグナ上等騎士(当時)によるもの。
 従来の魔動機兵を凌駕し「単機で戦局を覆す機体」を目指して設計された。
 オーロラルドライブと名付けられた新型動力機関を搭載し、構造上不可能な場所を除きほぼ全てにミスリル素材を使用したコスト度外視の機体として完成した。
 稼動時にはエーテル排液を垂れ流しながら戦う姿が見られ、ほぼ消費されたとはいえ、排液に含まれる微量の魔素が光を乱反射するため、さながら虹やオーロラをマントのように背負い翻しながら戦っているかのような光景となるのが本機の特徴としても知られる。
 ミスリル素材を魔力回路以外にもふんだんに用いているため、操縦に必要な魔力適正の閾値がマイナスに振り切っており、並の人間では関節を動かすことは出来ても「力を込めること」がまともに出来ず、機体に魔力を吸われて消耗するだけになってしまっている。武装をしっかりと握り締めたり、対象に打撃を加えたりするためには莫大な魔力を要し、魔力適正が桁外れなアルザード以外にはまともな性能が発揮できない代物となっている。
 反面、十分な魔力を行き渡らせることができれば、内部フレームだけでなく装甲も魔力に反応するミスリル装甲となっているため、全身に大盾を凌ぐ防御性能を持たせることにも成功している。
 また、魔力に反応しやすいミスリル素材を多用したためか、騎手の感覚が機体と同化したかのようなシンクロ現象も起きている。ミスリル素材による周囲の魔力変化に敏感になるようで、その感覚の相互フィードバックにより、攻撃のための照準魔力投射を殺気のように察知したりするなどの感応効果が確認されている。
 しかし機体を稼働させた後は騎手の肉体感覚が登場中の状態からすぐに戻らず、稼働時間に応じた期間、肉体に痺れが残るなどの副作用も見られる。

 機体に標準装備されているのは腰部左右にマウントされたマナストリームソード二本のみで、それ以外は手持ちあるいはオプションとして装備する構成となっている。
 開発当初の武装としては、マナストリームライフルとミスリルシールドが準備されていたが、ライフルは初回使用時に大破している。
 また、初回稼働時にはまともな稼働試験も行われておらず、組み上げられたその場で実戦投入されたこともあり「完成した」とはとてもではないが言えない状態であったとされる。

◎オーロラルドライブ
 高濃度エーテルで満たされた炉心内中央に超高純度の大型プリズマ結晶をメインクリスタルとして据え、サブクリスタルとなる高純度プリズマ結晶を周囲に十五個配置し、騎手によって入力された魔力を一度分散させてそれぞれをサブクリスタルにて増幅、メインクリスタルへ集束させてさらに増幅し出力するという構造によって莫大な魔力出力を発揮する。
 構造の関係上、ドライブの各結晶にはかなりの負荷がかかるため、稼動の際には結晶の劣化を抑えるための高濃度エーテルが炉心内に常に満たされている状態にする必要があり、高濃度エーテルを供給するための機構も備わっている。機体背部には予備の高濃度エーテルを封入したカートリッジを複数搭載し、炉心内エーテル濃度が基準値以下になると魔素が消費されたエーテル廃液を排出し、同時にカートリッジから高濃度エーテルを補充する必要がある。
 高濃度エーテルを大量に消費してなお、各結晶の劣化を抑制しきることはできず、一度稼働させた後は各結晶の濁りを解消するためのメンテナンスが必須となる。
 この新型動力機関によって発生する規格外の出力により、マナストリーム武装が運用可能になっている。

◎シュライフナール
 ランドグライダーの発想を元に、エクターが開発した《イクスキャリヴル》の専用武装の一つ。
 前方へ円錐状にマナストリームを発生させるシールドランスと、プリズマドライブを一つ丸ごと搭載した推進装置を繋げたもので、後部の装置で斥力を発生させて加速や推進力を得る。
 発想としては機体を覆うほど大きくマナストリームシールドランスを展開してそのまま敵陣に突撃し進路上のものを根こそぎ貫いていくというもの。
 作中ではこの後部推進装置に滑空翼を付けて発射台から斜めに角度を付けて上空に射出し、超高速でアンジアの首都アジールに侵入した。
 ランス兼シールドとして展開するマナストリームにより空気抵抗や障害物を物ともせずに突撃でき、その攻撃性能、防御性能は極めて高い。
 アンジアの開発していたマナストリーム砲を真正面から受け止め、耐え切るほどの出力も発揮して見せたが、それによって大破同然の状態になった。

◎ギュラナイ
 シュライフナールを改修、強化した武装で、部隊での移動も兼ねた装備。
 前方にはシュライフナールと同様のマナストリームシールドランス機構を、後部には推進装置を搭載しているが、柄には随伴機用のグリップとローラーソールが内蔵されており、ギュラナイでの突撃移動に随行させることが可能になっている。
 マナストリーム生成機構の最適化も進み、出力を集中させることで巨大なマナストリームの柱を振り回すように武器とすることも可能となっている。
 《イクスキャリヴル》のものだけでなく、随伴機用の予備弾倉などを搭載する余裕なども持たされている。

イクスキャリヴル・アルヴァロン
 魔動要塞との決戦時の状態で、一応の完成形と言える状態。
 アルフレイン王国の古い言葉で、アルヴァとは始まりや終わり、頂点、到達点を指し、ヴァロンとは上に立つ者、辿り着いた者を指す。開発者であるエクターにより、完成に至った、と認められた状態と言える。
 銀と白を中心に、素材の色ほぼそのままだった機体には金と青の縁取り装飾が施され、胸部、肩、下腕、膝下の装甲も増量。
 バックパックには予備高濃度エーテルカートリッジも搭載数が増加し、根本から再設計された大口径ライフル型射撃武装のストリームランチャー、マナストリーム発生器を内蔵した中盾のイクスシールド、高純度ミスリルを積層した刃を惜しげもなく使用した大剣イクスバスターソードを懸架。
 腰裏には小規模マナストリーム爆発を起こすストリームグレネードを四つ、ミスリル刃製のダガーナイフも二つ搭載。
 腰部左右には出力や機構を見直して調整したマナストリームソードも備え付けられている。
 《イクスキャリヴル》の莫大な魔力出力によって、イクスバスターソード、ミスリルダガーナイフの切断力や剛性は凄まじいものになっており、マナストリーム武装ではないそれらを主軸に立ち回ることで稼働時間も伸びている。
 名実ともに開発時点で最強の兵器ではあるが、難点はその運用コストも莫大になることと、これを扱える人間がアルザードただ一人であることだろう。

イクサシリーズ
 《イクスキャリヴル》の随伴機として設計された改良型の《アルフ・カイン》。

 《イクサ・エウェ》は最も原型に近い外見をしており、頭部にセンサーアンテナ、背部にレーダーパックを装備しているのが特徴。《イクスキャリヴル》の察知した魔力反応を受信して視覚化しそれを随行する他の《イクサ》シリーズのスクリーンに共有表示させる機能を持つ他、地形や魔動機兵反応を把握するための魔術ソナーを発するセンサーグレネードを複数と予備弾薬、中盾と一体化した突撃銃を二丁、腰の左右にショートソードタイプのアサルトソードを一つずつ搭載しており、継戦能力と支援性能に長けたバランス型の機体になっている。
 騎手はギルバート・ラナ・パルシバル。

 《イクサ・レェト》も原型の《アルフ・カイン》の面影が残っているが、頭部は射撃戦に特化したゴーグル状の高精度センサータイプになっている。武装は銃身折り畳み式の射程可変型突撃狙撃銃が二丁、トリガーガードにダガーナイフを一体化させたリボルバータイプの拳銃を腰の左右に一つずつ、狙撃時の遮蔽物や安定させるための支えにも利用できる展開式支柱付きの大盾を背負う。可変型突撃狙撃銃は銃身を折り畳んでいる時は連射の効く突撃銃、銃身を展開し伸ばすことでバレル内部の魔術回路が延長されて狙撃銃になる。
 騎手はサフィール・エス・パルシバル。

 《イクサ・リィト》はほとんど面影が残っておらず、機体前面と左右の装甲は小盾をいくつも貼り付けたかのようになっており、関節の隙間も装甲で隠れるように設計し直されている。背部は逆にフレームが剥き出しになっている部分もあるほど、装甲のバランスが偏っており、正面から殴り合うことを重視した機体になっている。両腕には盾と兼用できるシールドブレードが備えられ、銃身の短い突撃銃を持ち、装甲の少ない背面を守るようにアサルトソードを左右で三本ずつ合計六本懸架し、ハンドグレードも左右で三つずつの計六つ搭載している。
 騎手はグリフレット・デイズアイ。

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