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「笑顔でさようなら」第3回小説オンラインイベント

4月も小説オンラインイベントを開催しました!今回は、私入れて2人とマンツーマン?でのイベントとなったのですが!

「笑顔でさようなら」というテーマをもとに、今回も30分での即興小説を書き合いました!


元々、恋愛小説を書くのが大好きだったので、即興小説を書くとやはり恋愛よりのものになってしまう私です。
そんな私が、今回企画で書いた小説を発表します。

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あの人と出会った時、私は生まれてはじめて嬉し涙というものを流した。
嬉し涙という表現があっているのかどうかはわからない。

なぜなら、この気持ちを的確に表現できる術を持ち合わせていないから。
ただ、間違いないのは、あの人の顔を見た途端に涙が溢れて止まらなかったという事実。

あの人は、驚いたような困ったような笑顔で優しく私を見つめていた。

「本当、君との出会いはこれから先、どれだけ時が経っても忘れられそうにないよ」

「それ、何回も聞いたけど。そんなに衝撃的なこと?」

「俺にとってはね。これ以上ないくらい衝撃的な出会いだったよ」

あの人は、何度も私と出会った時のことを語ってくれた。
正直、自分でもよくわからない涙を流した出会いは、私にとっては恥ずかしい以外の何ものでもなかった。
だから、あの人が何度も語ってくれるのを聞くたびに「いじわる。馬鹿にしているんでしょう?」とすねていたほどだ。

あの人は、そんな私に対していつも「馬鹿にしたつもりはないんだけどな」と困った笑顔を見せるだけ。

あの人は、私がどんなことを言っても、どれだけ酷いことをしても、いつもただただ優しく笑ってくれていた。

幼かった私は、そんなあの人の優しさをまっすぐに受け止めることができなくて、天邪鬼のようにあの人を責め立てるばかり。

「子ども扱いしないでよ!」

お決まりのセリフを吐いては、あの人が頭を撫でてくれる手のぬくもりだけをひっそりと噛み締めていた。

あの頃の幼い自分。

こうなることを予想できていたならば、きっと私はあの人と出会った時から今までずっと、素直で優しく微笑みかけていられただろう。

そんなことを悔やんでも仕方ない。

あの人との別れは、もう明日に近づいている。

ずっと一緒にいられるんだと、ずっと隣にいるんだと思っていたのに。簡単には会えないところまで行ってしまう。

考えれば考えるほど、思い返せば思い返すほど、涙が溢れて止まらない。

だけど、私はもう決めた。

明日は、絶対に泣かないと。

意地を張っているわけじゃない、素直になれないわけでもない。

これは、あの人に出会った時の衝撃を忘れさせないため。

涙を流して出会ったから、さようならはとびっきりの笑顔で。

「またね。これ以上は何も言わないよ。だって、また会えるって信じているから」

「君との出会いはこれから先、どれだけ時が経っても忘れないよ。またね」

あの人は、最後まで優しい笑顔で去っていった。

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即興小説のいいところは、前後を読者が自分で自由に想像できるところだと思います。この作品読んでも、二人の関係性、なぜ別れることになったのか?あの人はどこに行くのかなど、色々自由に考えられますよね!

そこが、即興小説の面白いところ。

毎月開催しているオンラインイベントでは、テーマにもとづいて即興小説をその場で書きあう企画を行っています。同じテーマなのに、出来上がる作品はまったく違うというのが面白いところ!

そして、何よりもテーマについて即興で考えるのが楽しいところです。
もう一人の参加者の作品も、後日あげますね!


ちなみに、第一回、第二回の作品についてはこちらで確認できます。

第一回

第二回


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