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2019年2月の記事一覧
【小説】美しい孔雀 9
王子は、家の戸を叩いた。
すると、中から、あの若い娘──マーシーが姿を見せた。
「ど、どなたですか?」
青紫のワンピースにエプロンをつけ、靴を履いたその姿には、あの時の貧苦の影は、少しも見られなかった。
「私はあの日、あなたに羽を渡した孔雀です。神様が、私を王子にして下さり、新しい人生を歩むようにおっしゃったので、そのお礼とごあいさつをしに参りました」
「まぁ、何てことでしょう!!!!
【小説】美しい孔雀 8
孔雀が消え入りそうな声でそう言った、その時だった。
突然、老人の姿が光り輝いた。
老人は孔雀を抱きかかえて、すっくと立ち上がったと思うと、更にその輝きを増した。
辺りが昼のように明るくなった中、そこに立っていたのは、白い上着をまとった、ほかでもない神その方だった。
「美しい孔雀よ」
「美しい…?」
「見た目ではない。お前の心が、限りなく美しいのだ。
自分の身を犠牲にしてまで人々を救っ
【小説】美しい孔雀 7
そんなある日、孔雀は、あの懐かしい呼び名を聞いた。
「テンチャ!」
「ドーヴ! どうしたの?」
「テンチャ…。噂は、聞いていたけど、まさか、まさか、こんなことになっていたなんて…」
ドーヴは、孔雀の変わり果てた姿を見て、大粒の涙をこぼした。
それからドーヴは、首の回りがびしょ濡れになるまで泣き続けた。
しばらくして、ドーヴはようやく、伝えたかったことを口にすることができた。
「お城の
【小説】美しい孔雀 6
しかし、楽しい時はそう長くは続かなかった。
あれほどたくさんあった飾り羽が、とうとう無くなってしまったのである。
最後の飾り羽を渡し、家から出てきた孔雀に、孔雀と遊んだことのある少女が通りかかった。
「カミーラ! 元気にしてた?」
「うん! それよりあのね、見て見て!」
そう言ってカミーラはリュックサックから、一冊の本を取り出した。
それは、英語の教科書だった。
「学校、行けるように
【小説】美しい孔雀 5
その日から、孔雀は、来る日も来る日も自分の羽を配り続けた。
そして夜になると、地面の上で、できるだけ汚れてないところを探して体を休めた。
夏は涼しく、冬は暖かく、完璧に整備された環境の中で、ふわふわの専用ベッドに寝ていた孔雀にとって、それは過酷なものだった。
眠る孔雀の体を、寒さが襲い、風が吹き付け、雨が穿った。
ネズミの声で目を覚ました時もあった──
──いや、ネズミならまだよい方であ