きまぐれロボット

星新一という人物は不思議なもので、なんだかつい最近まで生きていたような気がしてならない。
僕が生まれてすぐぐらいに亡くなっているのだが、手塚治虫先生と同じ時代を生きていた人と言われると脳が混乱するし、同じく井上ひさし先生もと言われるとやっぱり最近まで生きていたような気がしてくる。
それはきっと作品数が多く、小中と長く読み続けたからなのだろうと勝手に推察しているが、僕以上の読書家の姉貴も同じことを言っていた。
貴方はどうだろうか。

さて、「きまぐれロボット」はショートショートであるワケだが、数ある星新一ショートショート作品のタイトルの中から「きまぐれロボット」を選んだことに意味はなくて、僕が「星新一」という名前を始めて知ったショートショート作品集が「きまぐれロボット」の題を冠していただけである。
小学校の図書室にてオススメ書籍に取り上げられていたのがキッカケだったと思う。

「きまぐれロボット」はお金持ちのバカンス休暇にロボットのお供をつけるが、そのロボットが時々暴れたりするものだから、博士に文句をつけたら「不完全だからこそアンタも怠けないでしょ」みたいなことを言われる、というオチだったと思う。
星新一ショートショート作品の多くは、「やられた」と思うほどのトンチが効いている作品は実は多くなくて、「あ!」という感覚がSMGのように雨霰とぶつけられるような形だ。
しかし、そのジャブ一つ一つが思いつきそうで思いつかない掌の返し方だし、それを過不足なくコンパクトに収めるのも容易ではない。
だからこそ、今も畏敬の年を覚えるのである。

因みに、星新一先生はショートショート以外も多くの作品が粒揃いであり、あくまでショートショートは星新一という人物の一側面でしかない。
SFの先見性に我々は魅せられてきたが、時代を先取りしたというべきか、時代が追いかけてきたのか……。

SFというものの面白さを幅広く教えてくれた作品ではあるが、実は僕が最も気に入っているのは「ショートショートの広場」という、星新一先生が審査員を務めるショートショートの受賞作品集だ。
星新一先生ではないショートショートの世界も面白いので、是非読んで欲しい。


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