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【小説】500文字しばり/美味くて不味い

ポスッ!

「うっ、お前…」

ドサッ。ふうこれで依頼達成。殺し屋の俺はサイレンサーを素早く外すと、慣れた手つきでカバンに仕舞う。

あとは”ターゲットこれ”片づけて…死体を処理し帰路に着く。

自宅に着いた俺は、テーブルに仕事道具を広げ、食後のデザートならぬ”仕事後のデザート”を食べる。殺しの後は腹が空く。たしかあれは半年前だったか。

スーパーでふと目に留まったバナナ。久しぶりに買って食ってみた。この味がこの価格で?年中手に入る?コスパの高さに感動した。あの日からずっとお気に入り。

ハンドガンのメンテナンスをしながらバナナを食べる。これが近頃のルーティン。ねっとりとした舌ざわり。甘い香りと味が広がる。

…美味かった。もう一本いくか?その時。

ダダダダッ!ダンダン!

突然の銃声と怒号。襲撃だ!今回のターゲットの仲間か?しかし、これは珍しい事ではない。返り討ちにしてやる。

軽い身のこなしでテーブルの上のハンドガンを掴むと、ソファの影に身を潜める。しばらくして銃声が止んだ。

バッ!と飛び出し銃口を刺客へと向ける。その時気付いた。手の平に伝わるやわらかい感触。脳裏に浮かぶ南国の生産者の顔。

不味い…これは…。

ポスッ!


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