絶対的決心の行方

偶然、素敵なレストランを見つけた。

まさかあんなところにあんなにお洒落な場所があったとは。

これまでどうして知らなかったのだろう。

これまでどうして誰も教えてくれなかったのだろう。

そうだ！

善は急げで、今晩早速行ってみよう。

心は決まり。

もう絶対そこに行く。

今日必ず行く。

何が何でもそこに行く。

もうそのレストランしか頭にない。

文句なしに決定。

絶対的決心。

　

　

　

さてそろそろ出かけよう。

フラフラと歩いて行く。

あの素敵なレストランにこれから行けるなんて

考えただけでワクワクする。

これからちょっと歩いたらすぐにそこに辿り着く。

私の小さな夢がまもなく実現する。

あと少しで必ずそこに行き着く。

昼間からそう決めていたのだから

私はもうじき迷わずにそこへ辿り着く。

絶対的決心。

　

　

そのままフラフラと歩いて行く。

信号で止まる。

ゆっくり深呼吸してみる。

新鮮な空気が体に入ってくる。

本当にお腹が減ってきた自分に気付く。

あのお洒落なレストランはすぐそこ。

　

　

もう一度深呼吸してみる。

あれ？？

なんだかいい匂いがする。

右の方から何だか香ばしいいい香りがする。

　

　

まっすぐ行けばお目当の素敵なレストランなのに

気づいたら私の足は勝手に右に曲がって歩いている。

そのいい匂いのする、ごく普通のカフェにたどり着く。

オシャレでも素敵でもなんでもないそのカフェに。

　

　

そしてさっきまでは思ってもいなかった料理を

美味しく食べている自分。

単に香ばしい匂いに誘われ

私の頭よりもお腹が反応してしまった。

　

　

あれ？

私のあの絶対的決心は一体どこへ？

　

　

あれ？

私のあの強い意志、

あの絶対的決心は一体どこへ消えてしまったのだろう。

　

　

頭より何より

本能が強い。

考えるより何より

本能は体を動かす。

　

　

どんな時もギリギリに

本能は私達を動かす。

だから頭で絶対って決めなくていいんだ。

心や体に任せよう。

自分で絶対って決めたはずでも

実現できないのだから

絶対なんていうものは本当はあり得ないのかもしれない。

　

　

だから自分の未来の行動は

その直前まで本当はわからない。

絶対やろうと心に決めていることも

実はコロッといきなり変わるかもしれない。

でもそれが実はあなたの本心。

変わっていいのだ。

むしろ変わった方が自然なのだ。

ふと思いついた時々に

欲したものを追いかけていい。

前もって何にも決めなくていい。

思いを貫くのは実は不自然なのかもしれない。

　

　

私にはもう

絶対的決心は要らない。