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法務、コピーライター養成講座を受ける。


この記事は Feedforce Group Advent Calendar 2021 の 15 日目の記事です。

昨日の記事はみちかさんの「人生を楽しくするマーケティングと出会った日」でした!
就活のときに思い描いていた職種ではないけれど、やりたいことに繋げられているという点で、今回の自分の記事と共通点があるかも!と思いました。



さて、地味に初noteなのですが、問わず語りが苦手なので、いろいろ考えたあげく自分で自分にインタビューすることにしました。

一部の人にしか話していないのですが、実は今年の上旬に宣伝会議のコピーライター養成講座というものを受講していました。法務なのにコピーライティングの勉強をしたことで得たものについてセルフインタビューしていこうと思います。

【インタビュイー経歴】
2017年新卒入社。経営企画チームへ配属後、総務法務担当として従事。
契約書全部見男。
好きな二郎のコールはヤサイアブラマシマシカラメニンニク。


迷走と挫折、講座から学んだことはコピーライターには向いていないということ


——さっそくですが、なぜ法務なのにコピーライター養成講座を受講したのでしょうか。

阿久澤 一言で言えば迷走ですね。管理部門で働いている以上は定期業務は避けて通れないものだと思うのですが、3年目になって定期業務が増えていき、答えのある仕事ばかりの毎日に少し飽きてしまっていました。「もっとクリエイティブな仕事がしたい!」と思っていた頃に大手町駅の連絡通路でコピーライター養成講座のポスターを見てちょっと気になりはじめました。

実のところコピーライターという職業には昔から興味があって、養成講座があることも知っていました。それなりに受講料もかかるので学生の頃は諦めていたのですが、社会人になって頑張れば払える額だし、もしかしたら天才的な才能が開花するかもしれないと思って申込みました。

——才能は開花しましたか?

阿久澤 全くでした。
講座の中で実際にコピーを書く課題がありまして、優秀者は金の鉛筆がもらえるのですが、毎回真剣に課題を提出していたにもかかわらず、鉛筆は一本ももらえませんでした。

私がこの講座から学んだことは2つあります。

一つは、自分は職業コピーライターには向いていないということ、もう一つは、自分は既にコピーライターだったのかもしれないということです。

——コピーライターかぶれみたいな表現ですね。気に食わないです。

阿久澤 講座の講師陣は現役で第一線で活躍している方々なので、シンプルに仕事術として学ぶことがたくさんありましたし、人生で観てきたCMやコピーが生まれた瞬間の裏話などはここでしか聞けない貴重な話だと思いました。でも、この講座を受講して一番良かったと思うことは、自分が渇望していた「クリエイティブな仕事」の正体に気づけたことだと思います。

クリエイティビティとは創造力ではなく「想像力」である


——ちょっと良いこと言いそうな雰囲気出してますね。一旦CMはさみますか?

阿久澤 はさまなくていいです。
世間的にはコピーライターって「うまいこと言う人」とか「おしゃれな文章を書く人」と思われているかもしれませんが、実はかなり論理的にコピーを作り上げているんですよね。その辺りの話は谷山雅計さんの『広告コピーってこう書くんだ!読本』を読んでいただいた方がわかりやすいと思いますのでここでは割愛します。


コピーを考える方法は講師ごとにやり方が異なるのですが、はじめに様々なターゲットの視点からその商品を見て、より多くの切り口を探すというところは多くの講師で共通していました。

例えば一口に「クルマ」といっても、お父さんにとっては子どもにアウトドアを体験させる道具で、おばあちゃんにとっては買ったものを運ぶための道具で、若者にとってはファッション性も兼ねていて、Youtuberにとっては防音性の髙いスタジオ、といった感じでターゲット次第で様々な訴求ができます。

課題が出される度に42歳の専業主婦になったり、78歳のおじいちゃんになったり、27歳のOLになったりしているうちに、クリエイティブって人の立場に立って考えることなんじゃないかと思いました。人はどんなに頑張っても他人の内面を完全に知ることはできないわけですが、これを分かろうとする努力こそがクリエイティブの源なのではないかと。

もう少し広げれば自分も含めて人間と向き合うということですね。コピーに限らず、クリエイティブ界の王道である絵画や音楽などの芸術も人間との向き合い続けることで生まれるものなのかも知れないと思いました。

——なるほど、割と普通のことを言っていますね。

阿久澤 そうです。社会人になってすぐの研修で「相手目線で考える」(営業ロープレでは顧客目線、記事を書くときは読者目線など)ということを教わったのですが、コピーを作る過程でやっていることは実質的にこれと全く同じだと気がつきました。

今まで当たり前だと思っていたことにハッとしたとき、人は成長するんですね。

——講座で学んだことを活かして実際にコピーを書いてみたことはあるのでしょうか?

阿久澤 コピーと言えるかわかりませんが、人員募集の文章を工夫してうまくいったことはあります。

弊社では忘年会などの社内イベントを通称「イベントチーム」という有志の社員で運営しているのですが、ここ数年イベントチームの人数が減少傾向にありました。

メンバー増員のために、定期的に「イベントチームではメンバーを募集中しています!」というアナウンスをして立候補を募っていたのですが、3年間このメッセージ経由で自ら応募してくれた方はいませんでした。
そこで今年は募集のコピーをこのように変えてみました。

「あなたのアイデアでコロナ禍の社内イベントを盛り上げませんか?」

すると、このメッセージ経由で3名が立候補してくれました。
これは新卒向けに出した募集メッセージなのですが、新卒というターゲットの立場を想像して、イベントチームに入ると自分のアイデアで会社を盛り上げることができるというベネフィットを明確にしたことで3名の心を動かすことができたのではないかと思います。(入ってくれたみんなありがとう!)

相手の心に何かを残すことで次の仕事につなげる


——その他に講座から学んだことはありますか?

阿久澤 あるコピーライターさんの話ですが、その方はどんなに勝つことが難しいコンペでも必ず100個以上のコピー案を提出するそうです。そうすることで、たとえそのコンペに勝てなかったとしても、クライアントからは案をたくさん出せるコピーライターとして覚えてもらえるため、次のコンペでも声がかかるそうです。相手の心に何かを残すことができればチャンスを獲得し続けることができるという話です。相手の心を動かすことを生業としているコピーライターらしい戦略だなと思いました。

自分の仕事に当てはめてみてもできることはありそうだと思いました。結果が実を結ばなかったとしても、誰かの心に何かを残すことができれば、次も打席に立たせてもらえるかもしれないということです。

実際、日頃から雑務や自分の仕事ではないけど気になったことを積極的に巻き取っていたところ、それを評価していただけたのか分かりませんが、最近は様々なプロジェクトにアサインしていただく機会が増えました。こういう心掛けのような小さなことでも人の心を動かしているのですからクリエイティブな戦略なのかもしれません。

心掛け次第でクリエイティブな仕事はできる


——法務への向き合い方にはどのような変化がありましたか?

阿久澤 法務は現場で働いているわけではないので特に想像力が求められるのではないかと思います。契約書やサービスの利用規約を作成するときにはあらゆるケースを想定することが必要ですし、営業担当者とやりとりする際には使用する用語やどこまで砕いた説明をするかなど一つ一つオーダーメイドで考える必要があります。

これまでは現場との距離を想像力で補えていなかったことで、臨場感があまり持てていませんでしたが、文字の先にいる誰かのことを想像することで前よりも臨場感をもって働くことができるようになりました。

視点を少し変えただけですが、単調に繰り返すだけだと思っていた単純作業が一転してクリエイティブな仕事にかわりました。もはやクリエイティブにできない仕事なんてないのかもしれません。


おわりに

——この記事の良い締め方がわからないのですがどうすれば良いでしょうか?

阿久澤 前日の夜になって慌てて書いているからこういうことになるのだと思います。4つの見出しの頭文字を密かに「お・し・ま・い」にして、ここで回収してきれいに締めようと思いましたが、めちゃくちゃ違和感のある見出しになったのでボツにしました。

やっぱりここは広告コピー界隈に親指の爪くらいまで足を踏み入れた身として、好きなコピーをいくつか紹介して締めたいと思います。

1,000 songs in your pocket.

iPod のコピーです。当時のMP3プレイヤーはボタンで曲を選択する方式だったため、最後の方の曲を再生するためにはボタンを長時間長押しする必要がありました。しかしiPodにおいては「1,000曲をポケットに。」というコンセプトを見たApple社の開発者が「ポケットに入る→片手さっとで使える」と発想してクイックホイールが生まれたそうです。いいコピーは商品開発にも影響を与えるという話です。

本日、丑の日

「土用の丑の日」といえば日本では鰻を食べる風習がありますが、鰻の旬は秋から冬なんですよね。実はこれ、平賀源内が夏場の売上不振に苦しんでいた鰻屋に頼まれて作った日本最初のコピーなんだそうです。江戸時代は土用に「う」のつく食べ物(梅干しとか)を食べると夏バテしないという習わしがあり、それを利用したとか。言葉一つで現代まで続く習慣を作っちゃうなんて超すごくない?

元彼の目覚ましが、夫を叩き起こし続ける。

最後は第57回「宣伝会議賞」という一般公募の広告賞のグランプリ作品です。こちらパナソニックの世界一長持ちな乾電池「エボルタNEO」のコピーです。表現の面白さもさることながら、ちゃんと商品の魅力も伝えていてすごいです。

ということで、おしまいです。

明日のご担当はアナグラムの藤澤さんです。
「さんざん悩んでギリギリまで書けないの巻」とコメントされているので、まさに今格闘中なのでしょうか。楽しみにしています!

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