40歳自営業、痔瘻になる #4 術後の日々 |空も飛べるはず
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今回の入院は、前回の糖尿病教育入院と違い、背景と目的、そして入院そのものの手法が明確だったために、さほど郷愁の念に囚われることもなく、タオルケットを濡らしたのは寂しさの涙ではなく痛みを堪えて噛み締めた涎だった。
術後の日々はとかく安静、とはいえ歩行や簡単なストレッチなどで体勢が固まりきらないようにすることによって傷口の回復を促進させることが推奨されていた。
ウォシュレットを当てろ
この病院、すべての病室にトイレがついている。そしてそのトイレ内にはこんな張り紙がしてある。
治療のために、食事からの排便を積極的にしていこうとのこと。そりゃそうだウンコ我慢して生きていけるかってことと、ウンコ我慢したらウンコ固くなってお尻がヤバいからどんどん出せってことだろう。
調子のいいときには1日3回のウンコを出せるのだが、環境の変化によっては朝イチで終了のときもある。
術後翌朝、カテーテルも抜かれて息も絶え絶えで横たわっていると、これまた傷だらけの肛門が直腸への侵入者を訴えてきた。
「ウンコです」
ときどきこの肛門は騙されて、「屁です」と名乗るウンコを素通ししてしまう。今年も1回それをやり、ワイのウンコ漏らし連続年数はついに生後40年に到達した。どうでもいい話だが、ウンコを漏らすやつと漏らさないやつには年収との相関関係がある。
ただ、決して"ウンコを漏らすから年収が高い"のではなく、"年収が高いからウンコを漏らす"のだろう。括約筋を緊張から解放したら今日からハイキャリアになれるわけではない。
閑話休題。病室のトイレに駆け込み、少しずつ腹の力を緩める。直腸直下まで進行している便はこれで十分排出される。
固くないといいな、ボツボツしてないといいな。
だって表面だけじゃなくて内部もちょっと切ってるんでしょ?
今だけのトイレの神様に祈りつつ、ブリブリビッチとゴジラが誕生していく。ゴジラに悪気はない。
痛みは、無かった。そして残便感もなく、術後はじめてのウンコは快便に終わったのだ。一安心だ。そして右を向き、いつもの感覚でそれを押してから、それが堕ちた天使だったことを思い出す。
ウォシュレットボタンだ。
痔を患ってから、神々の使いの如く尻の汚れを洗い飛ばしてくれていた天使たち。ボタン押下とともに降りてくるバーの先端に空いた3つの穴。そこから噴出された聖水は旧約聖書創成記にある大洪水のごとく尻穴を洗浄
したらダメなのわかるだろ。
調整すべきは水勢。その多くはお尻ボタンの下にある。位置調整はボタンか、もしくはセルフだが勢いだけは弱められる。なんとか間に合い16連射。2回の移動で最低レベルへ。そんな要らなかったな。同時に尻の位置をずらす。
急激な体勢および体重移動で尻が少し痛む。だが仕方がない。
まずは着水成功。トリプル聖水ラインは尻肉に頼りなく当たり続けている。
これを尻穴に当てないことには始まらない。いや、終わらない、か。
次はこの火線を患部に当てる。まずはケツの稜線から徐々に下降させ、物語が収束する中心点を
アッー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
浮いたよ。ケツ浮いたよ。
もうダメだよこれ、直撃はダメだよ。
威力最弱でもロケットランチャーだよこれ。
対処策を考える。腰をだいぶ浮かし、前に出る。便座にはすでに体重どころかそも掛けていない。この状態で天変地異起こす震源地になる新天地すなわち割れ目の発生地点あたりに火線を設定し、滝行のごとく流れる水流を患部で受け止める。
十分な量を流したらいったんウォシュレットを止めて拭く。
これを2~3回繰り返すことでキレイに尻を拭けるのだ。
問題点は周囲に水が飛び散りやすくなることと、排便から尻洗浄にかかる一連の工程に非常に時間がかかる点だ。なぜ病室個々にトイレが備え付けられているのかがここで理解できた。1人あたりの占領時間が長いため、絶対数を増やす必要があったのだ。
伏線はここで回収された。
お前、あの時のジャムだな
今回の入院は1週間と事前告知されていたので、そろそろ退院を見据えた連絡事項とかがやってくる。
栄養士が来て、退院後の食生活について話をした。
とはいえ、糖尿病患者に対する食生活アドバイスなんて要は草食って脂取りすぎるなって話なので、まぁそりゃその数値改善できてるんなら大丈夫でしょってことで早々に終わった。
そして、医療機関でも推奨する低糖質の甘味ということでなんかサンプルをもらったんだが・・・
お前、どっかで見たことないか?
糖尿病患者に朝から食パン5枚食わせたときに申し訳程度についてたジャム!お前だったんか!
普段の生活ではほぼ清涼飲料水も摂取することがなくなり、間食も基本なし、土産物の菓子程度なら妻子のおこぼれをいただく程度になった現状で甘味に飢えているわけではないのだが、まぁこれはこれとして情報程度に受け取っておこう。
ウンコの話でだいぶ長くなってしまったので、カレーの話と見舞い品の話は後日にずらす。
本日も読んでくれたことに感謝するとともに、なんか昨日乗っけたらずいぶんと再生数が上がったので当面乗っけておくことにする。
ワイは青年経済人、クズもボンボンもグレイトフルもエリートもいっぱいいる、青年会議所(JC)のメンバーである。
どんな団体に所属していようが、人付き合いは、大事。