見出し画像

「新しい音楽なんかどうでもいい」を覆す新しさ

※「新しい音楽を聴かないなんてダメだ」という内容の記事では全くないです(むしろ逆)

退屈な時間をなるべく避けたい。例えば、自分の関与が掠るくらいしかないプロジェクトのオンラインミーティングの時間とかがそう。(内職すればいいでしょって話だけど、そもそも仕事する気がそんなない汗)そんな意味の薄い無駄な時間を過ごし続けるのは嫌だから、そんなとき私は頭の中でギターを弾いたり、映画を作ったり、自分にとってワクワクするお題を立ててたくさん妄想しているのだけど、そんな中最近アツイいのは、「今の精神のまま過去にタイムトリップしたら何をするか」というお題。

自分は95年生まれで、2008, 2009, 2010年で中学時代を、2011, 2012, 2013で高校時代を過ごした。仮に2011年の高校入学手前の春休みにトリップできたとしたら、まずは今では入手できないHealthのGet Color(2010)DaughtersのS/T(2010)とかのフィジカルを真っ先に確保するな、とか。そもそも確保できるのかな、とか。あとその頃映画は何が公開されているんだろう、家から一番近い映画館はまだ生き残っているんだっけ、お気に入りの服のブランドはその年から存在してるんだっけ、そうしたらどんなアイテムがあるんだ……とかとか。世の中には過去に戻ることが耐え難く苦痛の人もいるかもしれないけど、私に関して言えば(私に関して言えば)、私は戻れるなら過去に戻りたい!絶対に楽しいと思う!笑。そういう心理状態を保ちながら2000年代の好きな音楽を改めて聴き出したりすると、ノスタルジーの鮮度がブラッシュアップされるのか何かで、もうエモくてエモくてたまらない気持ちになる。。。思い出って昔であるほど、昔になるほど、「今はもうない」の哀しみがより強調されると思うのだけど、そしてその時間が大切なものであったともっと自覚できると思うのだけど、"懐かしい"の切なさと愛おしさが月日の経過によって今よりもっと激しくなってるなって、そのとき分かった。

過去の音楽がどんどん大好きになってるのに、そしてこれからさらに大好きさが巨大化するのが分かってるのに、新譜を聴く必要ある?ってすごく思う。(じゃあなんで新譜追ってんだよ→メドレーを作りたいから)それでもここ数年振り返ってみると、「月日が経つにつれてエモーショナル化する過去の音楽にも余裕で勝つ新譜」というのが結構目立って出てきている気がした。それらは、私の愛してやまない過去の音楽と全く同じ"過去の感覚"を持っていて、私と同じ過去に共感していて、それでも自分とは全く異なる過去を辿っていて、懐かしくエモくありながら固定観念と常識を打ち砕く新しさまで持っているような、そして初めて音楽を好きになった体験を再現する、そういうエモーショナルさだった。

「新しい音楽なんてどうでもいい」を覆す2020年代のアルバム、今の気分で私的6選(順不同)


1. Bad Tuner - "look at me but through me - EP"(2024)

なんといってもM1のcaught up。。。私が思う2000年代のエレポップの再現感(特にサウンド…!)が本当に半端ない、、、私の思う「2000sエレポップ」というのは、一発で簡潔に言うならLily Alienとか。あとはRöyksoppとかもそう。70s~80sのディスコみたいなカラフルさのイメージよりかはもっと単色に突き詰められるようにシンプルに洗練されてて、それでいてどこか抜け感のあるチープな印象もやっぱり持ってる感じ。90年代からネットがさらに普及して、ポップな音楽の流通がさらに盛んになり始めた直後の、私が「いかにも2000s…!」って感じるサウンド。Bad Tunerはそのセンスを2020sのハイパーポップ的な文脈の中で築いて、いまだかつて聞いたことのない独創性を持った形で蘇らせてる気がするのだけど、もーテンションがヤバい。。。笑。過去の音楽に負けない、過去以上の存在になり得る1曲。


2. Blvck Hippie - "If You Feel Alone At Parties"(2021)

"クリーントーン×ローファイ"のノスタルジー大爆発インディーロックのやつ。音楽が遠くで鳴るような距離感と、センチメンタルさに全振りみたいな尋常じゃない哀愁の曲調、それから"フィルムカメラ×青春"のジャケのイメージまで、序文で前述した「過去の音楽のエモーショナルさ」の性質を全く別物として異次元的に備えてる作品。正直この懐かしさが具体的にどこからくるのかが分からない、、、でも圧倒的に絶対的に物凄く切ない、、、笑。もしかしたら自分が無意識の内に感じ取っていた1回しか行ったことのないどこかの場所だったり、1度しか味わったことのない何かの経験だったりするのかもしれない。このアルバムはそうやってただひたすらにコンセプチュアルで、言い換えれば懐かしいもの、切ないものコアだけで構成した岩石のような作品。2010年代でいうところのSufjan StevensのCarrie & LowellとかYouth LagoonのThe Year of Hibernationとかも強大な懐古の作品だけど、Blvck Hippieの本作の場合は、幼少期と言うよりもっとロックにハマったときの、「あの頃は若かった…」的な実感のエモさがある笑。めちゃめちゃ好き。


3. Courting - "New Last Name"(2024)

私は中学時代をアジカンで過ごした人間で、アジカンの音楽に青春を捧げて、アジカンの楽曲中に自分の命まで保存した人間。Courtingの新譜が私のこと死ぬまでぶん殴ってボコボコにするみたいに感動させたのは、私が捧げたその人生と命をクソほど呼び戻したから。M3のThe Hillsの出だしの温度感とかとてもアジカン的だし、そもそもボーカルにゴッチっぽさちょっとあるし、サックスのアレンジとかもアジカンの面影に重なるところがある。そういう至る部分でアジカンやアジカン的に私を育てたの00s系J-Rockのイズムがあるのだけど、それをポストパンクで更新するというか、憧れもエモーショナルさも最強にプラスで装備して、音楽の多彩なストーリー性や展開も足して、青春ど直撃みたいなユースフルな爆発力も掛けて、私の人生の神髄みたいな過去の音楽の感覚を、破壊的な威力で実現するアルバム。ほんとにほんとに死ぬほどヤバい。M3のThe Hillsの"タメ"の部分で何度も喉が張り裂けるまで叫びたくなるし、最最最高にダンサブルなM5のEmily Gとか顔面がぐちゃぐちゃになるまで泣いて意識失うまで踊りそうになる。(青春ど直撃の曲想でダンサブルなのは冗談抜きで最高すぎて危ない。)この記事はこのアルバムを取り上げる目的がほぼ100%で書きました笑。最近2024年音楽の上半期ベスト?みたいなの早めに考えてるのだけど、マジで私はCourtingが1位。(あとはFrikoとかgglumとかMorgan Harper-Jonesが接戦してる)


4. Jadu Heart - "Derealised"(2023)

これは00年代というより2010年代の結晶の感じ。ジャケの雰囲気がCrystal CastlesとかGang Gang Danceのイメージにドストレートだと思うのだけど、実際音楽もマジでその時代。。。宅録のテイストがちょうど普及し始める頃というか、ドリームポップが本格的に世に定着し始めた頃というか、私が思う2010sのエッセンスのリメイクがとにかくエグい。。。そしてそれに2023年で出会うということが、ある意味脳内がバグるのだけど、そういう「超絶精度の高いリバイバルを2020年代で普通にやる」みたいな感じが本当に大好き(T_T)笑。このアルバムを鑑賞してるときだけ時間の流れが変わるというか、時間の流れが止まるというか。そこに「過去の感覚の新しい感覚」が確かにあって、これこそここの記事で言いたい、私にとって『「新しい音楽なんてどうでもいい」を覆す新しさ』だった。M3のBlameは心配になるレベルでメロディーのフックが化け物的に良い。。リリース当時の1月は出張で大阪にいたのだけど、寒い中これしか聴いてなかった。


5. Park National - "I'm Here and This Is Real - EP"(2022)

最近だとTHE GOA EXPRESSとか全力ユースフルバンドも出てきてるけど、それを大いに差し置くレベルで、ここ数年のロックでこれ以上考えられないくらい悶絶するほど、もーとにかく初々しい。。。。泣。私も彼と同じ音楽でロックファンに育ったんだと言いたくなるし、というかもしかしたら自分の知らないうちに、自分はPark Nationalの音楽で育ってきたのかもしれないと思うほど……音楽はロックというよりEmoめで、だけど音圧はどこまでもスッキリしていて、春や夏特有のキラキラ輝きまくる空気と風を生成しまくるタイプ。ものすっごく青春的だし、まさに過去の音楽の感覚の「直撃」と、そして何よりも「痛感」。もしPark Nationalことリアム君にあったら「お前最高だよ…!!」って泣きながらガッ…!て抱きしめてしまうなって思う笑。私の過去を塗り替える勢いの再現クオリティをなんで作れるんだよって感じだし、その過去が圧倒的な新しさの現在になるってやっぱり価値がとんでもない。M2のSet My Bed On Fireとか今までことあるごとに超リピってて、街で出合い頭に会う人漏れなく全員に「これいいですよ」って勧めて押し付けたくなるレベルなの。。


6. Royel Otis - "PRATTS & PAIN"

The DrumsにRadio Dept.、インディーロックにドリームポップに2010年代私がお世話になったそういうやつの大*進化系。王道よりももっと個性派の、それでいて時代をハッキリと象徴する作家性。しかもそれらが複合して、持ち味を失わないまま新しい一個体になるような見事すぎてる大成。。これは心から本気で、2020年代のある種のブランドを確立するくらいの素晴らしさだと思う(←分かってくれる人絶対いるって信じてる…!(T_T)笑)。曲によってはクラナシみたいに無法に突進するロック感もあったり、Hot Chip的にメロウなシンセポップの雰囲気もあったり、2010sのインディー・オルタナの融合感が度肝を抜かれるくらいハイグレード。あとは60s後半のヴェルヴェットやビートルズのオールドスクールな粋も体得するし、あまりにも凄すぎてると思う。。既存のアイディアを流用するだけでなく、ドラムマシーンを活用するいかにもデュオっぽい編成感であるとか、オーストラリア拠点のオリジナリティが強いバックボーンとか、新規的な観点から言っても勿論抜群な感じ。こういうバンドってワクワク感エグいし、何よりアー写込みでグループのキャラがマジでマジで魅力的で。。!!笑。過去の音楽のエモさにおけるアップグレードのトピックで、Royel Otisをなしにして話すのは何が何でも無理だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?