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(全文公開)AI readyな世の中

シンギュラリティ ーと言われる、人工知能の能力が人間を超えてしまうと言われる2045年まで残すところ後25年。このことは多くの人が恐怖と共に語ることである。なぜ、恐怖を感じるのか?それは、オックスフォード大学のオズボーン教授が示した、今後なくなる職業とセットで語られるからだ。

一説によると今ある職業の約半分は今後消滅する可能性がある。つまり、学生が今目指している仕事があるか、いざ就職活動を始めた時にも果たしてあるのかどうか、誰も保証する事はできないのである。今後小学生に対して「将来はどんな仕事をしたい?」という質問はタブーになるかもしれない。なぜなら、夢は膨らませたのに、その仕事が上記のなくなる仕事リストに入っていれば、ガッカリさせてしまうことになる。

教育機関ではこのシンギュラリティー問題というのは、生徒を発奮させる有効的な手段として使われる例が多い。「授業中に遊んでばかりいると、お前はAIに奪われるような仕事しかできないぞ!」といった具合にだ。しかし、根本的な問題としてこのシンギュラリティ ーというのは本当に避けたい事実なのであろうか?

筆者はAIの教育現場での有効活用に関して、人工知能に詳しい先生方とディスカッションを重ねた経験がある。その結果たどり着いたのは、「AIというのは実は出来ることが少ない。」ということである。例えば、よく検索エンジンで個々に適した広告が示されるが、AIは「なぜ、その人にその広告が提示されているのか。」という根本的な部分を答えることはできない。単に「その人が関連したキーワードで多く検索しているから。」表示しているだけである。例えば「結婚式を控え、それに関連した品を見ていただけで、結婚式が終わったらそのような検索をする必要がない。」ということは理解できない。現に結婚式が終わっても関連する品はしばらく広告表示されることだろう。

TPOも理解できない。YouTubeでプライベートで見ていたポルノ動画が、仕事場で流れてしまい問題になったというケースがあったことは記憶に新しい。

そもそも仕事とは無くなる運命にあるものが多い。例えば、江戸時代に散見された馬の世話係を街中で見かけることはほぼないであろう。そこまで遡らなくても、平成の間になくなった仕事は多々ある。

それと同時に生まれた仕事も多い。さっきの馬の世話係は今ではガソリンスタンドで勤務している。車は自分でガソリンを入れられないので、人の手を借りていれるわけである。このように技術ではカバーできないことが一つの仕事となるように、今後はAIができないことを人間がカバーするという仕事が増えてくるであろう。例えば、旅館の顧客アンケートデーターベースを解析して、シーズンごとの顧客の特徴を割り出し、時期毎にどのような接客方法が適当か洗い出すというような作業は人間よりもAIの方がきっと優れているであろう。しかし、顧客を実際に接待することはAIにはできないので人間が担うべきである。AIとの共存社会とも言われたりするが、何もAIが特別ではなく、長い歴史上人類はこのようにして社会技術と共に共存共栄してきたのだ。

仕事がなくなる事を恐れるような人間を育てるのではなく、「仕事を自分で生む人間になろう!」と夢と希望を持って語り続けるのが、我々教育業界で生きるものたちの使命であろう。

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世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。