点で語るな線で語れ
AO入試(総合選抜型入試に名前は変わっているが、ここでは便宜上AOと呼ばせてもらう)で必要なことは文章で自分の力をアピールする力である。AOとは今までの自分の取り組みを評価してもらう入試形態であるが、それをアピールする術は文章しかない。いくらプレゼン力があっても、書類の時点で、落とされてしまっては次には進めないのである。
日本の教育の問題か、普段自分をアピールすることに慣れていない高校生の文章を見ると、出来事を点で語るケースが多い。
例えば・・・
私が一番がんばってきたことは部活動だ。所属する野球部ではキャプテンを務めた。キャプテンの仕事でもっとも大変だったことはチームをまとめること。最後の大会の直前までチーム内ではケンカが絶えなく、自分のリーダーシップのなさを痛感した。しかし、最後の大会ではチーム一丸となって臨むことができ、結果は目標としていた順位まで届かなかったものの、仲間と共に目標を目指したことは良い思い出となった。この高校時代の経験を生かし、貴学ではコミュニケーション学部を志望する。なぜなら、コミュニケーションをしっかりととることがリーダーとして最も求められていると感じたからである。
一見、何の問題もない文章のようにも見えるが、
・ キャプテンとして何をどのように感じたか語られていない。
・ なぜ、リーダーにはコミュニケーションが重要だと思ったのか語られていない。
・ 総じて言えば、この文章から受験者がどのような人物なのか感じることができない。
といったところだ。私ならと先に断っておくが、以下のように書く。
高校時代私が一番がんばってきたことは部活動だ。野球部に所属していたのだが、高校2年時にはキャプテンに指名された。私は今までリーダーシップということを考えずにここまで生きてきたのだが、これを機会に人をまとめることはどういうことか深く考えるようになった。元々リーダーシップのない私であったので、なかなか部をまとめることができずやきもきしていた。そんな悩みを抱えいた時、立ち寄った本屋で「リーダーシップとは?(仮題)」という本を手に取った。その時、真のリーダーとは言葉を通じて、思いや考えを伝えていくことだということを学んだ。それから、部員一人一人と丁寧に会話することを心がけるようになり、それを繰り返すことで部がまとまっていく姿を感じることができた。残念ながら最後の大会は思う通りの結果を残すことができなかったが、みんながこのチームで良かったと言ってくれたことが何よりも嬉しかった。この頃からコミュニケーションを通して、人と人とを繋ぐ役割を今後も担っていきたいと強く思うようになった。貴学のコミュニケーション学部は人をまとめるための話術を重要視していると理解している。貴学で学ぶことにより、人に輪をもたらすコミュニケーションのスペシャリストとして成長できるのではないかと感じており、将来はその技術を生かし、会社の中でコミュニケーションを通して部内に活力を生むような人材になりたいと考えている。
この文章の特徴は経験から自分が何を感じ、考え、それがどのようにして受験する大学へと繋がったのかを明確化している。もちろん文字数の制限もあり、必ずしもこのように上手くアピール出来るというわけではないだろうが、審査する側は「あなたがどういう人物で、大学に入ったらちゃんと勉強するのか?」ということを最も知りたいということを受験者は意識して文章は構成するべきであろう。