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Shinzoneのカーゴパンツとあの街

名品といわれるこのカーゴパンツを履いて 約束の時間ぴったりにあの街についた。 この街に用があるときなら、 少し時間をもらえる気がしていた。 けれど、今日はあの人には会えない。 忙しいという理由だった。 断られているのに、 期待が捨てきれていない自分がいた。 Shinzoneのカーゴパンツは、 背の低い私でもきれいなラインを作ってくれる。 ブラウンのタンクトップにジャケットを羽織って、 お気に入りのピアスとリングを合わせた。 来るはずもない連絡は、結局来ることもなく

    • 夜色のブラウスとデニム

      四月、まだ肌寒い休日の午後、電車に乗った。 晴れていて、昼間はブラウス一枚でちょうどよかった。 帰りが夜になるかもしれないから、ツイードのジャケットをカバンに入れていた。 2人で会えるかはわからなかった。 だけど、もし会えたとしても目立たないようにと服を選んだ。 夜の街で目立たないように、夜色のブラウスとデニム。 色気を感じさせないようなアイテムにした。 ピアスだけは大きいものにした。 つけ慣れたアンティークゴールドの控えめな色味。 大勢の集まりの中にあなたを探すの

      • サーモンピンクのヴィンテージネックレス

        ヴィンテージやアンティーク、レトロといった服や小物が好きになったのはいつからだろう。 高校生の時に友人が連れて行ってくれた古着屋は、私には衝撃だった。独特の匂いと雰囲気を持っていた。ちょっと取り入れるには難しそうなものばかりが並んでいた。 友人に「これ、かわいいね」と言われると「かわいいね」としか答えることができなかった。渋谷から原宿へと足が棒になるまで歩き、「やっぱりあの店に行ってもいいかな」と聞かれると、「うん」としか答えられなかった。 それからも古着屋巡りは続き、

        • シフォンのオスカルブラウス

          透け感のあるベージュのシフォンブラウス。胸元は大きく開いていたけれど、リボンで結んでインナーは黒を着れば不自由はなかった。いかにも女というイメージは私には似合わない。 形はマスキュランというイメージ。腰骨のあたりに太い帯のようなデザインで、これがあることでウエストにふんわりとした空間が生まれた。 長袖の袖先は、パフスリーブのようにふんわりとしながらもここにも帯のようなデザインに小さなボタン4つがついていた。 このブラウスは、ベルサイユのばらのオスカルを思わせた。 女性ら

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          11本

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          ORCIVALのボーダー

          はじめてボーダーを着たのはいくつの時だっただろう。 ボーダーは、抵抗なく着ることができる人とそうではない人がいる気がする。私は後者だった。 なんとなく主婦のようなイメージがあったから、年上に見られがちな私が着たら更けて見られること間違いなしだと思っていた。 たくさんの色が並んでいるショップに行っても心が高鳴るなんてことはなく、こんな配色の服を着る人の気持ちがわらからないとすら思っていた気がする。 初めて買ったボーダー、ブラウンとカーキの落ち着いた配色のものだった。そも

          ORCIVALのボーダー

          greenのデニム

          代官山と恵比寿から歩いたところにあったgreen。 雑誌でもたくさん取り上げられていて憧れのショップだった。 デニムはそれまでも履いていたけれど、どちらかというと苦手だった。デニムを好きになったのは、greenのデニムと出会ったからだと思う。 こんな高価なものを買うことなんてないと思っていた。デニム一本にこんなに払えないと。 見ているだけでも緊張してしまう、ブラックとホワイトで彩られた重厚感のある店内。壁にもオブジェが並んでこっちを見張られているような気にすらなった。

          greenのデニム

          パープルのクロコ財布

          夜の丸の内。大きな商業施設はまだなかった頃。得意先のオープンレセプションパーティに行った時のこと。 大手町から向かうと人通りはそれほど多くなかった。暗い夜の中に灯っていた黄色い光が暖かい印象だったから、冬のことだった気もするし、急いで走っていて汗をかいていた気もするから、夏のことだった気もする。 丸の内の路面店で買い物をすることなんてなかった。だから、ひとりで店に入るだけでも緊張した。 挨拶をして中に入ると、担当者がちょうどこっちに来てくれた。担当者は、私より年上の男性

          パープルのクロコ財布

          キャメルのロングブーツ

          雪が降り積もった朝。土曜だというのに出社日だった。滑らないように気をつけて駅に向かった。 車の往来があったから地面は雨の後のようだった。電車はいつも以上にガラガラで、キャメルのブーツは、雨が染みてで底のほうの色が濃くなっていた。 地下鉄から地上に出ると、びっくりした。歩道は、雪が降った直後のように足跡はほとんどなかった。 小さな川に丸くカーブした橋が架かっている。普段ならなんて事のない橋なのに。 赤く彩られた手すりも雪に埋もれていた。ゆっくりゆっくり進んだ。半分を越え

          キャメルのロングブーツ

          ブラウン×ネイビーのバッグ

          まだ、あなたのことを意識をしていなかったときのこと。 本館から少し離れた別館の2階の扉を開けようとしたら、あなたが外から中に入ってくるところだった。明るい外の光が眩しかった。 誰かいるなんて思っていなかったから、不意に私の口から出た言葉は、自分でも意外なフレーズだった。 「ネクタイ、茶色なんですね。素敵です」 「あっ、ありがとう。そっちこそ、営業力あがってきましたねー」 少し照れた様子は一瞬で消え、茶化した言葉でさらりとかわされた。 ネイビーのスーツとブラウンのネ

          ブラウン×ネイビーのバッグ

          カシミアの赤いストール

          よく考えてみたら、私の周りで真っ赤なストールを身に着けている人はいない。 発色がいい赤のストールがあのときとても欲しくて、いくつも店をはしごした。できれば、質感がいいもの、カシミアが欲しい。あったかい大判のものがいい。 希望のものを見つけた時はうれしかった。そして、同時にこれを私が身につけていいのかと戸惑いもした。こんな真っ赤なストールはだれも買わないのだろうかという思いまででてきてしまって、手に取りながら店の中をうろうろしていた。そして最後に自分で納得してレジに向かった

          カシミアの赤いストール

          黒いボウタイブラウス

          二十歳の私に舞い込んだのは黒いサテンのボウタイブラウスだった。 まだ学生で、ツヤツヤしていて襟元にリボンがくるであろうこの服をどうやってきたらいいのかわからなかったし、そもそもいつ着たらいいのかすらわからなかった。 だけど、大人の女の人が着たらかっこいいだろうという思いとともにクローゼットにしまっておいた。 初めて着たのはいつだっただろう。先輩の結婚式の二次会で同系色のパンツと合わせて着ていった気がする。自分がこの服を着てよいのかとドキドキしていた気がする。 就職先が

          黒いボウタイブラウス

          リバーシブルのロングコート

          三年前に買ったロングコート。今年も素知らぬ顔で着ている。 グレーとネイビーのリバーシブルになっているけれど、ずっとグレーの顔をしている。 今年もそろそろ終わる。そんなときに会えることになった。 人々が賑わう場所へ行くことは久しぶりすぎて、私は着ていく服がないことに気づいた。あの頃の私を知っているあの人にガッカリさせないような、それでいて頑張りすぎないような服を着ていきたかった。 待ち合わせの当日になってしまった。一時間という限られた時間で、目星をつけていたいくつかの店

          リバーシブルのロングコート