(フィクション小説) 水面下の虚飾 第一章
公嶋かなめ著。水面下の虚飾(きょしょく)
第一章無料。第二章以降有料記事予定。
※この小説はフィクションであり実際に起こったことではありません。ただの創造物です。著作権は公嶋かなめにあります。この小説を共有する以外の類似性の創作物無断のコピペは禁止します。
湖が綺麗なこの田舎で私は毎日近くの川で洗濯をし身体を洗い水を飲み干すのだった。
私という女は両親を早くに亡くし幼少期、養子としてこの村に来た。
まだ学問もならわしも分からぬ早熟した容姿の女子に養子として引き取ったイタコは大層気に入っていた。
まだ蕾だが大輪を咲かせると予言し私を次代の村のイタコに育てると言い、
この美しい神秘の湖へ連れて行っては沐浴、絶食、殺生、さらに上にある山へ祈りを捧げてきた修行。
それでも女体は歳を重ねるとともに成熟しわずか13歳で初潮を迎えた。あまりにも早すぎる身体の成長にイタコは天の授かり物と祝福したが炭鉱や農家の男共からの色眼鏡を恐れ湖から分流した小さな川のほとりに小屋を建て私を軟禁した。
イタコとの修行、日中以外決して外に出てはならぬ。
雨の日誰かが小屋の扉を叩いても屋根下で雨宿りしていても決して他人は招いてはいけない。
この掟を破れば貴様が落雷の如く恐ろしい化け物に変わる。村八分に合う。
13の私は、自らの才能を無知ながらも理解しこの掟に対し意を決した。
湖、近くの川に映る私はやはり太陽が昇るごとに磨かれていた。
白き肌、琥珀色の両眼、青々としたしなる黒髪、殺生絶食の週間ながらもふくよかで果実が背伸びをしなくても届く女体。
誰にも会ってはならぬ。
張り裂けそうな思いに血溜まりを吐くこともあったがイタコの特製の漢方のおかげで翌々日には回復した。
19歳になった今、村の女は皆めでたく嫁入りし子供を産む。
私はその知らせをイタコから聞くと突然イタコが丙午が近いと村のためにあの神山へ祈祷師として引き篭もることになり、小屋は私だけ、周辺1キロ以内は私だけの領土となった。
私はひとりぼっちになった。
ひとりとして女として次代のイタコとして私はこの世でかけがえのない使命を持つ人間だと確信していた。
だが、確証がない。イタコの言われた通りの行いをし自然の流るるまま生きてきた。
ひとりで湖に行き水面に映し出す私はとても老けたように見えた。
あの水は確かに澄んでいて時の鳥が着地すれば静かに波紋し森が風になびいて私は念を唱えまるで雅楽のように聞こえた。
それがとても心地良い。それが楽しかった。修行であれど天地の調和をともに出来たことに。
老けた私はイタコが消えた途端、小屋に引き篭もることになった。
映し出した私の容姿がとても恐ろしかった。
白髪が混じり明らかに肌色が暗かった、そして涙を流してもこの水面のように潤いのない暗躍の眼。
どこかで掟を破ったのか、それともともにしたイタコがいなくなってしまったショックなのか。結婚せず誰とも交わることのないことに何が悪いのか。
誰も教えてくれない真実を私は唱えてしまった。
つづく。
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