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【叙】食い違うアサド大統領とエルドアン大統領


3月18日、トルコ与党公正発展党(AKP)のオルハン・ミロール高官は「シリアからのトルコ軍撤退は問題外だ」と語った。


シリア政府が今回提案した条件では、シリアのアル・アサド大統領とトルコのエルドアン大統領によるトルコ軍撤退に関する会合は現段階では難しく、5月14日のトルコ大統領選の後であれば可能になるかもしれない。

AKPの関係者によると、アサド大統領がトルコとの国交の正常化のための条件としてシリア領土からトルコ軍の撤退を要求しているが、話し合いで両国の意見の相違と問題を解決することが出来れば両国の国交は正常化すると述べている。


一方、アサド大統領は「シリア領土におけるトルコ軍の不法占拠が終わるまでエイドリアン大統領とは会うつもりはない」と述べており、両国は譲歩しない姿勢を見せている。

シリア内戦が勃発した2011年より両国は国交を断絶し、AKPはそれ以降シリア北部地域にトルコ軍を配備している。アサド政権側はAKPが自由シリア軍の主要支援国であり自国内でテロを誘引していると強く非難している。


ロシアはどう見ているのか?

過去に国連主導の和平交渉が停滞する中、ロシアはトルコに対し和平交渉を持ち掛け、結果アサド政権と自由シリア軍の間で一時的な和平が実現された。

これにドイツ、フランスの二か国が加わり四カ国会合が行われ、シリア北西部のイドリブ県に非戦闘地域が設けられるなど、シリアにおけるロシアの影響力は大きかった。

アサド政権の実質的支援国であるロシアが両大統領の会合を設けトルコ軍を撤退させることは以前なら可能だったかもしれないが、北欧二か国のNATO加盟へのトルコの支持、トルコ領海であるボスポラス海峡を封鎖し、黒海に入港しようとしたロシアの艦隊を阻止するなど、ロシア、トルコ両国の外交関係は以前とは全く異なり、トルコへの影響力が軽減している。

実際にロシアは今週初め、ロシア、トルコ、シリアの会合を主催していたが、トルコ側の理由により会合がキャンセルされており、これはロシアがトルコに対し影響を与えることができない裏付けとも取れる。

トルコのミロウル首相は「エルドアン大統領が選挙に勝利すれば現在の外交関係を維持するが、最も重要な問題は選挙後のトルコがどうなっているかだ。トルコでの権益と影響力を利用するためトルコを変化させたいと思っている国は沢山ある。特に米国、ヨーロッパの国の一部、そして何よりもまずアサド大統領だ」と述べている。


トルコ大統領選が終わるまで、両国の「国交正常化」に関する交渉は再開されないであろうと、筆者はそう考える。

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