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KINOSHITA NIGHT 2023 〜木下理樹生誕祭・SHIGONOSEKAI〜

 syrup16gとART-SCHOOLは高校の時に聴いていたバンドだ。わたしは木下理樹と誕生日が同じで、ライブ前日。誕生日なのにお金はそんななくて、誕生日のほとんどを高速バスの車内で過ごした。片手で収まる分のラインメッセージが飛んできて、先輩からのおめでとう、の文面にはどこまで礼儀正しくしたら良いのだろうか、とか考えながら窓の外とスマートフォンを交互に見ていた。

前日の夜には東京に着いて、Twitterのフォロワーに声をかけてもらい新文芸坐でソナチネをみた。映画の解釈やお互いの近況について帰りに焼肉屋で話をした。渋谷も池袋も下水と人の匂いが混ざりあっていて、都会の匂いってこんな感じだったよな、と思う。地元からは出てくることが出来て、けれど東京に住むことは出来なくて、自信の弱さとか、これからどこでどうやって生きていこうとか、色んなことを考えた。上京した友人と、実家暮らしを続けている友人のことを思い出した。みんな元気にしているだろうか。

ライブ当日、ライブの開演の2時間以上前に東京テレポートに着いてしまい、親子連れしかいない商業施設の中でうろつく羽目になった。もう行く場所がなくて藁にもすがる思いで喫煙所に入ったら椅子付きで、しかもめちゃくちゃ綺麗で広かった。喫煙所を転々としていると、開演1時間前とかになったのでZeppに向かった。Zepp前の広場にでるとものすごく安心してしまった、集団が黒い。自分が生まれた年のバンドTを着ている人とかもいて、自分の知らない歴史に居られた人のことを見て羨ましく思った。

Twitterを眺めていたらフォロワーが数人来てることがわかったのでDMをし、待ち合わせて挨拶した。整番が近かったので一緒にLIVEを見させてもらうことにした。

POLYSICSが始まった。予習しようと思っていたけれど寝落ちをしてしまったので本当に初めて聞くような状態だったけれど、そのこと自体をMCでいじってくれて、なおかつ全ての曲がノリ易くとても楽しかった。木下理樹にケーキが似合わないという話、想像したらほんとに似合わなそうだな。ガンジーと機関銃。木下理樹とバースデーケーキ。

ポリがMCと連続演奏で爆速で出番を終え、syru p16g前の転換。同行者となんの曲をやるのか楽しみだねって話して、学生時代に聴いていた曲の話をした。syrupは私は高校時代はそんな聞いてなくて、syrupが学生時代にあった人の話とか聞いて、それぞれの人性が似ていて、でもなにか決定的に違うんだろうなって思っていた。Twitterをひらくとフォロワーが数人来ていて、それぞれが生活から離れて、夢を見るための場所として、その上で生活を送りつづけるための場所としてここを選んだんだなって思った。
 syrup16gが始まった。知らない曲。まだ聴いてない曲なのかな、と思ったら新曲で、全部新曲をやります!といった五十嵐隆と観客のえええという野太い怒号が面白かった。そのあとのうそ、あと2曲!がすごく可愛かった。ステージライトが逆光で、ステージまでが遠くてしっかりと表情は見えなかったのだけれど絶対に可愛い感じの笑顔だったろうな。
 そのあとは神のカルマ生活…とキラーチューンをMCなしで続けていき、誕生日プレゼントです、おめでとうと言って彼は去っていった。かっこよかった。後半汗まみれで、力任せなギターで全員を圧倒してった。正直もうここで今日来た目的は達成したんじゃねえの?って思ったけどまだ木下理樹を拝んでいない。私は高校時代から今まで聴いてきた音楽の実在を確かめなきゃいけなかった。私が聴いてきた音楽を唄う人が、聴く人が、こんなにも沢山いて、それにはみんな血が通っているんだよって言うこと。

 再度転換。スタッフの方が持ってきたギターがフライングVで、同行者の袖口を引っ張ってフライングVです!!って叫んでしまった。YouTubeで見たLIVE映像の木下理樹、私が恋していた、世界のことが嫌いだった木下理樹。その象徴があの形から尖ったギターだった。それを今日目の前で見ることが出来るんじゃないかって。月並みすぎる表現だけれど、胸が高鳴った。ものすごく。
 ART-SCHOOLスタート。Luminousから1曲目、続けざまにアイリス。requiem for innocenceからの曲がこのタイミングできて、もしかして今回古めの曲中心にやるんじゃないかなって思った。evilが流れて、ここからほとんど記憶が無い。foolishのイントロ、ギターの音が流れて、木下理樹がサビで叫んでいた。声が過去のライブ音源よりももっとずっとクリアで、ギターも暴力的で、みんなありえないくらい拳を掲げていて、荒れた海の波打ち際に居るみたいだった。プール。artの中でも1番レベルで好きな曲でマジかよ、と思いながら聞いていた。プールなのに照明が青じゃなくて白で、なんか触れられない雰囲気で、神聖で、でも今まで聴いたプールの中で1番近くにいた。続けざまにサッドマシーン。ライブ映像でこの曲だけタイムスタンプ使ってみていた曲。この辺りで今日来て本当に良かったって思ってた。私の学生時代の孤独をひとつひとつ現実に還元して行く作業。
 新アルバムからbagが流れる。アルバムで聴いたときは分からなかったけれど5人体制でこそできるシューゲイザー全開で、曲そのものから、木下理樹から、メンバー一人一人から、光が溢れているみたいだった。曲の最後の「まだ飛べるかな」って歌詞の、ART-SCHOOLの言葉じゃなかったらまったく響いてなかったかもしれない言葉の力がすごくて、凄かった。もう何も言わなくていいかなって思った。

アンコールの拍手が何回も何回もテンポを崩しては揃ってを繰り返していた。音が波になってく一体感が結構、というかすごく好きだ。袖からメンバーが出てきて、戸高賢史のMC。「ART-SCHOOLに入った時のエフェクターを持ってきました。」スカーレットのリフ。正直もう会場がどうだったとか木下理樹の声とか演奏がどうとか覚えてなくて、ただただ良かったことしか記憶にない。次で最後の曲です。というMC。ギター。ニーナの為にの冒頭の歌詞。もう一生続いてくれと思っていた。

終演後、ニーナの為にはライブ演奏少ない曲らしくアートのライブに数回通ってる同行者から聴けてよかったと説明された。初参戦ライブこれなの贅沢すぎるんじゃねぇの、って思いながら新幹線の時間が近づいた同行者と別れる。帰りたくねぇな、と思いながらダイバーシティないの喫煙所に向かう。シロップのバンドT着てる人とかがいた。そのモザイクのCOPYのジャケットのTシャツなに、私も欲しい。
 フォロワーのうちの一人がまだ残って居るみたいで、話したい旨を伝えて、喫煙所に来てもらう。私と10とか年が離れている人。きっと私と違ってアートとかシロップとかにリアルに触れてきた年代の人。ニーナの為にの話とか、ライブの話とかしたけど、お互い呆然としていて、近況の話とかをして、一緒に新宿まで帰った。



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