革命と富の再分配①

1.トマ・ピケティの「r>g」

 
Thomas piketty著「21世紀の資本」は10年ほど前に全世界で注目された経済学の本である。
所得と富の分配については、マルサスやリカードやマルクスといった経済学者が19世紀に論じていたが、当時はデータの裏付けがないものだった。

トマ・ピケティは世界各国の300年間にわたる膨大な税務記録をデータ化して、所得格差・貧富の差を大きな社会問題として提起した。

資本主義の下では、富の格差は放置しておけば広がり続けるとし、貧富の格差を解消するためには、何らかの政策が必要だと彼は主張した。

上位1%の富裕層が世界の個人資産の半分を保有しているとメディアでも報道されていましたね。
これは富の格差は資本主義の下では自然に縮小するとした「クズネッツ曲線」を真っ向から否定した経済論文だった。

トマ・ピケティの理論をわかりやすくいうと次のようになります。
資産を運用して得られる富は、額に汗して働く労働によって得られる富よりも成長が早い。つまり、資産を持っている裕福な人はより裕福になる。
対照的に労働でしか、富を得られない人間はいつまでも貧しいままということだ。
また、累進課税型の財産税があるとしても、富裕層の資産は相続され、富裕層の家計は世代を超えて富裕層となる。
それがデータを通して裏付けされたというのがトマ・ピケティの主張だ。


世界の超富裕層が慈善団体に寄付という話がたまに報道される。
例えば、昨年夏にビル・ゲイツが2兆3000億円を慈善団体に寄付した。

騙されてはいけない。
個人の資産は死ぬと家族に相続される。その時に国によって割合は違うが相続税が課される。それを避けるために、大金と政治家を使って「財団」を家族に事前に作らせているのだ。慈善団体の財団へのは課税されない。しかもその財団の巨額の資産は末代まで家族に引き継がせることができる。慈善団体は非課税でさぞかし住み心地が良いことだろう。
金持ちは合法的に資産を継承する典型的な例だ。

昔からある格言がある。
「金持ちになりたければ、金持ちと結婚しろ」
というのは事実である。

2.フランス革命と富裕層

調べてみると面白い事実が浮かび上がる。
話は、1789年のフランス革命までさかのぼる。
フランス革命を経て、世界には国民国家が誕生した。
それまでは、ヨーロッパは国家・国境はなく、国王(君主)が地域を支配しているようなものだった。国王や貴族たちは婚姻を繰り返し領土拡張にしのぎを削っていた時代である。

絶対王政だとされる社会構造「アンシャンレジーム」においては、国王の配下に特権階級(免税特権と政治関与の特権を与えられていた)として聖職者と貴族がいた。その下に大多数の平民がいた。
当時のフランス王国は財政難に陥っていた。そこで平民への徴税を強めたため、大衆は積もり積もった不満を爆発させ平民たちが革命を起こした。
イギリス革命とは違い、フランス革命は市民革命だった。
平民はバスチーユ監獄を襲撃し、最後は国王ルイ16世を処刑した。
封建制度は廃止され共和制がひかれ、国民国家が誕生することになる。
時同じくして工業・商業の発展に伴いブルジョワジー(資本家)が力をつけていく。その後1804年あのナポレオン1世が皇帝となりヨーロッパで活躍する。ナポレオン1世が没後、フランスでは選挙を使った共和制に移行していった。

さっとフランス革命の流れを踏まえたうえで、着目したいのは次の点だ、だ。


『フランス王国は財政難に陥っていた。』という部分だ。
ネット調べると、その金額に愕然とした。

780年代時点の財政赤字は45億リーブル(2017年時点の日本円で54兆円相当にまで膨張していた。

Wikipedia

なるほど、その巨額なマネーを誰かが貸していたことになる。
その「金貸し」は誰なのか?
当時の銀行業で思いつくのは、マイアー・アムシェル・ロートシルトだが、まだ当時にそこまでの財力があるかどうか?
おそらく時代の背景上、当時の「金貸し」は有力な「貴族」であろう。

では、フランス革命において平民は国王の財産を没収したのはよいが、特権で守られ、暴利を貪っていた「貴族」や「聖職者」たちの富はどうなったのか?

そこでトマ・ピケティーが再度登場する。
最新の著作である「資本とイデオロギー」(日本ではまだ翻訳作業が終わっていないため、まだ未刊)の中でフランス革命時の富の分配状況を表す図があった。
フランス革命を経ても、上位1%の超富裕層が全私有財産の半分を保有し続けている資料である。

ということは、不平等な絶対王政が市民革命で倒されても、富の分配は行われず、超富裕層は革命を乗り切りそのまま膨大な資産を保有し続けたことになる。

となると、ここで新解釈のフランス革命を展開したくなった。

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今日はここまで。つづく

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