無題

【追憶の旅エッセイ#17】彼女が叶えてくれたドルフィンとの触れ合い

以前のエッセイに書いた彼女のように、私は足首にドルフィンを彫ったりはしなかったけれど、私もドルフィンが好きだ。

それまで身近で見たことはなかったけれど、その緩やかで優しい身体のラインやつぶらな瞳、人を癒してくれるというその神秘的な存在に、いつかは会いたかった。

それに西オーストラリア辺りまで来たら、何となく会えそうな気がしていた。詳しくは知らなかったけれど、旅人同士の話でよくその地名を耳にしていたからだ。

Monkey Mia/モンキーマイア。

モンキーマイア、と言えば西オーストラリアを旅する人で、知らない人はいないだろう。野生のドルフィンに出会える上、餌付けなどで触れ合えることで人気を集める観光地だったのだ。

ただモンキーマイア自体には、リゾートがひとつしかなく、バックパッカー向けの施設ではなさそうだったため、デンハムという街のユースホステルに泊まることにした。

その宿からは毎朝、モンキーマイアへの無料シャトルバスが出ていたのも良かったけれど、何よりサチ(仮名)と出会えたことが大きい。

ユースホステルで掃除をしながら宿代を浮かせるというフリーアコモデーションをしていたサチとは同室で、ルームメイトだった。

デンハムの陽気さを受け取ってこんがりと日焼けし、サバサバしていながらも温かい彼女を、私はすぐに好きになった。

到着した翌日、朝のシャトルで私はまっさきにモンキーマイアに行った。

でも結構な人だかりで、ほとんど水際が見えない…。そのためここの目玉であるフィーディング(餌付け)さえできなかったものの、タイミングを見計らって水際までやって来たドルフィンたちを写真に収めることはできた。

サチとゆっくり話せたのは初めてモンキーマイアに行った日の夜。

そんなモンキーマイアでの話を宿のキッチンで彼女にしていると、彼女はいとも簡単に言った。

「明日、私の出勤日だから、フィーディングに指名してあげるよ!」

何と彼女はフリアコをしつつ、モンキーマイアでレンジャーのワークエクスペリエンス(インターンシップのようなもの)をしていたのだ、なんと!

このユースは割と大きかったので、別の部屋になっていたら、短期間の滞在の間ではそんな事実を知ることもなかったかもしれない。

(私ってばやっぱりツイてる!)と心の中でガッツポーズを作った。

翌朝、しかもシャトルではなくサチと彼女のレンジャー仲間の車に乗せてもらい、モンキーマイアへ向かう。

少し早く到着し、この日は最前列で待つことに成功。

すると間もなく、前日より数は少ないものの、背びれが見えて遠方からこちらへやって来るのが見えた…!

リーダー格のレンジャーが何か説明し、数名いる他のレンジャーたちが、それぞれにお客さんに手を上げさせて、指名するのは昨日と同じ。

違うのは、今日はそのレンジャーの中に、もう知った顔のサチがいること。

フリアコ中の彼女もいきいきしているけれど、やはりドルフィン好きな彼女、レンジャーのときにはよりキラキラと輝いていた。

その眩しいほどの笑顔で彼女が言う、「餌あげたい人ー?」。彼女が言い終わるか終わらないか辺りで、私はすっと手を上げた。約束通り、サチは私を指名してくれた。「そこのあなた、どうぞ」と。彼女の白い歯が光っている。

サチから魚を受け取り、イルカの口まで持っていく。相手も慣れたもので、口を開けて待っている…その何という愛らしさ♡。

つぶらな瞳と目があった…気がする!

フィーデイングの勢いでつい手がイルカの鼻の上に当たってしまい、その感触を何となく覚えている。

サチ、貴重な経験を本当にどうもありがとう。

ドルフィン好きの彼女はその後、また別の場所での仕事をゲットした。

同じく西オーストラリアのパースよりさらに下、ロッキングハムという町から出ているドルフィンスイムツアー、だという!

その知らせを受けてから、彼女を追うように彼女の新たな職場を訪れ、ツアーに参加したのは言うまでもない。

海中から数えきれないドルフィンたちが、円を描いて迫って来る圧巻の体験をすることになる。

いずれもサチが繋いでくれた縁だから、私がドルフィンとの記憶を辿るときはいつも、太陽のように朗らかでサバサバしたサチの笑顔を思い出す。

◆旅帖より◆

ちなみにモンキーマイアでは現代のマーメードとも言われるジュゴンにも会えた♡

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