無題

【追憶の旅エッセイ#25】オーストラリアの中の独立国、ハット・リバー王国へゆく

オーストラリアを一周する中で、旅人が主にネタのために訪れるというスポットがいくつかある。

以前のエッセイでも書いたペンバートンの50m以上ある木登りはじめ、一度死ぬほどのスリルを体験できる“仮死に”ならぬカリジニ国立公園、魔女の宅急便の舞台と言われるタスマニアはロスのベーカリーや、キキが新しい町に到着した列車のモデルと言われるオーストラリア一の直線をひた走る列車インディアンパシフィック、などなど枚挙にいとまがない。

もちろん純粋な好奇心はあるのだけれど、後々語れるネタだなこれは、と思えるような場所はそれだけで優先順位が高くなる。

中でも特にマイナーかつマニアックなスポットが、ハット・リバー王国、だろう。

簡単にまとめてしまえばハット・リバー王国とは、西オーストラリアの州都、パースより北に約600kmに位置する、75平方kmの規模の“未承認国家”。つまり国側としては独立宣言をしているものの、オーストラリア国に承認はされていないよう。

もうこの時点で好奇心が止まらないあなたは、ぜひハット・リバー王国へ!私も例外に漏れず、その秘密めいた存在に迷わず旅のルートに組み込んだ私です。笑

私が訪れた2002年には、レオナード・ジョージ・ケースリーさんという国の設立者(国王になるのか)がお出迎え。

世界広しと言えど、国王自ら観光客をひとりひとり迎えてくれる国はなかなか見つからないだろう。

とても笑顔な農夫さん、と言っても過言ではない(実際、農業国のようですし)気さくな方。※今では高齢のため隠居されているのだとか。

さらに私と同行者の計3人は、彼によって国内を案内してもらう。この国では国王が観光ガイドも兼ねていらっしゃる…!

そこそこしっかりとした教会、郵便局、小さなおみやげ物店に展示室などに連れて行ってもらい、その間にどうやら国民は約30人、郵政省やイミグレーションなどの重要機関は家族でそれぞれ分担して機能していることなどを聞く。

もちろん“国家”であるので、パスポートの提示を求められとても得意気に、スタンプを押して下さる。これは本物のイミグレーションでおとがめがあったりなかったりするので一応、別紙に頼むこともできるそうだ。

私はもちろん、パスポートに「押しちゃってください!」と。苦笑

郵便局のような一角で、切手や通貨なども販売されている。

同行者のひとりが記念にとそこでハガキと切手を購入し、貼って出そうとすると国王が「No no!これに入れて出すんだよ」と、封筒を渡されていた。要するにそこで販売されているのはハット・リバー王国でのみ使うことができる切手のため、オーストラリアに出すには向こう(オーストラリア)の切手を貼って出すのだそう。笑

そして売店で何かを購入したお釣りは、オーストラリアンドルで渡されるという…。苦笑

ちなみに私は永住VISAを2ドルで購入しましたよ!

「いつでも戻って来ていいからね、仕事も紹介してあげられるよ!」と国王直々に。お言葉は嬉しいのだが、そもそもオーストラリアに観光ビザで入ってハット・リバーで永住するという現実味のなさがもはや面白い。

今思い出しても突っ込みポイントが満載の、なんともほのぼのする異世界なのでした。

ちなみに独立に至る経緯には、ほのぼのだけの理由ではないようだけど今回は割愛。ちなみにやはり農業国なのは間違いなく小麦、羊、羊毛、ワイルドフラワーを生産・輸出して生計を立てているみたい。

ところで英語が少しはましになり、ライターの今、もっと色々聞き出して記事にしたかった!と、当時の記録の乏しさにちょっぴりもどかしい。
国王に直接インタビューできる機会なんて、まぁないのだから。

◆旅帖より◆


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