無題

【追憶の旅エッセイ#9】西オーストラリア一怖い場所!? 大人の木登りは自己責任

木登り、というと聞こえはわんぱくな子供の遊び、のようで微笑ましい。

でも、私の中で木登りといえば幼少期のそんな思い出ではなく、西オーストラリアでの高さ52mの木登りが思い出され、足がすくむ思いが蘇る。

オーストラリアを一周する、つまりラウンドする旅人にとって「ペンバートンの木登り」は、ぜひ目指したいもののひとつだろう。

ただペンバートンは、日本からだとまさにオーストラリア大陸の最果ての地、と表現しても過言ではない場所にある。だからこそ長期の旅行が許された旅人たちはこぞってこの地を目指しがちだ。

ペンバートン付近にある、国立公園にも指定されている森。そこにお目当てのカリーの木、そう世界で最も高い木のひとつと言われ、90m近くまで成長するというカリーの木が生い茂っているのだ。

その雄大な自然の中に、見晴らし台が設置されかつてブッシュファイアを見守る火の見やぐら的な役割をしていた、カリーの木が3本ある。

それが今、木登りができる巨木として、多くの旅人を魅了している。

このときのメンバーで登るのは、ダイアモンドツリーと名付けられた52mの木に決定。

内心は一番高い木(ちなみに75m)に登りたい!と思っていたが、仕方ない。他の皆の意見も聞き、なるべく皆が挑戦できるようにと52mになったのだろう。英語がままならなかった当時の私は、話し合いにも入った記憶がない。

でもま、一見低そうに感じるが、52mでもその高さを目の前にするとなんとも言えないぞわぞわした感覚が足元から上がってくる。

し・か・も!

命綱なし、ヘルメットなし。頼りになるのは、木に階段式に差し込まれた鉄の棒…のみ。

こ、これは…。

一歩、また一歩、足を上げるたびに見える景色が遠ざかっていく、そして鉄の棒の間隔は広く、その間には何もない。

「At your own risk/自己責任で」

確か木の横にはそんな内容のサインが立てられていたっけ…。それを見て皆「ひぃー!」となって、半ば可笑しくなりながら登り始めた。

途中からほぼ垂直になる頼りない梯子と、実際落ちてしまったら体ひとつ支えきれなさそうな形だけのネットしか用意されていない、見張りのようなスタッフもいない。

ただ上を見て、やはり一歩、また一歩足と手を持ち上げるしかないのである。さらに見晴らし台から降りてくる人とは、当然この短い鉄の棒上ですれ違う。その恐怖たるや…!

半分くらい登ったら次は、でもこれ降りれるのか、という疑問が湧く。下からはまだ何人も登って来るし、もう引くに引けず。生きた心地がしないまま、やっとの思いで見晴らし台へ!

畳数畳分くらいの、小さなスペースにどんどん人が詰め込まれる。私は、その台そのものが足元から崩壊しないか、今度は別の恐怖に襲われもはや苦笑するしかなかった。

…が、

もちろんてっぺんからの見晴らしは、最高!

視界が一気に開けて遮るものが何もない状態。下にいるとき見えなかった、森林の全貌がただ静かに目の前に広がっていた。

あぁ、この達成感!これを味わいたいのだ、私は、と改めて強く思う。恐怖に打ち勝って登り切る巨木の木登りで、目的を達成する快感をまた味わえた。

その感覚は目の前の絶景含め、丸ごと自分の挑戦へのご褒美だと思えた。

そしてこんな手抜き(失礼!)みたいな、うそみたいな設備をアトラクションにしているオーストラリアの大らかさや、面白い体験をさせてあげるけど自己責任だよ、というクールなところ。

嫌いじゃないわ、そう思いました。

ちなみに、降りるのは想像に反して、全く怖くなかった…らしいよ(旅帖より)!

◆旅帖より◆



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