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#127 あなただから買うんですよ

 何を売るかにもよりますが、第一線で活躍している社会人の多くはお客さんからこんなことを言われると「仕事冥利に尽きる」と感じるそうです。

「あなただから買うんですよ」


 例えばビールの売り子さん、ご存じでしょうか。野球場などでビールの入った大きなタンクを背負って観客に売り歩く仕事です。圧倒的に若い女性が多いのが特徴の一つです。銘柄に特段のこだわりがない限りは誰から買っても一緒ですから、買う側にすれば「どうせ買うなら可愛い子から」というおじさん心理になるのは自然なことかと思います。ところが、マネージャー曰く、売上の順位は決して容姿や外見がいい順にはならないと言っています。
 トップクラスの売り子さんともなると、試合中の動きが違ってきます。①キョロキョロしている人と視線を合わせる(下を見て歩かない)、②ビールを飲み干すしぐさをする人を見つけて近づき視線を合わせにいく。③髪をポニーテールにして揺れを作り、手を振っているのと同様客の目に留まるようにする。④ほのかに香水をつけ視線が試合に向いている客に匂いで気付いてもらう。⑤スムーズな釣銭の受け渡しができるように普段から練習しておく。そしてこれが極めつけですが、⑥一度でも買ってくれたお客さんの顔は絶対忘れないのだそうです。
 さらに、⑦名前まで聞いて特徴とともにメモをして覚える。⑧試合開始前に観客席を見回り、以前自分から買ってくれた客を探し見つけたら挨拶をしておく。⑨その際にちゃんと客の名前(固有名詞)を呼ぶ(そうすると大抵のお客は感動するそうです)。⑩その客の飲むペースも覚えておき、飲み干すタイミングを見計らって近くを通る。⑪カップを渡すときに「〇〇さん、いつもありがとうございます」と固有名詞を一言添える。客も人間ですから、こうなってくると容姿や外見がどうのこうのとかは関係なく、この売り子さんから買おうと思うようになるのもまた自然なことかと思います。
 これが冒頭の「あなただから買うんですよ」であり、ここまでやるからこそなじみ客を増やし、自分のファンを作っていくことで安定的に売り上げを伸ばしていけるようになるのだそうです。

 どんな仕事でもそうだと思いますが、容姿や外見がいいと相手は会ってくれやすくなりますし、最初こそ買ってくれるかもしれませんが、それだけでずっと買い続けてもらえるほど商売は甘くはありません。社会人にとって容姿は確かに大きな武器と言えますが、それは数ある武器の一つに過ぎないとも言えます。容姿のみ単品での勝負では、短期的に何とかなったとしても、長期間にわたって活躍し続けることは難しいでしょう。自分の容姿や外見を武器にできる人であっても、他にも様々な努力を積み重ねる必要がありますし、逆にその努力ができる人でさえあれば、たとえ容姿や外見など武器にしなくても「あなたから買いたい」と思わせることは、十分にできるのだと思います。結局はどの仕事も同じで、その道で自分の生き方を切り開いていくには、容姿や外見に関係なく努力を積み上げていくことができるかどうかなのだと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。


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