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【ハイブリッドワーク先進国からの学び】ハイブリッドワークで男女格差が広がる??

こんにちは、ACALLの那須です。
日本でもコロナウイルスの影響を受けて、急激に働き方改革が進んでいますが、制度やツールなどのわかりやすい変化だけではなく、はたらく人々が感じる目に見えない影響についても考えていく必要があります。

世界ではwithコロナ、postコロナの働き方としてハイブリッドワークが中心になるとされています。これはオフィスとリモートの組み合わせた働き方で、アメリカを中心にハイブリッドワークに伴う懸念点とその解決策についても議論が進んでいます。

ハイブリッドワークに関するアメリカの議論では、「職場における公平性、平等」というテーマが多く見受けられますが、日本の場合はどうでしょうか。

日本でのよく似た議論には、「家庭内での不平等」があります。夫婦が在宅勤務で共働きの場合に、家事・育児の負担が女性によってしまう傾向があるという議論です。家庭内での役割について考えることも重要ではありますが、働き方をよくしていくためには、職場での男女格差、平等性についても考える必要があります。

SDGs目標の5番「ジェンダー平等を実現しよう」にも大きく関係してくるトピックですね。

ハイブリッドワーク、リモートワークは男女の雇用機会の平等につながる

在宅勤務をはじめとするリモートワークや、リモートワークを選択できるハイブリッドワークが普及すると、場所や時間の制約が緩和されます。働き方の選択肢が増えることで、女性が働きやすくなることも期待されています。ハイブリッドやリモートワークを採用し、雇用機会が平等に近づくことは大変素晴らしいことです。

そこで次に問われるのは、働く環境やパフォーマンスに関する機会の平等です。ジェンダーに関係なく働きやすくなったとしても、十分にパフォーマンスを発揮できなかったり、ちゃんと評価されないようなことは避けなければなりません。

ポイント①ハイブリッド、リモート環境での平等性


アメリカではハイブリッドワークを採用している職場にて、オフィスとリモートのどちらを選択するかでキャリアアップの可能性に差が出ると指摘されています。実際に、オフィス出社が多い社員とリモート勤務メインの社員では、オフィス組の方が昇進率がいいという調査結果がでています。

(引用元:https://www.wsj.com/articles/hybrid-workplace-marginalized-groups-11632331018

ここまでだと男女差というものは関係なく、個人がオフィスとリモートのどちらを選ぶかという問題だけにとどまります。
この問題が複雑になってくるのは、女性の方がリモートワークを選ぶ傾向が高いということです。アメリカの調査では女性の場合、男性よりも30%多くフルリモート勤務を希望しているという結果がでています。

(引用元:https://www.wsj.com/articles/hybrid-workplace-marginalized-groups-11632331018
なぜ女性の方がフルリモート勤務を希望する割合が高いのでしょうか。


ポイント②家事・育児のためにリモートワークを選択する

女性の方がフルリモート勤務を希望する割合が高い理由は様々ですが、特に家事・育児と仕事の両立が大きいと言われています。例えば、日本の調査では、以下のような結果が出ています。

(引用)配偶者の有無別テレワーク実施率の変化を見てみると,「配偶者がいる女性」と「配偶者がいない女性」とでは,どの時点においても「配偶者がいる女性」の方が5%ポイント近く高いことが確認できる

(引用)「小3以下の子供がいる」女性と,「小3以下の子供がいない」女性とでは,どの時点においても「小3以下の子供がいる」女性の方が2%ポイント以上高いことが確認できる
(引用元:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r03/zentai/html/honpen/b1_s00_00.html

既婚や小さな子供のいる女性ほどリモートワークを選択する傾向にあるのは世界共通のようです。

また、アメリカの場合は人種によって収入及び子供を保育園などに預けられるかに差があると言われており、人種による不平等にも配慮する必要があるため、問題は日本の現状よりもはるかに複雑そうです。


ポイント③キャリアアップを諦めたり退職につながることもある

家事・育児と仕事の両立のためにリモートワークという選択肢があることは素晴らしいことです。しかし、女性がリモートワークを選択することで家事・育児とフルタイム雇用のダブルワーク状態になっているという現状は無視できません。

体力的にも精神的にも大変なダブルワーク状態を抜け出すために、キャリアアップを諦めたり退職につながることも指摘されています。アメリカの調査では4人に1人が、感染拡大による働き方、育児環境の変化をきっかけにこのような選択を考えているそうです。

(引用元:https://www.mckinsey.com/featured-insights/diversity-and-inclusion/women-in-the-workplace

「個人の選択だから仕方ない」と言ってしまえばそれまでですが、そのような個人の選択の理由が社会的なものだとしたら、それは改善されるべきポイントです。


女性の機会損失が導くものとは

ポイント①〜③を改めてまとめてみたいと思います。
・リモートワーカーはキャリアアップに不利な場合がある。
・家事や育児のためにリモートワークを希望する女性が多い。
・ダブルワーク状態から抜け出すためにキャリアを諦める女性が出てくる。
これらの問題が組み合わさることで、女性のキャリアにおける機会損失が懸念されています。近年の様々な努力で改善してきた職場におけるジェンダーギャップが、また広がってしまう恐れがあるのです。

そうなれば、企業だけではなく社会における多様性が損なわれることが見込まれます。これらの問題を解決するには企業、行政、社会単位での行動が必要になります。まず、企業単位では、ジェンダーでの差をなくすだけでなく、オフィス、リモート勤務に関わらず公平な評価ができるような体制をづくりが必要とされています。みなさんの会社でもできることから始めていきたいですね。

最後に

働く場所や働き方の選択肢があることは素晴らしいことです。ただ、その選択や働く人の属性(性別、既婚・未婚、子あり・子なし、など)のために、結果として働きづらさが生まれてしまったり、正当な評価が得られなくなってしまったりするような状況は避けなければなりません。

ジェンダーギャップ指数120位と先進国最低レベルの日本には様々な課題が残りますが、ハイブリッドワークにおける平等性の問題は世界共通です。世界中が新しい働き方を模索している今だからこそ、働き方だけでなく、日本のジェンダーギャップをも改善する機会だと捉えることもできるかもしれません。