ジャイアントキリングと「ダビデとゴリアテ」〜2022W杯の日本代表の活躍を覚えて
2022年12月、サッカーワールドカップ2022カタール大会が、無事終幕を迎えた。開幕前は監督交代論も囁かれていたほど不安視されていた日本代表も、蓋を開けてみれば、同じグループリーグのスペインやドイツといった優勝候補をことごとく撃破し、決勝トーナメントにコマを進めた。まさに、大方の予想を覆して、格上の相手から勝利をもぎ取る大番狂わせである。11/23のドイツ戦、12/2のスペイン戦後、この大番狂わせを表現する「ジャイアントキリング」という言葉が、新聞各紙で踊っていた。
日本のジャイアントキリングに世界もあぜん「“負け犬”の日本が2日連続の大番狂わせをプロデュース」(中日スポーツ/2022.11.24)
日本が再びジャイアントキリングで決勝T進出!日本vsスペイン戦(The Sporting News/2022.12.2)
ジャイキリに家で1人、涙…もう少し頑張ろう W杯が私にくれた勇気(朝日新聞/2022.12.19)
ところで、この「ジャイアントキリング(giant killing)」という言葉、語源を辿ると、「旧約聖書:サムエル記」の「ダビデとゴリアテ」の説話に行く着くと言われている。
この有名な「羊飼いの少年ダビデが、巨人ゴリアテを石投げだけで倒してしまう」という説話。まさに、巨人(giant)を殺す(killing)エピソードなのである。圧倒的強者である巨人に立ち向かい、打ち負かすという、その王道少年漫画的でキャッチー内容は、ミケランジェロの代表作「ダビデ像」をはじめ様々な芸術作品のモチーフとなっており、聖書を読んだことがない人でも内容は知っているというくらい、人気の説話の1つに数えられている。
ちなみに、この少年ダビデはその後、メキメキと統覚を表し、後にイスラエルの王となる(一節によると、トランプの「KING」は、王様となったダビデがモチーフらしい)のだが、自身の不倫のスキャンダルに見舞われたり、息子や部下の裏切りにあったりと、晩年は嘆き悲しみに暮れることが多かったようである。強者として君臨し続けることの難しさもまた、聖書では描かれている。
歴史的なジャイアントキリングを起こしたワールドカップ2022カタール大会。残念ながら目標となるベスト8にコマを進めることは出来なかったものの、これからの日本代表の躍進を期待させる内容となった。次回は、カナダ・メキシコ・アメリカ共同開催となる2026年のワールドカップ。今度は「ジャイアントキリング」とは言われない貫禄と実績で、4年後の内容を楽しみにしたい。
(text しづかまさのり)
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