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最後の黒石寺「蘇民祭」へ

先日2月17日(土)、岩手県奥州市の天台宗・黒石寺(こくせきじ)で開催された「蘇民祭(そみんさい)」に参加した。この祭りには1,000年以上の歴史があるとされ、上半身裸で下帯姿の男衆が縁起物「蘇民袋」を奪い合う伝統行事。奇祭として注目を集め全国的に有名だが、関係者の高齢化や担い手不足を理由に、今年で最後となった。

午後7時すぎに黒石寺へ着くと、表の通りまで「ジャッソー、ジョヤサ」の掛け声が響き、境内はすでに異様な盛り上がりをみせていた。

アメフト選手かラグビー選手か、という屈強な男たちが褌姿で勢いよく沐浴をしている。気温が低いので氷を割って川に入るのが例年だったようだが、今年は暖かいとの事。

祭りは深夜まで続いたが、途中離脱し帰宿。

蘇民祭の参加者で満室となっていたのか、翌朝の宿の朝食会場では屈強な男たちが蘇民袋争奪戦の武勇伝に花を咲かせていて、話をきくと、「身体中、アザだらけになっちゃって。こりゃムリだと途中で離脱しました」と笑顔で話してくれた。

こんながたいの人の波に揉まれたらたまったもんじゃなかったなと、昨晩の自分の離脱の判断は賢明だったと安堵した。

午後、あらためて黒石寺にご住職(筆者の同級生)を尋ねた。物凄い熱気に包まれた昨晩とは打って変わって、お寺は静寂の中。今のお気持ちをうかがうと、「祭りとしての形はなくなるが、正月を祝う護摩祈祷などは今後も継続する」「終わりは新たなはじまり」と。

原点回帰というかたちになっていくのか、祭りの今後をこれからも見守っていきたい。「何かお役に立てることがあれば、馳せ参じますので」と伝えて、お寺を後にした。

黒石寺の藤波大吾ご住職(左)と筆者


Text by 中島 光信


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